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普通人が行く異世界冒険記  作者: 豆腐斧
第一章 アルトベルク編

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第十話 初めてのソロ狩り

翌朝。

俺は昨日集めた討伐部位を持って冒険者ギルドへ向かっていた。

腰には新しく買った解体用ナイフ。

胸にはゲランから貰った革の胸当て。

少しだけ冒険者らしくなった気がする。

ギルドへ入ると、そのまま受付へ向かった。


「おはようございます」


受付嬢が笑顔で迎えてくれる。


「討伐部位の換金をお願いします」

「かしこまりました。確認いたしますね」


受付嬢は慣れた手つきで袋の中身を確認し始めた。


「マイコニドの傘が3点」

「角ネズミの角が1点」

「牙モグラの牙が1点」


一つずつ机の上へ並べていく。

しばらくして計算を終えた受付嬢が顔を上げた。


「査定が完了いたしました」


少し緊張する。


「合計で銀貨10枚となります」

「じゅ、10枚ですか?」


思わず聞き返してしまった。

受付嬢が小さく頷く。


「はい。討伐素材は薬草より高値で取引されますので」


銀貨10枚。

薬草採取2日分以上だ。

思ったより大きい。

受付嬢から革袋を受け取る。

ずしりとした重みが手に伝わった。

現在の所持金は銀貨18枚ほど。

異世界に来たばかりの頃を思えばかなり余裕ができた。

少しだけ安心する。


◇◇◇


依頼掲示板へ向かう途中。

ゲランとゴッソを見つけた。

二人とも装備を整えている。


「おう」


ゲランが手を挙げた。


「おはよう」

「換金終わったか?」

「ああ」

「今日はどうするんだ?」


俺が聞くと、ゲランは肩を竦めた。


「俺たちは別件の依頼だ」

「森で討伐」


ゴッソが補足する。

なるほど。

冒険者らしい仕事だ。


「今日は別行動だな」


ゲランが言う。


「頑張れよ」

「……ああ」


返事をした瞬間。

少しだけ緊張した。

今までは二人がいた。

後ろに誰かがいるだけで安心感は全然違う。

だが今日は違う。

初めてのソロ狩りだった。


◇◇◇


町の外へ出る。

見慣れた草原。

だが今日は妙に広く感じた。


「なんか心細いな……」


思わず独り言が漏れる。

返事はない。

当然だ。

今日は本当に一人なのだから。

しばらく歩いていると、草むらの中でマイコニドを発見した。

高さ40cmほどのキノコの魔物。

初心者向け。

何度も戦った相手だ。


落ち着いて近付く。

ナイフを構える。

距離を詰める。


今だ。


振る。

空振りした。


「あっ」


次の瞬間。


ぽふっ。


胞子が飛んできた。


「げほっ!?」


咳き込む。

目に入った。

鼻にも入った。

最悪だった。

その隙にマイコニドは逃走。


「ああっ!」


慌てて追いかける。

当然逃げられた。


「くそっ……」


情けない。

一人になるとこんなものか。


◇◇◇


その後は慎重に戦った。

焦らない。

無理に飛び込まない。

相手の動きを見る。

ゲランが言っていたことを思い出す。


『当てるより先に外さないこと考えろ』


意味が分からなかったが今なら少し分かる。

マイコニドを1匹。

角ネズミを1匹。

牙モグラを1匹。

さらにマイコニドを2匹。


気付けば日が傾き始めていた。

腕も足も重い。

だが少しずつ戦い方は分かってきた。

そして。


最後の1匹。


マイコニドを倒した瞬間だった。

目の前に文字が浮かぶ。


【レベルが上昇しました】


「え?」


俺は固まった。

数秒遅れて理解する。


「上がった……?」


慌ててステータスを開く。


【ステータス】

名前:ヤスモトダイスケ

レベル:2

加護:均衡成長

スキル:万能適正

レベル:2

筋力:13

敏捷:13

体力:13

魔力:13

精神:13

運:13


「おおおおおおっ!!」


思わず叫んだ。

誰もいない草原に声が響く。

レベルが上がった。

異世界に来て初めてのレベルアップだ。

嬉しい。

めちゃくちゃ嬉しい。

全部の能力が上がっている。

さすが均衡成長だ。

そしてさらに文字が現れた。


【ナイフ術 Lv1】

【採取 Lv1】


「スキルだ!」


思わずガッツポーズを取る。

ついに来た。

異世界らしい要素だ。

期待に胸を膨らませながら詳細を確認する。


【ナイフ術 Lv1】

ナイフ系武器使用時命中補正+1


「……」


地味だ。

かなり地味だ。


気を取り直して次を見る。


【採取 Lv1】

採取対象を発見しやすくなる


「……」


さらに地味だった。

俺は空を見上げた。

もっとこう。

火炎魔法とか。

雷とか。

伝説の技とか。

そういうのを想像していた。

結果は。

当たりやすくなる。

草が見つけやすくなる。

だった。


「地味だなぁ……」


思わず呟く。

せっかくなので試してみる。

近くに生えているヒール草を探す。


すると。


ほんのり。

本当にほんのり。


気のせいレベルで光って見えた。


「微妙っ!」


思わず叫んだ。

便利なのかもしれない。

でも地味だ。

とにかく地味だった。


◇◇◇


その日の夜。

宿の食堂。

いつもの席で夕食を食べていると、入口から見慣れた二人が入ってきた。

ゲランとゴッソだった。


「おう」


ゲランが俺を見つけて近付いてくる。


「帰ってたのか」

「今戻った」


ゴッソも席に着く。


「どうだった?」


ゲランが聞いた。

俺は少しだけ胸を張る。


「レベル上がった」


二人が固まった。


「おっ」

「おお」


予想以上に良い反応だった。

少し嬉しい。


「レベル2になった」

「やるじゃねぇか」


ゲランが笑う。


「スキルも覚えた」

「何覚えた?」

「ナイフ術と採取」


一瞬の沈黙。

そして。

ゲランが吹き出した。


「新人らしいな!」

「笑うなよ!」

「いや、悪くねぇぞ」


ゴッソも頷く。


「採取は便利」

「そうなのか?」

「薬草探しが楽になる」

「めっちゃ地味だったけど」

「そんなもんだ」


即答だった。

なんなんだこの人たち。

だが。

悪い気分ではなかった。


レベルも上がった。

スキルも覚えた。


異世界に来た日から考えれば大きな前進だ。

俺は少しだけ浮かれながら夕食を口に運ぶ。

明日はもっと上手くやれる気がした。

やっとLvが上がりました


【ステータス】

名前:ヤスモトダイスケ

種族:人間

年齢:28

レベル:2

加護:均衡成長

スキル:万能適正、ナイフ術 Lv1、採取 Lv1

レベル:2

筋力:13

敏捷:13

体力:13

魔力:13

精神:13

運:13

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