表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/76

第三十四話(後編):爆裂魔法を撃ったら桃太郎が死にかけた件

ここまで読んでくださりありがとうございます。


今回の話では、セレナの爆裂魔法の覚醒と、四人の連携が大きく描かれる回になりました。

そしてマギ・オババの第二の試練も、ついに決着です。


力だけでは越えられない試練。

恐怖を抱えたまま、それでも前に進むこと。


オババの言葉が、セレナたちにどんな意味を残したのか。

そして物語は、ついに「石盤」と「犯人」という核心へと進み始めます。


それでは本編をお楽しみください。


マギ・オババが、手にした杖を石畳の床へと力強く叩きつけた。


――― ドンッ!! ―――


その衝撃音が洞窟内に響き渡ると同時に、魔法陣から魔法で作った魔獣が這い出してきた。


「なっ……何だこれ、魔力指数が跳ね上がってるぞ!」


「……えっ!?」


突如として現れた禍々しい存在に、一同は驚愕し、その場に凍り付く。


そんな彼らを見据え、オババが不敵な笑みを浮かべて言い放った。


「お嬢ちゃん、仲間の死を計算に入れるしかない極限で、その枷を叩き割るまでさ!」


これが、四人に課された第二の試験の開始だった。


直後、魔獣が桃太郎へと襲いかかる。


「っ、速い……っ!?」


目の前に迫る凶刃を前に、桃太郎が息を呑む。


その光景を見たセレナが、震える拳を握りしめた。


「…………っ!!」


セレナは覚悟を決め、空の両手を正面へと突き出した。


瞬間、彼女を中心として、洞窟内の酸素が燃え尽きるほどの熱量が膨れ上がる。


――― 黄金。


視界を焼き潰すほどの閃光。


彼女の喉から漏れたのは、詠唱ですらなく、魂の絶叫だった。


ドォォォォォンッ!!


放たれたのは、暴力的なまでの黄金の爆裂魔法。

一撃で地形を変えるほどの質量を伴った光の奔流が、戦場を真っ白に染め上げる。


しかし、その軌道は魔獣を逸れ、そのまま桃太郎に向かって飛んで来る。


「死ぬ! 今度こそ死ぬぞ俺!!」


目前に迫る黄金の業火。死を確信したその瞬間、桃太郎が叫んだ。


「アルカナ数理魔法――『アルカナ・ベクトル』ッ!!」


桃太郎の展開した数式が、黄金の魔法に干渉する。

無理やり捻じ曲げられた破壊の光は、間一髪で彼の横をすり抜け、洞窟の壁へと直撃した。


ズドォォォォォンッ!!


轟音と共に、硬強な岩壁が粉々に砕け散った。

濛々と立ち込める煙の中から、オババの満足げな声が響く。


「……ふん。合格だぁ!」


その声と同時に、洞窟の奥で魔獣がうねりながら消える気配もなく立ちはだかる。


セレナの黄金の爆裂魔法は制御され、桃太郎の横をかすめて洞窟壁にぶつかったものの、魔獣はまだ生きている。


「くっ……!」桃太郎が身を引くその瞬間、白雪が剣を握りしめ、刃先に魔法の力を注ぎ込む。

「これで止める!」


一気に前へ駆け出した白雪の剣が、魔獣の眼前で光を炸裂させる。刃の周囲を取り巻く光の奔流が、魔獣の形を徐々に揺らし始めた。


次の瞬間、カリンが杖を掲げ、指先から鮮やかな魔力を放つ。


「全力で止めるわよ!」


カリンの魔法が白雪の剣と交わり、魔獣を包み込むように光がまとわりつく。ギラギラと跳ねる禍々しい影も、二人の連携による光の奔流の前には力を失った。


魔獣が苦悶の唸りを上げ、次第にその姿を霧のように薄めていく。

黄金色の光に包まれ、最後には完全に消え去った。


洞窟内に静寂が戻る。煙がゆっくりと消え、冷えた空気が満ちる。


セレナの両手の中の炎は、穏やかに揺れる金色のまま。桃太郎、白雪、カリンも互いに息を整え、安堵の表情を浮かべた。


マギ・オババは静かに鼻を鳴らす。

「……ふん、これで真の合格だ」


セレナの目が仲間たちに向かう。手の中の火は、自分だけでなく、仲間との信頼と絆を映し出すかのように揺れていた。



オババの声とともに、桃太郎たちは安堵の息をつく。しかし、オババはまだ杖を握りしめている。


「消えよ、魔獣!」

オババが石畳の床に杖を力強く叩きつける――ドンッ!!


その瞬間、洞窟内に衝撃が走る。杖の先から光の奔流が魔獣に向かい、禍々しい存在を包み込む。魔獣の赤い瞳が一瞬、揺らぐ。


「う……!?」桃太郎が息を飲む。


しかし――魔獣は消えない。光に包まれても、なお形を保ち、低く唸りながら桃太郎たちを睨む。


「……まだ……!?」白雪が剣を握り直す。

「セレナ、今度は私たちの出番だ!」カリンが声を張り上げ、魔法詠唱を開始する。


白雪は剣に魔法を垂らし込み、光の奔流となった刃を魔獣の前に突き出す。

カリンも掌から魔力を解き放ち、魔獣に直撃する。


「これで――!」二人の攻撃が重なり、魔獣はついに光の粒子となって崩れ、洞窟内に静寂が戻る。


オババは杖を軽く床に置き、にやりと笑った。


「……ふん。ようやく消えたか。これで第二の試練も完了だな」


洞窟に静寂が戻る。魔獣は完全に消え去り、煙がゆっくりと晴れていく。


セレナの両手の中の金色の炎は、穏やかに揺れながら自分自身の力を、そして仲間との信頼を映し出していた。桃太郎、白雪、カリンも互いに息を整え、安堵の表情を浮かべている。


マギ・オババが杖を軽く振ると、残り香のように魔力が漂う。


「よく見たな。魔法ってのはね、ただの力じゃない。恐怖を消すものでも、破壊するための道具でもない」


オババの目が、静かにセレナたちを見据える。


「魔法は、恐怖や絶望を抱えたままでも、一歩前へ踏み出すための力だ。使い手の心次第で、敵にも味方にもなる。力を持つ者が恐れを知り、それを乗り越えることで初めて本当の魔法になる」


セレナは、炎を見つめながら頷く。仲間たちも、言葉の重みを感じ取ったように静かに見つめている。


「これで、第二の試練は終わりだ。忘れるな、覚えておけ」

オババの声が洞窟内に余韻を残す。

「魔法とは、己の恐怖と向き合い、歩み続けるための道具なのだよ」


そして、静かに杖を床に置き、微笑むオババの姿が最後に映る。


マギ・オババは静かに杖を握り直した。

「よくやったね、セレナ。爆裂魔法はお前のものになった」


オババはセレナをじっと見つめた。


「セレナ」


杖の先で、静かに床を叩く。


コンッ。


「お前は――犯人を知りたいか?」


セレナの呼吸が止まる。


燃え落ちる家。


崩れる梁。


離れ離れになった家族。


胸の奥に、消えない炎が揺れた。


「……知りたい」


オババはゆっくり頷く。


「ならば追跡だ」


「普通の魔法では辿れない。だが――石盤が揃えば追える」


セレナの瞳がわずかに揺れる。


「石盤……」


オババは不敵に笑った。


「さあて、ここからが本当の魔法使いの仕事だよ」



桃太郎は背後で小さく息を吐いた。

石盤。追跡。

その言葉が頭の中で静かに繋がる。


――最後の一枚、か。


嫌な予感が胸を締め付ける。

自分が望んでいない方向に流れていくことが、はっきりとわかる。


「……詰んだな、これ」


誰も彼もが、この先の展開を知らない。

ただ、目の前の光景と、オババの笑みだけが確かに現実として立ちはだかる。


セレナはまだ、何も知らない。

ただ、オババの手元で石盤が静かに輝くのを見つめていた。


桃太郎の心は、いやでも覚悟を迫られる。

行きたくはない――だが、何かが、行かざるを得ない状況へと重く沈む。


石盤の最後の輝きが、まるで未来の扉を指し示すかのように。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

面白かったと思っていただけたら、ぜひ高評価とブックマークをいただけるととても励みになります!


作者としては、この回はかなり重要な節目のエピソードでした。


セレナの爆裂魔法の暴走、桃太郎の数理魔法による生存、

そして白雪とカリンの連携による決着。


それぞれの役割がはっきり見える戦闘を書きたかったので、

「誰か一人が勝つ」のではなく「四人で突破する試練」という形にしています。


そして、マギ・オババの試験は単なる戦闘試験ではなく、

恐怖と向き合う覚悟の試験でした。


魔法とは何か。

力とは何か。


その答えの一部を、オババがセレナたちに残した形になります。


そして物語はここから――

ついに石盤と犯人の謎へと進んでいきます。


桃太郎が感じた「嫌な予感」。

セレナが追い求める「真実」。


この二つが交わるとき、物語は大きく動きます。


次回から、いよいよ物語の核心に入っていきます。


ぜひ続きも読んでいただけると嬉しいです。

それでは、また次の話でお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ