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第三十三話(前編):資料館で「見るな」と叫びながら、一瞬でガチ解析した件

本日もご愛読ありがとうございます!


今回の舞台は、静寂に包まれた歴史資料館『ルーン・アーカイブ』。


ようやく平穏な時間が訪れるかと思いきや、桃太郎の「努力オタク」の血が黙っていませんでした。


見なければいいものを、解析しなければいいものを……。


理性が「関わるな」と叫ぶ中で、脳が勝手に真実を導き出してしまう桃太郎。


彼の自業自得なまでのハイスペックぶりが招く、新たな波乱の幕開けをお楽しみください!

『ルーン・アーカイブ』歴史資料館の重厚な石扉を押し開けると、ひんやりとした空気と埃の香りが混ざり、古の知識が静かに眠る展示室が広がった。


「うわあ、すごい……!」


カリンは目を輝かせ、早速棚に並んだ魔法の杖や古い石を覗き込む。


「これ……杖にはめるんだ……触ってみたいのだ!」


「落ち着け、カリン! それは展示用だぞ! 勝手に触って警報でも鳴らしてみろ、俺の隠居計画が『不法侵入』で上書きされる!」


桃太郎が慌てて駆け寄るが、彼自身も書棚に並ぶ剣術書に目を光らせていた。


(ふふ……なるほど、この時代の重心移動、実用的だな……)


つけ、と指を舐めてページをめくる。グフフ、と小さく漏れる笑みは、新たな戦術のアイデアが脳内を埋め尽くしていく予兆だった。


白雪は静かに古い武器を手に取り、その構造を観察してニヤリと笑う。


「なるほど……魔法がなくても、この反りなら獲物の皮を裂けるのだ……」


一方のセレナは、お試し用の杖を手に取り、指先を震わせながら「水を出せるかな……」と一滴の光に一喜一憂していた。


四人の声と足音が重なり、館内はわいわいガヤガヤと活気づいていく。


「みんな、あっち行ってみるのだ! 面白そうな武器がいっぱいあるのだ!」


白雪の声に誘われて、セレナとカリンも奥の『古代展示場』へと足を運ぶ。


「なになに、白雪ちゃん! 私も行くー!」


「あ、待ってください二人とも……!」


賑やかに去っていく三人の背中を追い、桃太郎も重い腰を上げた。


「……ももっちも早く! 置いていっちゃうわよ!」


「わかってるよ、今行く……」


カリンに急かされ、本館と古代展示場を結ぶ長い通路を通りかかった、その時だった。


桃太郎の視界の端に、壁のレリーフが飛び込んできた。


(……なんだ? この壁の模様。どこかで見たことがある気がするが……。いや、気のせいか。……関わらない方がいい。直感が言ってる、これは間違いなく『やばい奴』だ)


一度は見て見ぬふりをして、強引に視線を逸らした。


そのまま三人のいる展示場へ合流し、賑やかな空気の中に身を投じる。それが今の彼の「守るべき日常」のはずだった。


……だが、無理だった。


白雪の武器自慢を聞きながらも、脳内の演算ユニットが、先ほど網膜に焼き付いた「壁の模様」を勝手に解析し続けている。

隠居生活が壊れる恐怖。それ以上に、真実を知りたいという「努力オタク」の血が、彼の理性を塗りつぶしていく。


「……わりい、カリン。ちょっと忘れ物。先に行っててくれ」


「えっ、ももっち? また変な顔して……」


カリンの声を背に、桃太郎は一人、先ほどの通路へと引き返した。


静まり返った通路で、壁一面に広がる意味深な模様をじっと見つめる。


「……クソ。わかってるんだよ、こんなの関わっちゃダメだってことは……!」


毒づきながらも、桃太郎の瞳は青い光を宿し、アルカナ数理を展開していた。


視界に広がる無数の数式が、壁の模様と重なり、カチリ、と音を立ててパズルが組み上がっていく。


その構成は、かつて中央図書館『ルーンメモリア』で目にした、あの記憶と完全に一致した。


「……変数置換。……論理展開、完了。……やっぱこれ、**『石盤』**じゃねえか……!」


壁の模様が桃太郎の演算に呼応して発光し、空間が反転するようにせり出してきた。


そこに現れたのは、透明な輝きを放つ、歴史の裏側の欠片。


桃太郎は冷や汗を流しながら、自らのオタク根性が引きずり出したその「真実」を、震える指先でなぞった。


「……冗談だろ」


桃太郎は、石盤に浮き上がった複雑な数理モデルの

「終着点」を読み取り、顔を青くした。


これはただの記録ではない。


特定の座標、特定のエネルギー充填――それらを数学的に合致させた時、世界に隠された「穴」をこじ開けるための物理的な鍵だ。


「……セレナが言ってた、『七個の迷宮』……。その中の一つを起動させるための、認証コードかよ、これ」


隠居生活が、音を立てて崩れ去る。


この鍵を見つけてしまった以上、もう「知らない」では済まされない。


「ももっちー! 忘れ物あった? 戻ってきたよー!」


通路の向こうから、無邪気なカリンの声が近づいてくる。


桃太郎は、背後の石盤を隠すように立ちふさがった。


(……ヤバい。これはマジでヤバい。こいつをこいつらに見せたら、俺の『平穏』は今日で終わりだ……!)


だが、時すでに遅し。


カリン、白雪、セレナの三人が通路に駆け込んでく

る。彼女たちの目には、桃太郎の背後で禍々しく、それでいて神々しく青光を放つ**「巨大な鍵(石盤)」**が、はっきりと映り込んでいた。


桃太郎は思わず後ずさり、石盤の光に手をかざして必死に隠そうとした。

「こ、これは…見ちゃダメだ、絶対に見ちゃダメだーー!」


しかし、カリンはそんな制止を完全無視して駆け寄る。

「わあ! これって迷宮の鍵……なのだ!? 見て見てももっち!」


白雪は眉をひそめ、剣の柄を握りながら慎重に後ろからついてくる。

「危険な匂いがする……でも、ちょっと面白そうかも……」


セレナは一歩引きつつも、鋭い目で石盤を見つめる。

「……これ、ただの展示物じゃないわね。仕組みはわかる、でも触るのは……」


桃太郎の頭の中で理性とオタク心が衝突する。

(いやいやいや! 隠居生活! 俺は平穏に暮らすんだ! でも……いや、無理だ……カリンがもう…引っ張ってくる……!)


その瞬間、カリンが両手を広げ、目を輝かせて石盤に触れようとした。

「さあ、迷宮の扉を開けるのだ!」


桃太郎は思わず叫ぶ。

「やめろぉぉーーー!!!」


だが、時すでに遅く、青光が館内に波のように広がり、通路の空気が振動した。

石盤の光に引き寄せられるように、四人の身体が軽く浮き、迷宮の入口が静かに、しかし確実に開き始める。


その瞬間、桃太郎は深く息を吸い、心の中で呟いた。

(ああ……これで俺の隠居計画は、完全に終了だ……)


カリンは笑顔で前を見据える。

「冒険は、今からなのだ!」


白雪は剣を握り直し、少しだけ口角を上げる。

「なら、行くしかないか……」


セレナは冷静に状況を見極めながらも、微かに笑った。

「……ま、久々に面白くなりそうね」


石盤の青光が四人を包み込み、ルーン・アーカイブの展示室は、一瞬で迷宮の入り口そのものへと変わった。


桃太郎は、頭の中で解析式をぐるぐる回しながらも、無言で四人の後ろに立った。

「……ああ、もう仕方ないか……俺も、やるしかないのか……」


その青光の中で、四人の影はゆらりと揺れ、展示室の床はまるで異世界の入り口へと吸い込まれるようだった。

そして――次の瞬間、彼らはまだ見ぬ迷宮の奥深くへと、強制的に足を踏み入れることになるのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!


「見ちゃダメだ!」と言いながら、一瞬で石盤の認証コードを読み解いてしまう……。桃太郎の隠居生活を一番邪魔しているのは、他ならぬ彼自身の「解析能力」なのかもしれません。


ついに起動してしまった伝説の迷宮。無理やり冒険の渦中に引きずり込まれた一行の運命は……?


「桃太郎、またやっちゃったな……!」と笑っていただけた方は、ぜひブックマークと高評価で応援をお願いします!


皆様の応援が、彼の隠居生活を(さらに)遠ざける……いえ、物語を書き進める何よりの原動力になります。

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