045 ロア、地球に戻る
【コスカ海軍基地】
ロイド公爵達の艦隊と別れて10日、『あまつかぜ』を含む3隻の第1特務艦隊が地球に戻って来た。
途中、ゲート基地経由で状況を報告していたせいか、基地の宇宙船発着場には多くの人々が集まっていた。
着陸後、『あまつかぜ』のタラップをロアが降りていくと、号令官が「ロア長官に敬礼」と叫び、整列して待っていた隊員が一斉に敬礼をする。(中には、『はたかぜ』で先に戻っていたオペレーター達など泣きながら敬礼している者もいた。)
ロアの答礼を受け、「なおれ」号令の下皆が敬礼をやめる。
列の中から幕僚長が出て来て、「若様、良くお戻りに・・・ 連絡が来るまで気をもみましたぞ・・・ あまり年寄りに心配掛けないで頂きたいですな。」
「それは・・・ すまないとは思うが、他に手も無かったからな・・・」
「それはそれとして、若様が不在中の出来事については、先に送っておいたレポートの通りなのですが・・・ 王宮からの迎えが来ております。」 幕僚長が示す一画に黒塗りの車が・・・
「ゆっくりさせてはくれないらしいな・・・ 」 ロアは、幕僚長に集まった隊員達の解散を命じると、迎えの車に向かった。
【ダケタ王国 王宮 国王執務室】
王宮に着くなり執務室に連れて来られたロアは、その場に膝を着き頭を下げる。「此度はご心配をお掛けし、申し訳ございません。 又、救援艦隊を送って頂き感謝致します。」
「うむ、良く戻った。 頭を上げよ。 そちらの椅子に座れ、話がある。」 陛下に誘われ応接スペースに向かう。
「さて、何から話すか・・・ 先ずはお主の意志を確認しようと思うてな。 ロイドにはまだ言っておらぬのだが・・・ アリスと結婚する気はあるか?」
「それは・・・ 家の事もあります。 私1人の考えで答える訳には・・・」
「そうだな、貴族なのだから当然そういう答えよのう・・・ あえて聞くぞ、お主自身の考えとしてアリスと結婚出来るとなったらする意志はあるか?」
「 ・・・あります。」 ロアがはっきりと言うと、陛下が頷き扉の方に向かって一言「入ってこい」
「失礼します。」 頬をほんのりと赤くそめたアリスティア王女がやって来る。
陛下に言われ、アリスティア王女も席に着くが、俯いたままだ。
それを見た陛下が、「アリスがな、お主が死んでしまうのではないかと取り乱してな・・・ それで、どうやらお主への思いを自覚したようなのだ。」
ロアが思わず王女を見ると目が合うが、真っ赤になった王女がすぐさま俯く。
陛下が続けて、「それでな、お主の意志を確認して両想いと分かれば、結婚話を進めようと考えておったのだ。」
これから色々と話をつけなければならない所があるがな、と言いながら「近いうちに婚約を発表するつもりなので心しておくようにの」 と言う。
しかし、ロアは陛下に返事をせず。 アリスティア王女の手をとると、「アーリス、僕と結婚してくれるかい?」
すると、小さく頷きながら、「はい」 と、それを見てロアは改めて陛下に、よろしくお願いします。 と頭を下げた。
その後、見つめ合ったまま動かなくなった二人は、陛下に部屋から追い出され、恥ずかしそうにしながらも揃って庭園の方に歩いて行った。
二人は長らくベンチに座っていたが、ふと気が付くと遅い時間になっており、ロアは慌てて帰って行った。
【コスカ海軍基地 周辺】
基地周辺の居酒屋などでは、ロアの無事の帰還を祝ってどんちゃん騒ぎになっていたが、皆酷く酔っていて、ロアが中々王宮から戻ってこない事を気にする者は1人もいなかった。