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常識くんと愛さん   作者: ニケ
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第百十二話

それぞれ行きたい所へと向かう二人を見送って神埼はのんびりと緒方の方を向いた。緒方は考え込んで下を向いている。どうしたのだろうか?静かになった緒方を見守る。時々こうやって緒方は何かをじっくり考えていることがある。明るくすっとんきょうな緒方とは違う、静かで不思議な迫力のある雰囲気。きっと神埼の知らない世界を見ているのだろう。何も言わず見守っていようと思った。弁当に入れていたおにぎりはほとんど無くなっている。緒方の分を残して少し小さいおにぎりをほおばる。あらかた野菜も肉も食べてしまって、残っているのは緒方が買ってきたチーズぐらいだ。神埼は串の先にチーズを軽く刺すと焚き火の近くに持っていった。ゆっくりと焼ける音がしてチーズが柔らかくなっていく。トロトロに溶けて美味しそうだ。マシュマロのお礼に食べてもらおうと思ったが、まだ緒方は考え込んでいる。寂しいなぁと思いながらチーズを口の中に入れた。冷ますのを忘れていたので熱い。息を吐きながら少しずつ噛んでいく。「美味しいなぁ。。このとろける感じが。。ふふ。もう一個」また串に刺して焚き火で焼く。じりじりと焼ける音が聞こえてきてなんとも楽しみだ。しばらく焚き火を楽しんでいると、緒方が静かに神埼の方に寄り添ってきた。神埼の肩を自身に強く引き寄せる。考え事は終わったようだ。顔をすり寄せてくる。甘えるようなしぐさに神埼は笑った。「チーズ食べるか?焼けたよ。ほら、熱いから気をつけて」息を吹き掛けて何度も冷ます。緒方の口元に持っていった。かすかに笑って大きく口を開ける。静かになって寄り添っている緒方はなんだか元気がない。大塚と林が居る時にはあんなにはしゃいでいたのに。美味しいです。と静かに呟いた後、頭を神埼の肩に乗せてゆっくりと目を閉じた。緒方の体の重さが肩を通して伝わってくる。いつもとは明らかに違うし、前のようにじゃれあう甘え方でもない。ただ緒方を支えているだけで会話もない。緒方の顔をそっと覗き込むと静かで規則正しい呼吸が聞こえてきた。神埼に体を預けて穏やかに目を瞑っている。「すみません。。急に無口になってしまって。。とても幸せだなと思ったものですから」神埼の肩から緒方の声がする。独り言のような静かな囁きに神埼は少し緒方の方を向く。かすかに笑っている。「こうやって力を抜いて、誰かに寄り添うなんて。思いもよらなかった。。。私はいつも何かを守らなくてはと思っていました」ぽつり、ぽつりと話す緒方の言葉を神埼は静かに聞いている。川の流れる音が耳に心地よい。風に舞った落ち葉が目の前を通り過ぎた。「あなたを守りたい。何かをしなくてはならない。立派な医者にならなければならない。誰が見ても恥ずかしくない人物になりたいと。いつも思っていました」可笑しいですか?肩に頭を預けたまま緒方は笑っている。神埼はだらんとして力の抜けた緒方の手をそっと握った。「自分でも知らないうちに。。無理をしていたのですね。自分で自分を縛って。本当は何もできないのだと周りに知られることが怖かったんです。いつも守られていて。何も持たない自分は愛されるはずがない。何か誇れるものがなければ愛されないと」緒方が手を握り返して神埼の手を優しく包み込んだ。手の温もりがとても心地よい。「私を愛してくれる家族がいるのに。。どこか怖かった。素直に笑っている自分は本当の自分なのかと。もし、家族ではなかったらこの人たちは自分をこんなにも愛してくれないのではないかと」何をしてもこの冷たい恐怖は無くなっらなかった。根拠もなければ、理由もない。有りもしないことに怯えて。なんて自分は臆病なんだと責めたこともある。でも、どうしても怖かった。「それが。。不思議なんですが、その恐怖を受け入れられるようになったんです。自分は愛されないことが怖いのだな。愛を信じていないのだなと」私の名前は愛なのに。気持ち良さそうに目を閉じている緒方の顔を見て神埼は心が和んでいく。お前はお前でいいんだよ。神埼も美術の先生や保健室の先生によく言われたけれど、心は納得してくれなかった。愛されないことを受け入れるのが怖くてできなかったし、無条件で愛されるほど自分には価値がないのだと思っていた。理屈ではない。怯えている心を真から癒すのは容易なことではない。「あなたは私をありのまま愛している。それがよくわかるんですよ。なぜでしょうね。。心に伝わってくるんです。強く。。あなたといてわかったことがあります。私は家族からとても愛されている。そして大塚くんや林くんは私を大切に思ってくれている」よくわかります。乗せていた顔を持ち上げて神埼の顔を見た。握っていた手を離し両手で神埼の顔を包み込む。優しく穏やかな目だ。緒方がどんどんしなやかに逞しくなっていく。そんな気がした。「ありがとう。神埼くん。私は幸せ者です。周りの愛を心で感じることができる。それがどれだけ恵まれているか、痛いほどわかります。幸運です。天からの御褒美のようだ」ぼんやりと見つめている神埼にそっとキスをして頬を優しく撫でている。緒方。。震える声でそっと呟いた。神埼は自分の頬を撫でている緒方の手を包み込んだ。お礼を言うのはこっちの方だ。いつも、どんな時でも緒方から大切にされている。守られている。言葉で伝えたかったが声にならなかった。優しい緒方の目。真っ直ぐ神埼を見つめている。なぜだか泣きたくなる。嬉しくて、幸せで。静かに流れる涙に緒方はたくさんのキスをした。緒方。愛なんて目に見えるものじゃないし、手がかりなんてわからないけど。ちゃんと心は感じてるんだね。だってこんなに震えて嬉しくて温かい想いが溢れてくるよ。緒方に伝えたい。自分だって温かいものをたくさんもらっている。心でちゃんと受け取っているよ。言葉にならない想いが溢れて止まらない。緒方からのたくさんのキスに神埼も目を閉じて答えた。ありがとう。緒方。ありがとう。夢中で答えながら神埼は心の中で何度も伝えていた。

皆様、おはようございます(*^^*)いかがお過ごしでしょうか?

トマトが美味しい~!ということでミートソースでパスタを頂きました。野菜に感謝だなぁとしみじみです。

ではでは皆様、これからも素敵な時間をお過ごしくださいね(*^^*)

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