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第三十四話(完結編):石盤を使って犯人を追ったら家族の秘密が暴露だった件

皆さん、ようこそ「グリモワールド」の混沌へ。


今回の章では、石盤の魔力が暴走し、裏グリモワールドへの扉が開かれました。そして、単なる犯人追跡のはずが、思わぬ家族の因縁まで巻き込む大混戦に……。


この物語は、魔法、秘密、そして“血の繋がり”だけではなく、登場人物たちの心の成長も描いています。読者の皆さんには、桃太郎のパニックっぷりと白雪の覚悟、そしてマギ・オババの余裕を存分に楽しんでもらえたら嬉しいです。


どうぞ、ページをめくる手を止めず、彼らの冒険に心を預けてください。


洞窟の出口、差し込む外光を背にマギ・オババがニヤリと笑った。


「石盤がそこにあるなら、アタシも行くしかないねぇ」


彼女は一歩前へ踏み出した。


――― グリモワールド・リミバァの家


扉が開け放たれる。


「おい、リミア! 生きてるかい、この本の虫が!!」


踏み込んできたマギ・オババに対し、奥からリミバァが姿を現した。


「……その騒々しい声、マギだね。あんたこそ、まだそのボロ雑巾みたいなローブを着て歩き回ってるのかい?」


「挨拶は後だ。リミア、あんた自覚があるのかい? この家、とんでもなく臭うよ」


「臭う? 失礼だね、新刊のインクの香りなら漂っているけれど」


「違うねぇ、魔法の臭いだ。……上だね」


マギ・オババの視線が、二階の部屋へと向けられた。


「――石盤、そこにあるだろう?」


二階の部屋。


棚には、文様の刻まれた一枚の石盤が置かれていた。


マギ・オババがその石盤を手に取る。


桃太郎は眉間を強く押さえた。


「……終わった。これ、完全に詰む展開だ……」


マギ・オババが、その指先から膨大な魔力を一気に流し込んだ。


その瞬間、石盤が「――ギィィィィィィッ!!」

と、空間を裂くような金属音を上げる。


石盤が放つ拒絶の衝撃波が、二人の足元の床を粉砕し、部屋中の本が嵐のように舞い上がった。だが、マギ・オババは顔色一つ変えず、さらに深く、その奔流をねじ伏せていく。


――― ズゥゥゥゥンッ!! ―――


家鳴りが響き、部屋中の空気が鉛のように重く沈んだ。


石盤の溝を這う文様がドロリと蠢き、そこから溢れ出したのは、光を吸い込むほどに昏い「漆黒」だ。


漆黒の奔流は、意志を持つ獣のように空間を抉り、リミバァの家の壁さえも透過して、グリモワールドの空をどこまでも真っ直ぐに引き裂いていく。


それは逃れようのない不吉な道標となって、ある一点を正確に貫いた。


「……出るよ、セレナ」


マギ・オババの声が低く響く。


「犯人の居場所だ」


石盤の文様が示す場所――空間の奥に浮かぶその一点には、確かに人影があった。動きはわずかだが、確かに「意志」が存在している。


――裏のグリモワールドだ。


セレナの目が光を受け、揺れる炎のように一点を見据える。ここに犯人がいる。


桃太郎は背後で息を呑んだ。


セレナは手を石盤に置き、決意を固める。


「……行くしかない」


マギ・オババだけは微かに眉をひそめ、鼻の奥で軽く鳴らした。


「おや……カリン、お前さんの母親は…」


カリンがはっと顔を上げる。


「え……何ですか、お母さんが…?」


マギ・オババはにやりと笑った。


「ふふ、ちょっとした気づきさ。だが、ここで話すより、見て確かめる方が早いだろうね」


セレナは石盤の先をじっと見つめる。桃太郎は背後で息を呑んだままだ。


マギ・オババの声が低く響いた。


「さあ、行く時だよ。裏のグリモワールド――お前らの目で確かめるんだ」


セレナは石盤の先に視線を固定したまま、深く息を吸い込む。


「わかりました…!」


カリンは手に握った杖を見つめ、わずかに震わせた。

「私……母さんがここにいるのね」


小さく呟き、覚悟を固めるように肩を正す。


セレナは静かに頷いた。


「行こう。ここまで来たんだから」


桃太郎は背後で顔を引きつらせていた。


(いやいやいや……)


(裏グリモワールドって……普通に魔物の巣だろ……)


(しかも犯人いるんだろ……?)


(これ帰ってこれるやつ!?)


その時だった。


白雪が、静かに空間の裂け目を見つめていた。


普段の彼女らしくない、遠くを見るような目。

桃太郎が気づく。


「……白雪?」


白雪は、少しだけ目を細めた。


その視線の先には、石盤が刻んだ裂け目の向こう、光さえ届かぬ黒い空がある。


(……懐かしい、匂い)


その瞬間――

凍りついていた小さな記憶が、音を立ててよみがえる。



幼い頃。


陽の光さえ届かない、裏グリモワールドの昏い森。


細い腕で、身の丈ほどもある剣を振るう少女。


「違う違う、白雪」


その背後で、森の木々を揺らすような、大きな背中の老人が笑っていた。


少女の小さな手を、節くれ立った太い腕が包み込み、剣の持ち方を直す。


「力で斬るんじゃない。……流れで斬るんだ」


老人の手は驚くほど大きく、そして、焼けるように温かかった。


「覚えておきな」


低い声が、森を吹き抜ける風の中で、優しく響く。


「お前は強くなる。……だが、決して一人で戦うな」


白雪が振り向く。その瞳には、老人の顔が、逆光の中で眩しく映っていた。


「じいちゃん?」


老人は、ただ静かに笑う。


「お前は――人と一緒に戦うことで、真価を発揮する剣だ」



白雪の手が、自然と腰の剣の柄に触れていた。


まるで、あの温もりを確かめるように。


小さく、だが確かな決意を込めて息を吐く。


「……いるんだよね」


桃太郎が、その呟きを聞き返す。


「え?」


白雪は振り向かない。


裂け目の向こう、漆黒の虚空を見つめたまま言った。

「私のおじいちゃん」


その言葉に、背後でリミバァの眉が、ピクリと動いた。


白雪が続ける。


「裏グリモワールドにいる。……ずっと」


静かな、だが心の奥底から絞り出したような声だった。


桃太郎の目が、限界まで見開かれる。


(そうだった……忘れてた……!)


(白雪は……)


(俺が『桃』から召喚した時、……裏の世界から、ボロボロになって現れたんだ……!)


リミバァが、ゆっくりと、長く息を吐いた。


「……そうかい」


そして、石盤が放つ黒い光を、愛おしむように、あるいは憎むように見つめる。まるで魔道の女王の様な鋭い目で。


「やっぱりね。……あの馬鹿、死に損なっていやがったか」


桃太郎が振り向く。


「リミバァ?」


リミバァは、呆れたように肩をすくめた。


「その爺さん」


「アタシの旦那だよ」


一瞬、部屋中の空気が凍りついた。


全員が、石像のように固まる。


「……え?」


桃太郎の声が、情けなく裏返る。


白雪が、弾かれたように振り向いた。その無表情な顔が、初めて驚愕に歪む。


「え?」


リミバァは、至極平然としている。


「何だい、知らなかったのかい」


「アタシとあの馬鹿は……、数百年前に契りを交わした、正真正銘の夫婦だよ」


桃太郎の頭が、一瞬でキャパオーバーを起こした。


(え????ちょっと待て????)


(白雪のじいちゃん=リミバァの夫??)


(じゃあ白雪とリミバァは血が繋がって……いや、白雪は『裏』の住人で……)


(え????家系図どうなってんだこれ????)


マギ・オババが、横で杖を肩に担ぎ、笑いを噛み殺していた。


「やれやれ」


クツクツと肩を揺らす。


「因縁だらけだねぇ。まさか、ここで線が繋がるとは」


そして石盤を見る。瞳に司書長としての鋭さが戻る。

「ますます、行くしかないね」


リミバァが、静かに一歩前に出た。


「当然だろ」

 

「あの馬鹿がまだ生きてるなら――」


石盤の向こうの闇を、射貫くように睨む。


「――とっ捕まえて、アタシのインクの臭いを、たっぷりと嗅がせてやらないとね」


桃太郎は、その場に崩れ落ちそうになりながら、頭を抱えた。


(増えた……)


(ただの犯人隠避じゃねえ、家庭内暴力の仲裁まで付いてきた……)


(帰ってこれない理由が、倍に増えた……!)


(これ、完全に帰ってこないフラグ、ビンビンに立ってるじゃん……!!)

ふぅ……皆さん、ここまで読んでくださりありがとうございます。


今回の章は、裏グリモワールドの闇と、家族の秘密、そして石盤の魔力が一気に炸裂しました。桃太郎の頭の中はもう完全にカオス状態ですが(笑)、皆さんも一緒にパニックを楽しんでくれたなら幸いです。


白雪やカリン、セレナたちがこれからどう立ち向かうのか……読者の皆さんと一緒にドキドキしていきたいですね。


もし「この展開、最高だった!」と思ったら、ぜひ高評価とブックマークをお願いします。皆さんの応援が、作者の魔力(執筆力)を爆上げしてくれます!


次の章も、さらに混沌とワクワクが待っていますので、ぜひお楽しみに。


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