第三十八話 四人の狩り
翌朝、冒険者ギルドの前には既にゲランとゴッソが待っていた。
「おう、遅刻してねぇな。」
「まだ約束の十分前だぞ。」
俺が言うと、ゲランは笑った。
「冒険者は待ち合わせに遅れねぇんだよ。」
その隣ではリリアが少し緊張した様子で立っている。
「よ、よろしくお願いします!」
「おう。」
「よろしく。」
ゲランとゴッソが頷く。
こうして俺たちは森へ向かった。
◇◇◇
「今日は俺らに任せとけ。」
森へ入るなりゲランが言った。
「ダイスケとリリアは経験積むのが仕事だ。」
「危なくなったら助ける。」
ゴッソが短く続ける。
「ありがたいけど、いいのか?」
「新人育成ってやつだ。」
ゲランが笑った。
「昔は俺らも世話になったからな。」
なるほど。とてもありがたい。
◇◇◇
森の奥へ進む。いつもなら緊張する場所だ。
だが今日は違う。前を歩く二人の背中が妙に頼もしい。
そして。
「いたな。」
ゴッソが呟く。視線の先。
二メートルを超える灰色の巨体。
オーガだった。
「よし。」
ゲランが剣を抜く。
「まずは俺らでやる。」
オーガが咆哮を上げる。
だが、次の瞬間。
ドゴォッ!!
ゲランの剣が腹へめり込む。
続けて。
ゴッソの槍が肩を貫いた。
「ガァァァッ!!」
オーガが怒る。だが二人は落ち着いていた。
攻撃を受け流す。避ける。反撃する。
危なげがない。
ものの数分でオーガは地面へ倒れた。
「すげぇ…」
思わず呟く。
俺たちが命懸けで倒した相手を、この二人は普通に倒している。
これが経験の差か。
◇◇◇
次のオーガは少し小さかった。
ゲランが頷く。
「こいつならいけるな。」
「俺らが前やる。」
二人が言う。
「ダイスケとリリアで倒してみろ。」
「了解。」
戦闘開始。ゲランが前へ出る。
オーガの注意が完全に向く。
その隙に。
「えいっ!」
ゴッ!!
リリアのフレイルが膝へ命中。俺が斬る。
ゲランが受ける。ゴッソが槍で牽制する。
理想的な流れだった。
数分後。
オーガが倒れる。
「よくやった。」
ゲランが笑う。
「お前ら普通に戦えてるじゃねぇか。」
少し嬉しかった。
◇◇◇
だが全てがそう上手くいくわけじゃない。
三体目のオーガ。現れた瞬間、ゲランの表情が変わった。
「これは俺らだけでやる。」
「強いのか?」
「強い。」
ゴッソが即答する。そして戦いが始まる。
速い。重い。まるで別物だった。
俺たちは手を出す隙すら無い。
十分後。オーガは倒れていた。
「…なるほど。」
あれは無理だ。レベルが違う。
◇◇◇
その後も狩りは続いた。
オーガ七体。そのうち三体はゲランとゴッソだけで討伐。
スケルトン三体。二体は俺とリリアで倒した。
異常な速度だった。信じられない。
これがベテラン冒険者。俺たちが数日かけて稼ぐ経験を、半日足らずで積んでいく。
世界は広い。そう思った。
◇◇◇
「そういや。」
休憩中ゲランが思い出したように言った。
「昨日言ってたよな。」
「ジャイアント・ビーの巣?」
「あぁ。」
ゲランが笑う。
「行くか。」
「行けるのか?」
「大丈夫。」
ゴッソが頷いた。
「本来は滅多に見つからない。」
「見つかっても面倒。」
「数が多すぎて殲滅できねぇんだよ。」
ゲランが肩を竦める。
「だからクイーン・ビーの素材は高い。」
なるほど。
◇◇◇
しばらく歩く。先日逃げ出した場所。
ブゥゥゥゥン・・・
羽音が聞こえた。いつかの木の真下から見上げる。
「でけぇ…」
思わず呟く。
「ダイスケ。」
「ん?」
「やってみろ。」
ゲランが笑う。
「ウィンドケージ。蜂に効きそうなんだろ?」
そういうことか。俺は頷く。投げナイフを抜く。
ヒュッ!!
巣へ突き刺さる。
次の瞬間。
ブゥゥゥゥゥゥゥゥン!!
大量のジャイアント・ビーが飛び出した。
「来るぞ!」
俺は魔力を練る。
「ウィンドケージ!!」
風が広がる。ジャイアント・ビーを包み込む。
羽ばたく。だが飛べない。次々と地面へ落ちる。
「うおっ!」
ゲランが驚く。
「めちゃくちゃ効くじゃねぇか!」
「今だ!」
ゴッ!!
ザシュッ!!
ドスッ!!
リリアが。
ゲランが。
ゴッソが。
次々に倒していく。効率が異常だった。
◇◇◇
だがキツい。とにかくキツい。
魔力が削られる。維持するだけで頭が痛い。
息が荒くなる。それでも解除できない。
解除した瞬間、全員が襲われる。歯を食いしばる。
耐える。そして最後の一匹が倒れた。
「解除!」
風が消える。
「はぁ…はぁ…」
膝に手をつく。死ぬほど疲れた。
◇◇◇
その時だった。
ブゥゥゥゥゥゥン・・・
今までより遥かに大きな羽音。
二回りは大きい巨大な身体。異様な威圧感。
「クイーン・ビーだ…」
ゲランが呟く。
俺はナイフを投げた。
ヒュッ!!
避けられた。速い。
デカいのに速い。
「でも…!」
動きは同じ。やることも同じ。
俺は魔力を絞る。
「ウィンドケージ!!」
風が女王を包む。落ちはしない。
だが動きが鈍る。
「今だ!」
ゴッソが槍を投げる。
ドスッ!!
羽を貫いた。クイーン・ビーが落ちる。
「行くぞ!!」
四人で飛び込む。
斬る。
殴る。
突く。
そして。
クイーン・ビーが動かなくなった。
◇◇◇
【レベルが上昇しました】
「おっ。」
ステータスを開く。
【ステータス】
名前:ヤスモトダイスケ
レベル:11
加護:均衡成長
スキル:万能適正、武器扱い Lv4、採取 Lv3、解体 Lv4、火魔法 Lv3、水魔法 Lv3、風魔法 Lv2、気配察知 Lv1、投擲Lv1
筋力:40
敏捷:40
体力:40
魔力:40
精神:40
運:40
魔法:リトルファイア、ファイア、ファイアボール、ウォーター、ウォーターカーテン、ウォーターショット、ウインド、ウインドケージ
技:ソードスラッシュ
新たなスキルは増えなかった。修練期間が短すぎたんだろう。
しかしこんな短期間でレベルが上がるなんて。
冒険者になったばかりの頃以来だ。
「高レベルと組むと効率が違うからな。」
ゲランが笑う。
「新人育成の定番だ。」
ゴッソが補足する。なるほど。
これは確かに違う。
◇◇◇
「わ、私もです!レベル9になりました!」
「おー!」
ゲランが笑う。
「王都まであと一つじゃねぇか。」
「はい!」
リリアが嬉しそうに頷いた。
◇◇◇
町へ戻りギルドで換金。
クイーン・ビーの素材。
大量のオーガ素材。
スケルトン素材。
そして。
「金貨三枚、銀貨八十枚になります。」
「おぉ…。」
思わず声が漏れる。
四等分してもすごい大金だ。
リリアは金貨を見つめていた。
「私…金貨なんて見たのいつぶりか分かりません…。」
◇◇◇
「明日も暇だし付き合うぜ。」
ゲランが笑う。
「レベル10まであと少しだろ?」
「はい!」
「だったら遠慮すんな。」
ゴッソも頷く。
「早い方がいい。」
「ありがとうございます!」
リリアが頭を下げる。俺も少し安心した。
王都。もう遠い場所じゃない。あと少し。
本当にあと少しだ。そんな気がしていた。
【ステータス】
名前:ヤスモトダイスケ
レベル:11
加護:均衡成長
スキル:万能適正、武器扱い Lv4、採取 Lv3、解体 Lv4、火魔法 Lv3、水魔法 Lv3、風魔法 Lv2、気配察知 Lv1、投擲Lv1
筋力:40
敏捷:40
体力:40
魔力:40
精神:40
運:40
魔法:リトルファイア、ファイア、ファイアボール、ウォーター、ウォーターカーテン、ウォーターショット、ウインド、ウインドケージ
技:ソードスラッシュ
名前:リリア
レベル:9
スキル:採取 Lv3、解体 Lv4、鈍器術 Lv2、索敵 Lv1
筋力:21
敏捷:46
体力:25
魔力:30
精神:55
運:60




