第三十三話(中編):超高難度おにごっこを最短で終わらせることにした件
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平和な1日が終わるはずが、気づけばそこは重力無視の浮遊迷宮。
「魔法を使いたいか?」という双子の問いに、無邪気に答えるカリンたちの一方で、桃太郎だけは一人、その「詰み状況」に絶望していました。
前世の知識と解析能力を総動員して、この「終身刑(修行)」を1秒でも早く終わらせるための攻略が始まります!
四人はゆっくりと落下していた。
空間が歪み、光と影がねじれる中、床はまだ見えない。
やがて、足元が近づく。桃太郎は小さく息を吐き、カリンに向かって叫ぶ。
「カリン、頼む!」
カリンは手元の魔法の杖に、魔法石をカチッと装着した。
「わかった、ももっち! 光魔法、行く!」
白雪はその瞬間、危険な気配を感じ取り、自然と剣の鞘に手をかける。
「……何か来るかもだ」
カリンは杖を高く掲げ、指先でルーンをなぞるように魔法を詠唱する。
「光よ、迷宮の輪郭を示せ!」
柔らかくも力強い光が螺旋を描くように広がり、歪んだ空間に沿って伸びる。
その光に導かれ、四人は無事に地面に着地した。
光の先に――圧倒的な格好良さを放つ男女の双子が立っていた。
黒髪の青年は青い瞳でじっと四人を見下ろし、長いマントが足元でひらりと舞う。
隣の女性は黒髪ロング、手首のルーン紋のブレスレットが淡く光り、腕を組んで立つ。二人の存在感は、迷宮そのものの神秘を体現しているかのようだった。
四人は、思わず後ずさった。
「お前たち……魔法を使えるようになりたいのか?」
青年が低く、しかしグイグイと迫るように問いかける。
「三百二十年ぶりのお客様なのに、理由もなくここに落ちてくるとは……」
女性も腕を組み、鋭い目で四人を見つめる。
その瞬間、四人は息を呑んだ。
桃太郎は言葉が詰まるが、カリンが前に出て必死に答えた。
「私たち……魔法を使えるようになりたいのだ!」
白雪は少し遅れて、剣を鞘に戻しながら口を開く。
「ええ……迷宮で修行をしたくて……だ」
セレナは冷静に視線を巡らせつつ、目的を述べる。
「それに……この世界の仕組みをもっと知りたくて。正義のためにも、力が必要だと思ったから」
青年の瞳が光を帯び、女性が口角を少し上げる。
「なるほど……それで、ここまで勝手に飛び込んできたわけか」
「ふふ……三百二十年ぶりの来訪者が、こんなに元気とは……面白くなりそうね」
四人は安堵と緊張が入り混じる中、迷宮の奥に広がる未知の世界を見つめた。
カリンは杖を握りしめ、白雪は剣を構え直し、セレナは周囲を警戒しつつ興味津々。
桃太郎は頭の中で迷宮の構造を解析しつつ、隠居生活の終わりを静かに受け入れた。
「……ああ、仕方ないな。やるしかないか」
彼の小さな呟きは、冒険の始まりを告げる合図となった。
その言葉に応えるように、黒髪ロングの女性が、組んでいた腕をゆっくりと解いた。
彼女が立つ場所は、あまりに白く、あまりに静かだ。
床も壁も、曇り一つない鏡面のような白銀の硬質素材。足音すら吸い込まれるほどの静寂が支配している。
「……なら、始めましょうか」
女性が白手袋に包まれた指を、チチッ、と鳴らした。
――その瞬間。
完璧に整然としていた空間の空気が、悲鳴を上げるように歪んだ。
何もなかったはずの虚空から、無数の巨大な岩塊が、音もなく染み出すように次々と出現した。
「……な、なにこれ……! 岩が浮いてるのだ!」
カリンが絶叫し、思わず杖を構え直す。
出現した岩は、あるものは静止し、あるものは複雑な軌道を描いて浮遊し始めた。
それは、逃げ回る双子を捕まえるための足場であり、同時に四人の行く手を阻む巨大な障害物でもあった。
「ルールは単純。制限時間はないわ。私たちを捕まえるまで、一生ここから出られない……それだけよ」
女性が不敵に微笑んだかと思うと、双子の二人は重力を無視して、その無数の岩の隙間へと軽やかに飛び込んだ。
「さあ、おにごっこの始まりだ。捕まえられるものなら、な」
青年の挑発的な声が、岩の合間に反響し、二人の姿が岩の影へと消えていく。
「……おい、一生出られないって……それ、修行じゃなくて終身刑じゃねえか!!」
桃太郎の絶望の叫びが、静寂の聖域に響き渡る。
「ももっち、泣いてる暇はないのだ! 今すぐ捕まえて、外に出るのだ!」
白雪がいち早く鏡のような床を蹴り、最初の岩へと跳躍した。
「……ええ、やってやるわ。私たちの力、見せてあげる!」
セレナも青ざめながらも、決意を瞳に宿して杖を構える。
静寂に包まれていた聖域は、一瞬にして四人が双子を追い詰める、人生を賭けた**「超高難度の立体捕獲劇」**の舞台へと変貌した。
「……クソ、わかったよ! 効率よく追い詰めるぞ! カリン、右の岩へ跳べ、そこが最短ルートだ! セレナ、浮遊パターンの解析を回すから、俺の指示に従え! ……最短一分で、あのチート双子の逃げ道を全消去してやる!」
桃太郎の号令と共に、四人は浮遊する岩の群れへと猛然と飛び込む。桃太郎の指示で、カリンは光魔法で足場を照らし、セレナは浮遊パターンの解析を回す。
その隙を突くように、白雪は岩の隙間を縫って跳躍し、青年の背後へ回り込んだ。
「おい、お前……いい動きしてなぁ! 裏側から来たのか! そうだろ、そうだよなぁ! そうに決まってる! 死戦くぐり抜けたやつの動きだよなぁ!」
青年の瞳が不気味に輝き、くすくすと笑う。白雪の行動を楽しんでいるかのようだった。
岩の上で静止した瞬間、青年の拳が微かに握り直される。
「イヤ、半覚醒か! 半覚醒だよなぁ……相手の動きの先読み、できるのか?」
彼はくすくすと笑いながら付け加える。
「残念だなぁ……覚醒すれば、魔法を剣に垂らし込めて、俺を捕まえることができるもんなぁ……」
白雪が青年の背後に回り込む間、カリンは岩の上で必死に杖を握りしめ、光魔法を詠唱し続けていた。すると、双子の女性の方が軽やかに岩の隙間を移動し、カリンの前に立つ。
「アラアラアラアラ……あんた、裏側にいる……あの女に似てるよね。似てるってもんじゃない……お母さんかい!」
カリンは一瞬目を丸くし、杖をぎゅっと握りしめる。
「え、えっと……私は……その、違います!」
セレナが横目でカリンの背中を押しながら冷静に呟く。
「……落ち着け、今は戦闘中だ」
カリンは頷き、杖から光をさらに強めて岩を照らす。周囲の浮遊岩に沿って魔法の光が螺旋を描き、迷宮の輪郭が次第に明瞭になっていく。
その瞬間、双子の女性は楽しげにくすくす笑い、身を軽く跳ねさせる。
「ふふ……面白くなりそうね。さあ、動きなさい、迷子たち」
最後までお読みいただきありがとうございます。
「320年ぶりの来訪者」を全力で歓迎(物理)してくれるチート双子の登場です。
モモが「最短1分で全消去してやる!」とキレ気味に覚醒しつつありますが、果たしてこの「お母さん」疑惑や「半覚醒」という不穏なキーワードの真相はどこにあるのか……。
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