第十五話 自分に向いているもの
火魔法を覚えてからの日々は忙しかった。
朝は依頼。昼も依頼。夜は魔法練習。
そして3日に1度俺は冒険者を休みにした。
休みの日は講習。
剣術。槍術。棒術。ナイフ術。弓術。
とにかく片っ端から受けた。
受講料は痛い。だが経験は買えない。
◇◇◇
ある日の講習帰り。
ギルドでミーナに声を掛けられる。
「ダイスケさん」
「はい?」
「最近色々な講習を受けていますよね」
「そうですね」
「剣術に槍術、弓術、棒術……」
ミーナは少し困った顔をする。
「中途半端はいけませんよ?」
確かにその通りだ。
だが俺には理由があった。
「何が自分に向いてるのか分からないんです」
ミーナが首を傾げる。
「向いている?」
俺は頷く。
「俺には特別な才能がないんです。
だから試してるんです。剣なのか、槍なのか、弓なのか…
それとも別の何かなのか」
前世でもそうだった。
スポーツも平均。勉強も平均。仕事も平均。
だからこそ何が向いているのか知りたかった。
ミーナは少し考えて、そして笑った。
「それなら仕方ないですね」
意外とあっさり許された。
その後ミーナから別の施設を教えてもらう。
「ギルド図書館は利用されましたか?」
初耳だった。
「図書館まであるの?」
「ありますよ」
なんでもあるなこのギルド。
◇◇◇
初めて図書館へ行く。
本棚が並ぶ。地図。薬草図鑑。魔物図鑑。
冒険者の手記。初心者向け資料。そこで周辺地域の情報を知る。
まず手に取ったのは。
【アルトベルク周辺魔物図鑑】
ページをめくる。
【角ネズミ】
推奨レベル:1~3
特徴:角を使った突進
換金部位:角
【マイコニド】
推奨レベル:1~3
特徴:胞子攻撃
換金部位:傘部分
【牙モグラ】
推奨レベル:1~3
特徴:噛みつき
換金部位:牙
【ホーンラビット】
推奨レベル:3~6
特徴:素早い
換金部位:角付き頭部
【フォレストウルフ】
推奨レベル:6~10
特徴:群れ行動
換金部位:毛皮
【アイアンボア】
推奨レベル:8~12
特徴:突進、硬い
換金部位:肉
「なるほど」
今の俺なら角ネズミ、マイコニド、牙モグラ、ホーンラビットあたりか。
◇◇◇
さらに地図を見る。
【アルトベルク周辺地図】
北:草原地帯
東:不帰の森
南:王都
西:岩山地帯
そして。
不帰の森のさらに奥。
地図の端に小さく書かれていた。
【黒龍の谷】
危険区域立入禁止
俺は思わず笑った。
「あそこか」
最初に落ちた場所だった。
説明文を読む。
『古龍生息地』『生存者は極少数』『最上級危険区域』
「あのドラゴン、そんな扱いだったのか」
普通に雑談してたな。
◇◇◇
採取関係の本を開く。
【初心者向け採取図鑑】
ヒール草 傷薬材料
買取:銅貨1枚
緑色の草
マナ草 魔力回復薬材料
買取:銅貨3枚
紫色の草
渦巻草 虫よけ薬材料
買取:銅貨5枚
渦を巻いた草
月光花 回復薬材料
買取:銀貨1枚
夜のみ採取可能
「おお」
思わず声が出た。
月光花高い。
ヒール草10本分だ。
ただし。
推奨採取レベルは高い。
初心者向けではないらしい。
◇◇◇
図書館を出た後、受付へ戻る。
「ミーナさん」
「はい?」
「今、一番金になる依頼って何ですか?」
ミーナは少し考えた。
「新人向けならホーンラビットですね」
「角ネズミより?」
「討伐部位の単価が高いです」
なるほど。
「採取なら?」
「月光花です」
即答だった。
「ただし森で夜間採取になるので危険ですよ?」
危険。でも報酬は魅力的だった。
ミーナはさらに書類を見せる。
【荷物運搬】
報酬:銀貨4枚
【街路清掃】
報酬:銀貨1枚
【倉庫整理】
報酬:銀貨2枚
「こういう依頼もあります」
冒険者と言っても魔物を倒すだけではないらしい。
「なるほど」
思ったより色々ある。
俺は資料を返す。
武器。魔法。採取。討伐。雑用。
できることは増えている。
だが、まだ自分の進む道は決まっていない。
「まあ」
焦る必要はない。
俺はもう一度地図を見る。
不帰の森、その奥。
黒龍の谷。
『また会いたくなったら来るがよい』
古龍の言葉を思い出した。
「そのうち行くか」
そんなことを考えながら、俺はギルドを後にした。
日本の夏、渦巻の夏…
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