第十一話 少しずつ冒険者らしく
レベルアップから1週間が過ぎた。
俺の生活は以前と比べてかなり安定していた。
朝起きる。
依頼を受ける。
町の周辺で魔物を狩る。
ついでにヒール草も採取する。
ギルドへ納品する。
宿へ帰る。
寝る。
そんな毎日だった。
地味だ。
相変わらず驚くほど地味だ。
だが確実に成果は出ていた。
◇◇◇
採取スキルは思ったより役に立った。
相変わらず地味ではある。
ものすごく地味ではある。
だがヒール草がほんのり光って見えるため、探す時間がかなり短くなった。
その分だけ討伐に時間を回せる。
結果として収入も増えていた。
気付けば1日の稼ぎは銀貨5枚から7枚ほど。
宿代と食費を払っても黒字になる。
宿の部屋で財布をひっくり返す。
銀貨を数える。
1枚。
2枚。
3枚。
数えていき――
「40枚超えた……」
思わず呟いた。
銀貨42枚。
異世界に来たばかりの頃なら想像もできなかった金額だった。
◇◇◇
翌日。
ギルドへ呼ばれた。
何か失敗しただろうか。
少し不安になりながら受付へ向かう。
「ダイスケさん、おめでとうございます」
受付嬢が笑顔で言った。
「え?」
「規定回数以上の依頼達成が確認されましたので、本日よりGランクからFランクへ昇格となります」
「おお」
思わず声が出た。
Fランク。
まだまだ新人だ。
それでも一歩前進である。
受付嬢は新しいギルドカードを差し出した。
「こちらが更新後のギルドカードになります」
「ありがとうございます」
「今後も頑張ってくださいね」
カードを受け取りながら少し嬉しくなる。
異世界に来てから積み重ねてきたものが認められた気がした。
◇◇◇
その日の午後。
いつものように町の外で魔物を狩る。
マイコニド。
角ネズミ。
牙モグラ。
以前なら苦戦していた相手も、今では落ち着いて対処できるようになっていた。
そして夕方。
牙モグラを倒した瞬間。
目の前に文字が浮かぶ。
【レベルが上昇しました】
「おっ」
二度目のレベルアップだ。
慌ててステータスを開く。
【ステータス】
名前:ヤスモトダイスケ
レベル:3
加護:均衡成長
スキル:万能適正、ナイフ術 Lv1、採取 Lv1
筋力:16
敏捷:16
体力:16
魔力:16
精神:16
運:16
「全部16か」
やっぱり均等だった。
本当に綺麗なくらい均等だった。
そして。
さらに文字が浮かぶ。
【解体 Lv1】
「おっ、またスキルだ」
少し期待する。
今度こそ。
今度こそ派手なやつかもしれない。
詳細を開く。
【解体 Lv1】
解体作業速度微増
「……」
沈黙。
数秒沈黙。
そして。
「地味だなぁ……」
思わず呟いた。
最近覚えるスキルが全部地味だ。
採取。
ナイフ術。
解体。
完全に裏方である。
冒険者というより職人に近い。
◇◇◇
その夜。
宿の食堂。
いつもの席で夕食を食べていると、見慣れた二人がやってきた。
「おう、ダイスケ」
ゲランが椅子へ座る。
ゴッソも隣へ腰掛けた。
「聞いてくれ」
俺は開口一番そう言った。
「どうした?」
「レベル3になった」
ゲランが目を丸くする。
「おっ」
ゴッソも頷く。
「順調」
少し嬉しい。
さらに続ける。
「あと新しいスキルも覚えた」
「何だ?」
「解体」
一瞬の沈黙。
そして。
ゲランが吹き出した。
「ぶはっ!」
「笑うなよ!」
「いや、お前らしい!」
「どういう意味だ!」
ゴッソも頷く。
「便利」
「お前それしか言わないな」
「便利だから」
全く説得力がない。
◇◇◇
しばらく談笑した後。
ゲランがふと思い出したように口を開いた。
「そういやダイスケ」
「ん?」
「来週からしばらく町を離れる」
俺は箸を止めた。
「依頼か?」
「ああ」
ゴッソが頷く。
「長い」
「どれくらい?」
「1か月くらいだな」
思わず目を見開く。
「そんな長い依頼あるのか」
「商隊護衛だ」
ゲランが説明する。
「王都までの往復護衛」
王都。
初めて聞く単語だった。
どうやらかなり遠いらしい。
「へぇ……」
少しだけ寂しくなる。
異世界に来てから、一番世話になったのはこの二人だ。
薬草採取も。
武器選びも。
戦い方も。
ほとんど二人から教わった。
ゲランは俺の表情を見て笑った。
「そんな顔するな」
「してない」
「してる」
「まぁお前なら大丈夫だろ」
ゲランが言う。
「いや全然大丈夫じゃないんだけど」
俺は即答した。
レベル3だぞ。
新人も新人である。
ゴッソが真顔で言った。
「死ぬな」
「縁起でもないな」
「大事」
それはそうだ。
ゲランも笑いながら頷く。
「死にそうになったら逃げろ」
「それは得意だ」
「知ってる」
「知ってる」
二人同時だった。
ブラックグリズロードから全力で逃げた話はすでに何度もしている。
三人で思わず笑った。
◇◇◇
部屋へ戻る途中。
俺はふと思う。
異世界に来た時。
俺は何も持っていなかった。
金もなかった。
武器もなかった。
知識もなかった。
だが今は違う。
銀貨42枚。
解体用ナイフ。
革の胸当て。
Fランク冒険者の資格。
そして。
頼れる知り合いもできた。
その知り合いは、もうすぐ町を離れる。
だからこそ。
次は俺一人でやらなければならない。
そんなことを考えながら、俺は宿の階段を上っていった。
【ステータス】
名前:ヤスモトダイスケ
種族:人間
年齢:28
レベル:3
加護:均衡成長
スキル:万能適正、ナイフ術 Lv1、採取 Lv1、解体 Lv1
筋力:16
敏捷:16
体力:16
魔力:16
精神:16
運:16




