145 出会うヤツだいたい王子か犯罪者、レイテちゃん!
「ふ、ふふふふふ……。やはりレイテ様は面白い。あなたの側に居ると、予想外のことばかりを起こしてくれる」
「面白くないわよ!」
というわけで臨海学校二日目。
人間に戻ったハロルドパイセンと共に、わたしは再びビーチに出た。
「聖国の女王になるとか、まるでわたしが聖女みたいじゃないの! どうせなら暗黒王国の王にしろー!」
「そんな王国があるわけないでしょう。それよりも困りましたね」
困った、というのは、かつて壊滅した海賊団『奈落鮫』の宝と異能具が、二日そこらじゃ見つからなさそうな件についてね。
ドクター・ラインハートは昨日の内に〝まぁ無理だネ〟と答えを出してたけど。
「いずれあなたが聖国の女王になるにしろ、それまでに経歴を盛っておくと面白い。海運国を助けた過去があれば、国際関係もよくなります」
「面白くないしならなくてもいい!」
女王なんてなる気ないしぃー! 田舎でおとなしく民衆いびらせろ!
「ああ、ところでレイテ様。あなたの騎士様方は?」
騎士って。あー、ヴァイスくんにアシュレイにケーネ、それとドクターのことね。
「ドクターはなんかわたしにお風呂入れて貰ってた件で父親に拉致られて、消息不明で」
「か、可哀そうに……ッ!」
「残るメンバーについては、ちょっとわたしが直訴したのよ。『マジで聖女になりたくないから、ちゃんとお宝探して』って」
本人たちはわたしから離れることを渋ってたけどね。異能具がいつ暴発して、何が起きるかわからない状況だから。
ま、〝いざというときはハロルドパイセンを盾にするから大丈夫〟と説得したけど。
「浜辺は一応探し回ったからね。けどこれまでに変なモン拾ったって生徒もいないみたいだし、望み薄。そこでみんなには船を手配しにいかせたのよ」
「船ですか?」
「そう。実はここからちょっと離れたところに、孤島があってね。人呼んで『幽霊島』という場所ヨ」
猫撫でてる時に寄ってきた地元のキッズどもに聞いたわ。
曰く、潮の加減でほとんど沈むこともあるような小島があるとか。
地元民しか知らない場所で、今日はたぶん上陸できそうらしい。
「なるほど……。その幽霊島に引っかかってるかもしれませんね、海賊の宝や異能具」
「そうなのよ。島には地下に向かうような鍾乳洞があって、もしかしたら満潮時、そこに流れ込んじゃったかもしれないわ」
と、いうわけで。
「決着を付けましょう、ハロルドパイセン! 幽霊島を探索して、お宝を見つけたらわたしの勝ちよ~~~~!」
不労所得で無駄遣いしまくって、極悪令嬢の名を世にとどろかせてやるわーーーーー!
おーーーーーーほっほっほぉーーーーー!!!
と言ったら、
「レイテ様の悪のスケールって、しょぼいですよね」
ってうっさいわ!!!
◆ ◇ ◆
その後。ヴァイスくんらがやってきて、「地元の漁師長殿と交渉して、船を出してくれることになったぞ」と伝えてくれた。
うむごくろう。って、
「船でっっか!?」
ブォーーーッという駆動音と共に現れたのは、二十メートル近くはあるだろう大型船だった。
いやいやいや。漁師船にしてはご立派すぎるでしょ。
でっかい蒸気エンジンまでついてるし、なんぞこれ。
「――おうっ! 嬢ちゃんがレイテ様とやらか! ちっちぇえな!」
「むむ!?」
驚いているわたしに、船の上から失礼な胴間声が響いた。
「って、なによあんた。これまたデカいやつが出たわね」
操舵席を見上げれば、そこには身長二メートル以上にもなるだろう、日焼けしたオッサンが立っていた。
うわぁイカつっ。筋肉バキバキで入れ墨だらけな上半身をおっぴろげてるし。
「おうおう。俺ぁこの船の主のクックってもんだ。このへんを縄張りに漁師長やってんぜ」
よろしくなーロリっ子! と手を振ってくるクックさんとやら。
って誰がロリっ子じゃい!!!
「……ちょっとヴァイスくん~~~? なんでこんな失礼なオッサン連れてきたのよ!?」
「す、すまんレイテ嬢。滅ぼすか?」
「いやそこまではしなくていいから!?!?!?」
日帰り旅行で聖国滅ぼしてきた男が冗談じゃないわよ!
「曰く、例の幽霊島の周囲には渦潮がいくつもあってな。それらを乗り越えられる腕と船を持つ男といえば、このクックしかいないらしい」
「へえ。渦潮が周囲に」
それは期待感が高まるわね。渦に巻き込まれたモノは、中心部のその島に向かいやすいわけで。
「……わかったけど、わたしをちびロリ呼ばわりは許せないわ! アシュレイにケーネッ、やっておしまい!」
「お嬢様の願いとあらばッ!」「仕方ないなぁもうっ!」
悪役っぽく出した命令に、怪人よろしく変態眼鏡とちび幼馴染が飛んでいく。
こいつらはハンガリア領の実力者。変なおっさんの一匹や二匹、簡単にわからせてやれる――と思ったのだけど。
「がははっ! イキがいい兄ちゃんたちだなぁ~~!?」
「「ぐえーーー!?」」
!?
オッサンが太い腕を伸ばすや、一瞬で変態眼鏡と幼馴染が締め上げられた!?
「元気な若ぇやつは大歓迎だ! こいつら、石炭補給に使わせてもらうぜぇ?」
……なんなのよこいつ。
ニヤリと笑う日焼け面に、わたしは困惑してしまう。
ガチで戦う気はないだろうとはいえ、アシュレイとケーネをあっさりと鎮圧するなんて。
「この人はいったい……」
「レ……レイテ様……!」
と、そこで。ずっと黙っていたハロルド先輩が、無駄にいい顔をわたしの耳元に寄せ、こそこそと囁いてきた。なによなによ?
「フ、フフフ。レイテ様のトラブル体質は、本当に私に驚きの体験ばかりをさせてくれますね……!」
「は、はぁ!? あんた喧嘩売ってんのぉ!?」
「お静かにっ! ……よく聞いてくださいね?」
と、ハロルド先輩は珍しく、硬い声で前置きし……。
「かつて、あらゆる海洋国家を荒らした最恐の海賊団、『奈落鮫』……」
――あの人、そこの船長ですよ……と、彼はわたしに伝えるのだった。




