第百十三話
声にならない想いや言葉に表現できない想いを込めながらお互いの温かさを感じる。嬉しくて胸が締め付けられるような不思議な傷みと心の奥から温かいものが溢れてくる感覚。素直に受け入れてそのまま緒方に伝えた。この湧き上がる感情を考えたり留めたりしない。そのまま緒方に預けるように神埼は緒方に唇を添えた。温もりを感じる。この心で。きっと傷ついていてもいいのだと思う。愛を受け入れることができなくても悲しみに怯えて閉ざしていても。大切なことはこの心のままに、感じるままに伝えること。隠したり卑下したりしない。傷つくことが弱いのではなく、この心から逃げて隠すことが弱いことなのかもしれない。でも逃げて隠したい想いが心だとしたら、弱さも何もなくなる。心は心のまま、それでいいんだ。何度もキスをして神埼は目をゆっくりと開けた。川の音が聞こえる。鳥のさえずる声も。こんな外で何をやってるんだと思ったが、それさえも忘れていた。緒方しか見えなかった。恥ずかしさを通り越して可笑しくなる。自分はこんなにも緒方に夢中だ。緒方も神埼を見つめている。訳もなく嬉しくなって笑った。焚き火がぱちぱちと音をたてて、火が消えかけている。落ち葉を混ぜながら火が消えるのを見守った。緒方はおにぎりに手を伸ばして美味しそうにもぐもぐと食べている。静かで不思議な雰囲気がなくなっていつもののんびりとした緒方に戻っていた。「神埼くん、おにぎり食べませんか?あと一つしかないですよ」神埼に声をかけているが、まだおにぎりを食べたいのだなと伝わってきてこっそり笑う。緒方なりに気を遣っているのがわかりやすい。満腹なので大丈夫だと断った。そうですか!嬉しそうに笑って最後のおにぎりを素早く掴んで食べている。面白い。嬉しそうに食べている緒方をのんびり見守りながら神埼はふと川の方に視線を移した。透明でキラキラしていてとても気持ちがいい。魚が跳ねていたり鳥が水浴びをしていたり。とても楽しそうだ。魚を捕っている時からずっと気になっていたことを緒方に伝えた。「なあ。緒方。。後でごみ拾いながら回ってもいいかな?よく見るとあちらこちらに空き缶やポリ袋が捨てられていたんだ。気になって」最後のおにぎりを幸せそうに食べ終えて神埼の方を見る。頷きながら頭を優しく撫でた。「そうですね。。綺麗なようでも、よく見ると石と石の間に人工的なものが挟まっています。アルミやポリエステルなどの化学物質は自然に溶け出して良くないですからね。川の風景を楽しみながら拾って帰りましょうか」体は大丈夫ですか?と話しかけながら緒方は立ち上がった。神埼に手を伸ばす。その手を握りしめると強く引かれ、楽に立ち上がることができた。ありがとうと伝えながら手を離そうとするが、がっちり掴まれて離すことができない。緒方を見ると案の定にんまりと笑っている。神埼は掴まれていない手で頬をむにっとつねった。残念そうに緒方の顔が歪む。「いいではないですか。もう少し。危ないので手を繋いでいましょう。なんかこう。。楽しいではないですか」楽しいよりも、俺は恥ずかしいんだ。緒方の頬を何度もつまみながら神埼は強く訴えた。手を繋ぎながらゴミ拾いだなんて、どこのバカップルだ。やっと離した緒方の頬を今度は両手でつまむ。緒方はため息をついた。「バカップル。。最高ではないですか。愛し合っていることを素直に表現して何が悪いのです?もうお魚さんたちにも伝わっているのですよ。誰も気にしません」心底残念そうにもう一度ため息をつく。少し落ち込んでいるような緒方を神埼は目を細め、あきれ顔で見ていた。こいつは。。羞恥心がないというか、マイペースというか。緒方は好きだが慣れてしまうと端から見て恥ずかしいカップルになってしまう。またため息をついた緒方に、そうしたいのはこっちの方だと心の中で反論する。「。。わかった。。アパートに戻ったらいくらでも手を繋ぐから。。それで勘弁してくれ」目眩がする。額に手を当てて、はぁと大きな息をついた。途端に緒方は上機嫌になってにんまりと大きく笑った。約束ですよ!と元気だ。「どこから行きましょうか。私は神埼くんについていきます」焚き火で焼く材料を入れていた買い物袋を片手に緒方が満面の笑みでこちらを見ている。帰ったら大変そうだが、手を繋いで見回るよりは遥かにいい。神埼は気になっていた川の方へと歩き出した。魚を捕ることに夢中で気づかなかったがよく見ると大きなポリ袋が挟まっている。空き缶も多い。一つの買い物袋では足りないかもしれないなと思った。「緒方、もう少し買い物袋を持ってきてくれ。空き缶と燃えるゴミを分けよう。ここで拾っているから」大きく頷いた緒方は焚き火のある方へと戻っていく。ふと川を見ると小さな魚が気持ち良さそうに泳いでいた。嬉しくなって思わず微笑む。こんなに可愛い命を育んでいる川。少しでもゴミを拾って大切にしたい。「ゴミを捨ててごめんな。今綺麗にするから。今日はありがとう。すごく楽しかったよ」川にも心があるのだろうか。見かけたゴミを拾いながら神埼はどうしても川に話しかけてみたかった。近くにあって心が和んだり元気になったり。この川にいろんものをたくさん貰った気がする。だから自分ができることをやりたい。ゴミ拾いなんて小さなことだけど、できることを少しずつ。「神埼ー!!俺たちも手伝うぜ!!向こう側から拾っていくから!!」大きな声に神埼は振り返る。戻ってきた大塚と林が手を振って笑っていた。答えるように手を振る。二人は買い物袋を持ってそれぞれ散らばっていく。こちらに来る緒方の姿が見えた。「さてと。。ゴミ拾いデートですね。大塚くんが言ってました。心が踊ってわくわくしますねぇ」うっとりとしている緒方を見ながら、ぷっと吹き出した。何だよ、それ。可笑しそうに笑う神埼に、これはデートなのですよ!と上機嫌に力説していた。
皆様、おはようございます(*^^*)いかがお過ごしでしょうか?
ふふふ!昨日買い物に行きましてパルムを買ってきました!アイス。。抹茶ラテ旨し!!素晴らしいです。。チョコも美味しいですよ!オススメです。ぬふ!
ではでは皆様、これからも素敵な時間をお過ごしくださいね(*^^*)




