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◤書籍化&コミカライズ配信中!(検索!) ◢極悪令嬢の勘違い救国記 ~奴隷買ったら『氷の王子様』だった……~  作者: 馬路まんじ@サイン受付中~~~~
第四部:学園の聖女扁

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146 海賊女王、レイテちゃん!


 ――幽霊島。

 ブリランテ海運国の辺境のビーチの、さらに僻地にあるという孤島。

 島の中央には地下に向かう巨大鍾乳洞が存在し、周囲の渦潮の影響もあって、満潮時に島が沈むときには、漂流物を鍾乳洞に吸い込む性質があるとか。

 それを地元キッズたち(※大人の極悪レディであるわたしに、なんかタメ口で話しかけてきた)から聞き、〝これは海賊の宝や異能具もあるんじゃ!?〟と思ったわけだけど――。



「……まさか嘘でしょ。船を貸してくれた漁師が、例の大海賊団の船長なんて」


「信じられないことにマジです。私、暇潰しに船員やってましたから」



 巨大漁船の後部デッキにて。

 快速で割れていく海を見ながら、万能変身野郎・ハロルドパイセンが証言した。



「嵐による沈没から二十年。見た目こそ少し老けましたが、彼こそ『クォド・エイハブ船長』で間違いないです」


「えー……そんな人が漁師長なんてやってたわけ? こんなデカい船に乗って、堂々と?」


「え、ええ。昔から大胆な人とは思ってましたが……」



 呆れた~~~。

 少し調べたけど、あちこちの海洋国家を荒らしていた『奈落鮫』メンバーは、今でも指名手配犯になってるのに。



「な、なんでそんなやつの船に乗ることになっちゃったのよ、わたし。出会うやつがだいたいトラブル抱えた王子か犯罪者なんですけど!?」


「自然とみんな縋りついてくるんじゃないです? レイテ様は聖女ですから」


「悪女じゃい!」



 き、昨日の夜だって、クラスのみんなに怪談話聞かせて、眠れないようにしてやったし!!!

 と言ったら、



「……それ、普通に青春の思い出になってますよ?」


「ファッ!?」


「みんなレイテ様が遊んでくれたと思っただけで、誰も悪事だと認識してないのでは……?」



 そ、そんなことないないッ!



「おのれパイセン~~~っ、わたしがクラスで不良扱いされてることすら否定する気かぁ!? 毎日席替えが要求されるし、きっとみんなわたしの隣にいたくない事実を!」


「断言します。逆ですね」


「!?」



 ふ、ふざけんな! わたしは悪悪悪!

 こうして、相変わらず腹立つパイセンとレスバはおっぱじめようとした――その時。



「――よぉ嬢ちゃんたち。こんなところで内緒話か?」


「「!」」



 二メートル以上の長身が、ぬぅっと背後から現れた!



「わはは。色んな男と仲いいんだなぁ嬢ちゃん」


「ク、クック、さん」



 噂のクックさんこと、クォド・エイハブ船長だ。

 うひゃぁいつの間に。



「けど、海の魔獣から護衛役引き受けてくれたヴァイスって兄ちゃんが、物陰からすげー視線で見てんぜ? いいのかよ?」


「ああ……ヴァイスくんのことは放っておいてもいいとして」



 どうせ酔っちゃったけど恥ずかしくて言い出せなくて困ってるとかでしょ、たぶん。気にせずすっきりしちゃえばいいわ。



「い、いいのかよ。……男女逆だったら、あんたいつか刺されそうだな……」


「それよりもどうしてここに? 船の操舵はどうしたのよ?」



 えらいスピードで走ってるのに離れていいわけ?

 そう問うわたしに、船長は「あーそれなら」と操舵席のほうを指さした。



「生意気なメガネの兄ちゃんに任せた」


「おおおおおおお嬢様おたすけをぉおおお~~~!?」



 ってアシュレイーーーー!?



「あんたウチの変態執事になに任せてんのぉ!?」


「がはは! いやぁ、『少しも揺らすな! もっとレイテお嬢様を気遣った操縦をしろぉ!』とか喚いてきたからよ、そんなに言うならテメェがやれって」


「やらせんなーー!?」



 転覆したらどーするのよ!



「なんかあったらそん時はそん時だァッ! これが海の冒険よガハハハハハッ!」


「なんだこいつぅ~~~~~~!?」



 かくして、わたしたちは素人操舵で渦潮渦巻く幽霊島に突撃するのでした……!



 ◆ ◇ ◆



「レ、レイテお嬢様ぁ~~~! お怪我はありませぬかあああ~~!?」


「わーんっないわよアシュレイーーー!」



 オイオイオイと、変態執事と抱き合いながら、生きてることを涙で喜び合う。



「はうぅぅぅ。渦潮に飲まれて船がぐるんぐるんしたときは死ぬかと思ったわ……!」



 ヴァイスくんが海に飛び込んで、「ウオオオオオッ!」と気合で船を押してくれたからなんとかなったけど。

 なお何十トンもある船を押すのは堪えたのか、ヴァイスくんそのへんで転がっている模様。可哀想。



「……でもおかげで」



 じゃり、と。サンダルの下で砂地の感覚を踏み締める。



「どうにか辿り着けたわね、幽麗島……!」



 渦の向こうには、噴霧の立ち込める孤島が、たしかに存在していた。



「ケーネリッヒもご苦労様。上陸できたのはあんたのおかげね」


「も、もう二度とやらんぞぉ……!」



 いつも高飛車な赤毛幼馴染も、流石にグロッキーな様子だ。

 こいつ、巨大船の石炭供給を一人でやらされた上で、異能の風で噴霧を切り裂く役目までさせられたしね。



「ふ、ふふふ。やはりレイテ様の側に居ると、貴重な体験がいくつもできる……!」


「あっパイセン」



 ハロルドパイセンだけは元気そうだ。何の仕事も任されてなかったしね。



「お、おかげで、渦にシェイクされる思い出が、できっ、おええええ……!」


「ああ、全然元気じゃなかったわね」



 こいつはこいつで酔っちゃったみたいね。背中さすさす……。



「わはははは! あんたらこんなところでヘバってる場合じゃねぇだろぉ!? こっからが本番だろうがよ!」


「出たわねカス船長」



 なお、一人だけガチで元気なやつがいる。

 わたしたちが大変な思いをすることになった元凶、クックことクォド・エイハブ船長だ。

 この海賊野郎め、こっちは正体知ってるんだからね!?



「さてレイテの嬢ちゃんら。俺ぁ『観光目的』だと聞いて、この島にあんたらを案内したが」



 そこで、彼の声音がわずかに真剣さを帯び、



「『海賊(おれ)の遺産』でも、探しに来たのかァ?」


『――!』



 瞬間、わたしたちは即座に構えた。

 彼が大犯罪者なことは、隙を見て共有済みだ。

 カーペットになっていたヴァイスくんやわたしの頭をくんくんしてたアシュレイも立ち上がり、一斉に彼を囲った。



「っておいおい、そう剣吞になるなよ」


「なるに決まってるでしょ……」



 正体隠した犯罪者が身分を明かすときなんて、罪の自白でもするか、あるいは〝相手を必ず消す〟と決意したときくらいよ。

 間違いなく前者はありえない。



「クック……もといクォド・エイハブ船長。異能海賊団『奈落鮫』の頭目が、いきなりゲロってくれたじゃないの」


「へっ、やっぱ気付いてやがったかよ。まぁーこっちも気付かれてることに薄々気付いてたがな」



 彼は語る。「裏切りが即死に繋がる船の上では、船員の放つわずかな『空気』を読み取る必要がある」と。

 みんな、正体を伝えられたことで、少しの警戒や緊張感が出ちゃってたのね……。



「けどそれだけじゃ根拠は薄かった。が、決定打はてめぇだよ、ハロルドとかいう兄ちゃん」


「え、私ですか?」


「おう。……昔もいたんだよ。危険な海賊行為に、どこか物見遊山の空気で混ざってた野郎がな。てめぇあいつの身内か変装した本人だろ」


「おお……流石は船長、後者ですよ。正解です。よくわかりましたねぇ?」


「空気がムカつくからな」



 うわぁ。パイセンがムカつくことが決め手になってるじゃないの……。



「ちょっとパイセン、あんた舐めた空気どうにかならないの!?」


「いやーー、そう言われても私万能ですので。この場からもカモメに変身して逃げれますし。逃げちゃおうかなもう」


「あんた捌くわよ!?」



 くっそぉ。こいつのせいで厄介なことになったわね。

 敵は、数多の海洋国家を荒らした異能海賊団の船長ときた。年食ってても強そうだけど……。



「ふはっ、安心しろや。マジでやり合う気はねーよ」


「なんですって?」



 降参降参、と手をあげるクォド・エイハブ。

 だまし討ちを狙うわけでもないみたい。



「……あんたにやる気がなくても、こっちは指名手配の懸賞金目当てで、あんたをブッ倒してもいいんだけど?」


「無理だね。なにせ俺をキズモノにしたら、あんたら帰りはどうするんだよ?」


「っ!?」



 こいつ、まさか。



「ここまでの海路の過酷さは、身をもって体験したはずだ。特に内側に向かう渦の流れを突破すんのは、素人には至難の業だぜ?」


「……なるほど。無理やりアシュレイたちに操舵を任せたのは、そういうことか」



 行き帰りの大変さを教えて、自身の価値を示しておく。

 それにより、手を出されないようにする魂胆ってわけ。



「気付いたか。賢いねぇレイテお嬢様?」


「黙りなさい悪党。あんたの悪ゲージ、このわたしに匹敵するわね!?」


「えっ、酔い止めにみんなに飴配ってたあんたが悪……? え……?」



 なんかきょとんとしてるエイハブ。

 だがそれも一瞬。表情を真面目に戻すと、「俺の目的はほかでもねぇ」と本題に入った。



「このクォド・エイハブ様が正体を明かした理由。それはな、俺に見せて欲しいからだよ、遺産に辿り着くまでの冒険を」


「……なんですって?」



 エイハブは続ける。「このへんに流れ着いてるだろうことは、ここ数年で調べがついたのだが」と。



「ダーメだ。例の鍾乳洞、海の人型魔獣である『魚怪人(インスマウス)』が群れで住み着いてやがる。そいつらを突破するにゃぁ年を喰いすぎたし、今さら遺産を手にしても仕方ねえしな」


「ふうん。それで、若者たちが自分のお宝を求める姿を、後ろから見ていたいってわけ?」



 ……いまいち信用できないわね。



「遺産に辿り着いた瞬間、わたしたちを排除するんじゃないの?」


「ちげーよ。だとしたら身分を隠してこっそりついていけばいいだろ?」



 む、それはたしかに。



「俺が正体を明かしたのは、ある種の誠意だ。海賊ってのは冒険が大好きなんだよ。俺はあんたらがそれをするさまを、特等席で見ていたいんだよ」



 年寄りの頼み、どうか聞いてくれやと言うエイハブ。

 ……わかったわよ。全幅の信頼はおけないけど、どのみちパイセンに勝って不労所得は得たかったしね。



「いいわよ、ついてきなさい! 今日は期間限定、海賊女王レイテ様にジョブチェンジよ~~~!」



 世界一の悪に、わたしはなるぅーーー!


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― 新着の感想 ―
確かにレイテちゃんとル○ィには通ずるものがある( ˘ω˘ )
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