第二十話 新たな装備と成長
宿に戻った俺はそのままベッドへと倒れ込んだ。
極限の緊張状態から解放されたからか
泥のように眠り続け
気付けば昼過ぎになっていた。
重い体を無理やり起こし
まずは冒険者ギルドへと向かう。
受付でミーナにたった一輪の月光花を納品すると
彼女は俺のボロボロな様子にすぐ気がついた。
「ダイスケさん、一体何があったんです…?」
心配そうに眉を寄せるミーナに
俺は昨夜スケルトンに遭遇した話を打ち明けた。
「スケルトン!?レベル10以上の魔物ですよ!?無茶です!」
本気で怒り心配してくれるミーナ。
しかし俺が図鑑の知識を活かしてなんとか倒したことを伝えると、
彼女はホッとしたように胸を撫で下ろし
無事だったことを心から喜んでくれた。
「本当に無事で良かったです…。でも、次は絶対に逃げてくださいね」
心配をかけたお詫びをしつつ
ギルドを後にした俺はその足でリズの店へと向かった。
真っ二つに折れた棒の代わりとなる盾か武器を見繕ってもらうためだ。
事情を話すとリズは少し考え込むように腕を組んだ。
「戦闘スタイルがまだ固まっていないなら
これを期に戦い方を決めてもいいんじゃないか?
片手剣と相性がいいのはやはり盾だけど…
ガントレットなんかでもいいかもしれないね」
ガントレット。
ゲームで名前だけは知っているが実物を見たことはない。
「ガントレットってどんなのですか?」
俺が尋ねるとリズは棚の奥から
金属と厚手の革でできた頑丈そうな防具を取り出してきた。
「これさ。手首から前腕を守るための防具だよ」
「ああ……籠手のことか」
実物を見て、ようやく合致した。
「俺の地元では籠手と呼ばれていますね」
「へぇ、コテかい。変わった響きだね」
腕で攻撃を受け止めるのは少し怖い気もするが籠手を使ってみるか…?
試しにリズがおすすめしてくれたガントレットを装備してみる。
「……あれ」
思った以上に取り回しも悪くなく不思議としっくり馴染む気がした。
盾のように片手が完全に塞がるわけじゃないのも俺には扱いやすそうだ。
「これをお願いします!」
「銀貨20枚だね」
銀貨20枚。
せっかくゴブリンの魔石で潤ったサイフが一瞬でまた軽くなった…。
◇◇◇
その夜。
宿屋の食堂で夕食を食べていると
背後から聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。
「よっ!生きてたかダイスケ!」
振り返るとそこにはニヤニヤ笑うゲランと、相変わらず無表情なゴッソの姿があった。
「ゲラン! ゴッソ! 久しぶりだな!」
久しぶりの再会に親交を深めながら
俺は二人にこの数日間の出来事を話した。
レベルが5に上がったこと。
魔法を覚えたこと。
そして、昨夜の森でスケルトンを倒したこと。
「ゲラン、お下がりでもらったこの胸当てのおかげで命拾いしたよ。本当にありがとな」
「ハハ!役に立ったなら何よりだ!」
ゲランは嬉しそうに俺の背中をバシバシと叩いた。
隣で静かにエールを飲んでいたゴッソがふと真面目な顔でこちらを見た。
「……しかしレベル5でスケルトンはすごいな」
「ああ。普通ならFランクのソロが勝てる相手じゃねぇよ。なぁダイスケ……」
ゲランがニヤニヤしながら俺の肩を小突く。
「むしろ、レベル5でスケルトン倒したんならレベル上がってんじゃねぇの?」
「えっ?」
言われてみれば昨夜の戦闘の後ステータスをちゃんと確認していなかった。
頭の中でステータスボードの表示を念じる。
【ステータス】
名前:ヤスモトダイスケ
レベル:6
加護:均衡成長
スキル:万能適正、武器扱い Lv2、採取 Lv2、解体 Lv2、火魔法 Lv3、気配察知 Lv1
筋力:25
敏捷:25
体力:25
魔力:25
精神:25
運:25
「あ…本当にレベル6になってる…!」
あの死闘は確かに俺を強くしてくれていたらしい。
驚く俺を見てゲランとゴッソはニカッと笑い
お互いのジョッキを高く掲げた。
「よし!ならばレベル6の祝いだ!今日はダイスケの奢りだな!」
「おい待て、俺のサイフは今日リズの店で軽くなったばかりなんだよ!」
宿屋の食堂に、俺たちの賑やかな笑い声が響き渡った。
◇◇◇
夜、部屋に戻ってステータスを改めて確認してみる。
各種スキルのレベルがあがっているのもうれしいが、
特に気になったのが火魔法だ。
「レベル3…新しい魔法が増えてるんじゃないか?」
期待を込めて、頭の中で魔法を思い浮かべる。
脳裏に浮かび上がったのは、ひとつの名前だった。
―ファイアボール―
「よし……!」
俺はすぐさま宿の裏へと移動した。
静まり返った夜の裏庭で意識を集中して唱える。
「ファイアボール!」
ボワッ!!!
激しい熱風と共に俺の目の前に炎の塊が出現した。
サイズはなんとバスケットボールサイズ。
オレンジ色の炎がパチパチと音を立てて猛烈に輝いている。
「おおおおお……!」
めちゃくちゃ感動した。
これだよ、これぞファンタジーの攻撃魔法だ!
あの野球ボール大の『ファイア』とは迫力がまるで違う。
しかしじっと待ってみても火の玉は目の前に浮いたままだ。
「あ…やっぱりこれも飛ばないんだ」
俺の意思で射出される気配は微塵もなかった。
溜め息を吐きながらファイアボールを手で掴むようにして
前方へ向かって思いっきり投げつけた。
ブンッ!
バスケの要領で投げると、火の玉は普通に飛んでいった。
今度は前のファイアみたいに5mで消えたりしない。
そのまま真っ直ぐ飛び裏庭の地面に落ちて激しく燃え上がった。
「うわあああ!?ヤバイ!!」
予想以上の火力に青ざめる。
俺は慌てて近くにあった桶の水をぶっかけ、なんとか消火した。
「はぁ…はぁ…死ぬかと思った…」
その場にへたり込んで大きく息を吐く。
危うく宿屋を全焼させるところだった。
めちゃくちゃ心臓に悪い。
しかし焦げた地面を見つめながら、俺の心は高揚していた。
手投げ式という致命的なダサさはあるが威力は本物だ。
「これなら…雑魚の魔物なら一撃で倒せるんじゃないか?」
暗闇の中、俺はこれからの冒険に静かに目を輝かせるのだった。
【ステータス】
名前:ヤスモトダイスケ
レベル:6
加護:均衡成長
スキル:万能適正、武器扱い Lv2、採取 Lv2、解体 Lv2、火魔法 Lv3、気配察知 Lv1
筋力:25
敏捷:25
体力:25
魔力:25
精神:25
運:25
魔法:リトルファイア、ファイア、ファイアボール




