第三話 レベル1、いきなり死にかける
森だった。
見渡す限り森だった。
「……」
しばらく無言で立ち尽くした。
神様との会話。
異世界転移。
万能適正。
均衡成長。
どれも夢ではなかったらしい。
頬をつねる。
痛い。
普通に痛い。
「マジで異世界なんだ……」
空を見上げる。
青空の向こうには、地球では見たことのない蒼い月が浮かんでいた。
間違いない。
ここは異世界だ。
「よし、とりあえず状況確認かな」
そう呟いた瞬間。
目の前に半透明の板が現れた。
【ステータス】
名前:ヤスモトダイスケ
種族:人間
年齢:28
レベル:1
加護:均衡成長
スキル:万能適正
筋力:10
敏捷:10
体力:10
魔力:10
精神:10
運:10
「うわっ!?」
思わず飛び退く。
ゲームでよく見るステータス画面そのものだった。
「マジでRPGだ……」
だが数値を見て少し不安になる。
全部10。
確かに平均的だ。
平均的すぎる。
強いのか弱いのか全くわからない。
その時だった。
ズシン。
地面が揺れた。
「ん?」
ズシン。
ズシン。
ズシン。
何かが近づいてくる。
それもかなり大きい。
嫌な予感を覚えながら振り返った。
そして
固まった。
「……は?」
そこにいたのは熊だった。
ただし普通の熊ではない。
身の丈五メートル以上。
全身を黒い鎧のような毛皮が覆い、赤く光る目がこちらを見下ろしている。
口から覗く牙はサバイバルナイフの様に長い。
どう見ても生物兵器だった。
【ブラックグリズロード】
危険度:A
推奨討伐レベル:80
属性:火
「レベル80ぅぅぅぅぅぅぅ!?」
思わず叫ぶ。
なんで表示されたのか知らない。
だが知りたくなかった。
レベル1の自分が戦う相手ではないことだけは理解できる。
ブラックグリズロードも理解したらしい。
目の前の獲物が弱いことを。
「グォォォォォォォォォ!!」
咆哮。
空気が震える。
鳥たちが一斉に飛び立つ。
本能で悟った。
死ぬ。
これは死ぬ。
間違いなく死ぬ。
「うわああああああああああああ!!」
全力疾走。
人生最大速度で逃げた。
後ろから巨大な足音が迫る。
ズドン!
ズドン!
ズドン!
木々がなぎ倒されていく。
異世界に来て五分。
早くも人生終了の危機だった。
「グォォォォォォォォ!!」
地面が揺れる。
「なんなんだよあの熊ぉぉぉぉぉ!!」
転移初日。
レベル1。
武器なし。
知識なし。
所持金なし。
そして追いかけてくるのは推奨討伐レベル80の化け物。
おかしい。
何かがおかしい。
「普通こういうのってスライムとかゴブリンみたいな雑魚から始めるんじゃないのかよぉぉぉぉぉ!!」
誰に向けたかわからない叫びが森に響く。
神様か。
運命か。
とにかく文句を言わずにはいられなかった。
「なんで転移初日からボス戦なんだよぉぉぉぉ!!」
涙目で叫ぶ。
しかし相手は待ってくれない。
背後から巨大な火球が飛来する。
「熊が魔法使うのかよ!?」
回避。
だが着弾した地面が崩れた。
「え?」
そこにあったのは崖だった。
しかもかなり深い。
「いやいやいやいや待て待て待て!」
慌てて止まろうとする。
だが勢いが付きすぎていた。
「あっ」
落ちた。
また落ちた。
「あああぁぁぁぁぁあ!!」
身体が宙に投げ出される。
下を見る。
高い。
とんでもなく高い。
「うわああああああああああ!!」
落ちる。
空が回る。
森が遠ざかる。
地面が近付く。
「俺また落ちてるぅぅぅぅぅぅぅ!!」
バンジージャンプ。
異世界転移。
そして崖。
今日だけで三回目だった。
地面まであと少しで気付いた。
何かいる。
ボスン!!
柔らかい何かがクッションとなった。
奇跡的に生きている。
森を見上げた。
ブラックグリズロードは一歩後退した。
二歩。
三歩。
そして信じられない勢いで森の奥へ逃げ去る。
「え?」
呆然とした。
助かった。
どうやら助かったらしい。
しかし何故だ。
理由が分からない。
その時だった。
『騒がしいのう』
低く重い声が響いた。
固まる。
ゆっくり。
恐る恐る。
視線を下へ向けた。
黒い鱗。
巨大な身体。
山のような翼。
そして。
黄金色の瞳。
『人間よ』
瞳が細められる。
『いつまで儂の腹の上に乗っておるつもりだ?』
数秒沈黙した。
そして。
「……ドラゴン?」
『見れば分かるじゃろう』
異世界にきたその日。
ドラゴンに呆れられた。
安本大介
年齢:28歳
身長:172cm
体重:67kg
髪:黒髪
瞳:黒
視力:両目1.0
利き手:右
血液型:A型
職業:元会社員
趣味:動画視聴、漫画、ゲーム、散歩、コンビニ新商品チェック、バイク
特技:特になし
好きな食べ物:カレーライス
嫌いな食べ物:特になし
性格:争い事は苦手、基本的に協調性が高い、頼まれると断れない
特徴:何でも平均的、突出した才能はない、ただし苦手も少ない




