第三十七話 四人で
オーガとの戦いから数日が経った。
あの日以来、俺たちは少しだけ慎重になった。
森へ入っても無理はしない。深追いもしない。
危ないと思ったら引く。
そんな当たり前のことを、改めて意識するようになった。
ゴブリンを狩る。オークを狩る。
ジャイアント・ビーを狩る。
フォレストウルフを狩る。
派手な戦いは無い。
でも、その積み重ねは確かに俺たちを強くしていた。
◇◇◇
【レベルが上昇しました】
「おぉ……。」
思わず声が漏れる。
「レベルアップですか?」
リリアが嬉しそうに聞いてくる。
「あぁ。」
思わず笑ってしまう。
「ついにレベル10になった。」
「おめでとうございます!」
リリアが飛び跳ねる。俺も嬉しかった。
王都へ行けるだけの力を付けること。
その条件だったレベル10。ようやく辿り着いた。
「長かったなぁ……。」
思わず空を見上げる。死にかけたこともあった。
オーガに吹っ飛ばされたこともあった。
それでもここまで来た。少しだけ感慨深かった。
ステータスを確認する。
【ステータス】
名前:ヤスモトダイスケ
レベル:10
加護:均衡成長
スキル:万能適正、武器扱い Lv4、採取 Lv3、解体 Lv4、火魔法 Lv3、水魔法 Lv2、風魔法 Lv1、気配察知 Lv1
筋力:37
敏捷:37
体力:37
魔力:37
精神:37
運:37
魔法:リトルファイア、ファイア、ファイアボール、ウォーター、ウォーターカーテン、ウインド
技:ソードスラッシュ
【水魔法Lv3になりました】【風魔法Lv2になりました】【気配察知Lv2になりました】【投擲Lv1になりました】
魔法が成長していた。
水魔法Lv3。風魔法Lv2。
「また増えたな。」
最近は使う機会も増えていたし、その影響だろう。早速試してみる。
まずは水魔法。新しく覚えた魔法はウォーターショット。
名前だけ見れば強そうだ。
俺は森の外れへ向かい、右手を前へ出した。
「ウォーターショット!!」
ピシャッ。水が飛んだ。終わり。
「……。」
「……。」
リリアと顔を見合わせる。
「以上?」
「以上っぽい。」
もう一度。
「ウォーターショット!!!」
パシャッ。やっぱり水が飛ぶだけ。
飛距離も大したことない。
「これ何に使うんだ……?」
火なら燃やせる。水なら飲める。風なら涼しい。
でも水を飛ばすだけって。用途が思いつかない。
何度か試していると気付いた。
「あれ?」
魔力を強く込める。
練る。もっと練る。さらに練る。
「ウォーターショット!」
バシュッ!!
今度は勢いが違った。水の塊が一直線に飛ぶ。
バキッ!
木の枝が折れた。
「おぉ。」
「すごいです!」
リリアが拍手する。
「いやでもなぁ……。」
問題がある。準備が長い。
かなり魔力を練らないと威力が出ない。
戦闘中にそんな余裕があるかと言われると微妙だ。
「うーん。」
「将来強くなるかもしれません!」
「それに期待するか。」
たぶん今はまだ早いんだろう。きっと。たぶん。
続いて風魔法。新しく覚えたのはウィンドケージ。
名前だけ聞けばめちゃくちゃ強そうだ。
「ウィンドケージ!」
リリアの周囲を風が囲んだ。
「わっ。」
リリアが驚く。
「どう?」
「うーん……。」
腕を動かす。歩いてみる。首を傾げる。
「ちょっと動きにくいです。」
「ちょっと?」
「ちょっとです。」
うん。絶妙に弱い。
「これどう使うんだ……。」
「敵に使えばいいんじゃないですか?」
「オーク相手に?」
「……。」
二人で黙る。たぶん意味ない。
「ジャイアント・ビーには効くかもしれないな。」
「あっ。」
飛ぶ相手なら効果があるかもしれない。
使い道は試してみないと分からない。
気配察知がLv2になった。
妙に感覚が鋭い。集中する。意識を森へ向ける。
「あ。」
「どうしました?」
「たぶんあっち。」
藪の向こうを指差す。
少し歩く。そこにいた。ゴブリン。
「すごいです!」
「いや、なんか分かるんだよな。」
不思議な感覚だった。見えているわけじゃない。
聞こえているわけでもない。でも分かる。
「あ、今腕上げたっぽい。」
「分かるんですか!?」
「なんか分かる。」
変な感じだ。慣れたら便利なんだろうけど。
たぶん今の俺の説明を聞いても誰も理解できないと思う。
俺も理解してないし。
そして新スキル、投擲。おそらく投げナイフを使い始めたからだろう。
命中補正がかかるみたいだ。ゴブリンを狙ってみる。
…わかる。…この感じ。……今!
ヒュッ!!
ゴブリンのこめかみをナイフが吸い込まれる。
ダーツで投げた瞬間、ブルに入るのがわかるあの感覚。
これは良い!
◇◇◇
ある日の夕方だった。
ギルドの扉を開く。すると見覚えのある男がいた。
「おっ。」
「おぉ!」
ゲランとゴッソだ。
「帰ってたのか!」
「今日帰った。」
ゴッソが短く答える。
「長かったな。」
「いくつも村や町を回ってたからな。」
ゲランが笑う。
「無事でよかった。」
「お前もな。」
ガシッと肩を叩かれる。なんだか少し嬉しかった。
◇◇◇
その日の夜、俺たちは酒場にいた。
ゲランとゴッソの無事の帰還祝い。
そして。
「初めまして!リリアです!」
今日はリリアもいる。
ゲランが固まる。ゴッソも珍しく目を瞬いた。
「おいダイスケ。」
「ん?」
「お前。」
「おう?」
「めちゃくちゃ羨ましい。」
「何がだよ。」
「毎日こんな可愛い後輩冒険者と二人で狩りしてるところ。」
「えぇ……」
リリアとゲランとゴッソがお互いに自己紹介する。
「しかも薬学少女とか…」
「お…おう…」
「青春してんなぁ…」
「してねぇよ」
「してるしてる」
してない。断じてしてない。
◇◇◇
その一方。
「乾燥方法で効能が失われるんです。」
「低温乾燥なら残る。」
「えっ!?」
「色々試した」
「すごい……。」
隣ではゴッソとリリアが盛り上がっていた。
「この薬草知ってる?」
「知ってます!」
「こっちは?」
「知らないです!」
「王都では有名。」
「へぇぇ……。」
なんだこれ。こんな饒舌なゴッソ初めて見た。
ゲランも同じことを思ったらしい。
「なぁゲラン…」
「ん?」
「ゴッソが喋ってる…」
「喋ってるな…」
「明日雪降るかも…」
「雪だけじゃ済まねぇかもな…」
ゴッソが無言で睨んできた。
◇◇◇
しばらくして俺は王都の話をした。
そして。
「リリアも連れて行きたいと思ってる。」
そう言うと。
ゲランとゴッソは顔を見合わせた。
「俺は構わねぇ。」
ゲランが言う。
「ゴッソは?」
「問題ない。ただし。」
ゴッソが続ける。
「Lv10になったら。道中は危険。自分の身を守れないなら連れて行かない。」
リリアが力強く頷く。
「はい!絶対レベル10になります!」
その目は本気だった。俺も少し安心する。
これでちゃんと約束できる。王都へ行こう。
みんなで。
◇◇◇
酒も進み、夜も更けてきた頃。
ゲランがジョッキを置いた。
「なぁ。」
「ん?」
「明日暇か?」
「まぁ。」
「なら合同で狩りに行こうぜ。」
「合同?」
「レベル上げ手伝ってやる。」
リリアの目が輝く。
「本当ですか!?」
「おう。」
ゲランが笑う。
「俺とゴッソがいりゃ大抵の魔物は何とかなる。」
「それはそうだけど俺と随分扱い違うよな?」
「はははっ!」
豪快な笑い声が酒場に響く。
明日は初めての四人での狩り。なんだか少し楽しみだった。
【ステータス】
名前:ヤスモトダイスケ
レベル:10
加護:均衡成長
スキル:万能適正、武器扱い Lv4、採取 Lv3、解体 Lv4、火魔法 Lv3、水魔法 Lv3、風魔法 Lv2、気配察知 Lv1、投擲Lv1
筋力:37
敏捷:37
体力:37
魔力:37
精神:37
運:37
魔法:リトルファイア、ファイア、ファイアボール、ウォーター、ウォーターカーテン、ウォーターショット、ウインド、ウインドケージ
技:ソードスラッシュ




