第三十三話(後編):迷宮で双子と命がけのおにごっこをさせられた件
ここまで読んでいただきありがとうございます!
迷宮編、ついに動き始めました。
今回は白雪の「逆鱗」と、おじいちゃんとの記憶、そして半覚醒の感覚を書いてみました。
そして最後のカウントダウン。
書いている作者自身も「間に合え…!」と思いながら書いていました。
ここから迷宮の試験はさらに進んでいきます。
白雪の剣、桃太郎の数理魔法、双子の試験官……いろいろ伏線も動き出します。
もし少しでも
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青年の唇から漏れた蔑みが、白雪の心奥に眠る「逆鱗」を真っ向から踏み抜いた。
「おじいちゃんのやり方、ちょっと変だったんじゃないか? お前に戦わせて、育て方が悪かったんだな――」
白雪の体が硬直する。血の気が逆流し、胸の奥で何かが燃え上がる。
(やめろ!やめるんだ! おじいちゃんを馬鹿にするな……!)
怒りが全身に波のように押し寄せる。風の流れ、岩の揺れ、魔法の光まで微かに歪む感覚。白雪の目に、七歳のあの日、森で魔物と対峙した瞬間の光景がフラッシュバックする。
――五歳の冬。雪の浅い森。おじいちゃんの短い声。
「足音を消すんだ、白雪」
――七歳の節目の日。森の奥。剣が魔物の爪を受け止めた。地面が光り、体の奥で何かが“弾けた”。半覚醒の始まり。
そして、今――怒りと記憶が重なり、白雪の体が自然に動く。
岩を蹴り、跳躍。青年の背後に回り込むその動きは、半覚醒の時を思わせる精密さで、まるで空間を読むかのようだ。
「……クソ、やめろ……! おじいちゃんを侮辱するな!」
その瞬間、白雪 of 剣に微かな光が滲む。体が覚えていた動きの記憶が、理性を越えて瞬時に発動する。
桃太郎はすぐに状況を理解し、指示を出す。
「カリン、右の岩へ! セレナ、浮遊パターン解析を回せ! 俺は白雪と男を抑える!」
カリンは杖から光を強め、セレナも冷静に杖を構える。浮遊する岩の間で、二人の双子に向けて攻撃の準備が整う。
白雪は青年の背後に回り込む。剣を構え一瞬静止するその視線は、もはや獲物を逃さない捕食者のそれだ。
「……行くのだ!」
桃太郎と白雪の連携が始まった。
白雪は剣に魔法を垂らし込み、半覚醒の感覚で青年の動きを正確に読み取る。桃太郎は解析と指示で補助し、二人は見事に男の逃げ道を封じる。
青年は一瞬驚き、くすくす笑いながらも体勢を崩す。
「ふふ……なるほど、コレが半覚醒か……面白くなってきたな」
だが、岩の群れに翻弄される青年の動きは、すでに桃太郎と白雪の連携の前に制御されていた。
――捕獲開始。
白雪の瞳の中で、何かが弾けた。
「…絶対に侮らせない……!」
感情が爆発し、その叫びに呼応するように、彼女の持つ剣に青白い魔力の光が激しく滲み出す。理屈ではない、**「剣に魔法を垂らし込める」**感覚。
「白雪、行け! お前の先読みを俺が数式で補完する!」
桃太郎がアルカナ数理魔法を展開し、最短の接敵座標を指し示す。二人の完璧な連携が、逃げ回る男を逃げ場のない角へと追い詰めた。
「捕まえたのだ……!!」
白雪の光り輝く剣先が、男の喉元を正確に捉える。
だが。
20
突然、真っ白な迷宮の壁に、血のように赤い巨大な数字が浮かび上がった。
「……なんだ!? なんだこの数字は!」
桃太郎が戦慄する。
「……あはは。素晴らしい連携だ。でも、あれ、言ってなかったかな?」
剣を突きつけられているはずの男が、薄笑いを浮かべて首を傾げる。
19
数字が削れる。その瞬間、迷宮全体の魔圧が跳ね上がり、世界そのものが軋むような音を立てた。
「双子は常に一つ。つまり、『二人同時に捕まえる』……これ、この迷宮の常識だよ?」
「……はぁ!? 同時じゃなきゃダメなのかよ!!」
桃太郎が絶叫。男だけを捕まえても、女が逃げ続けていれば「捕獲」とは認められない。
18
「カリン、セレナ! 残りは18秒だ! その女を逃がすな、全力で追いかけろ!!」
桃太郎の指示で、二人が弾かれたように走り出す。
17
「わかったのだ! 今すぐ捕まえるのだー!」
カリンが光の尾を引いて跳躍する。
16
「……16秒。間に合わせる、絶対に!」
セレナが魔力を絞り出し、重力の檻を練り上げ、逃げる女を包囲し始める。
赤い数字が壁に浮かぶ。15秒。
カリンは杖を握りしめ、光の尾を女の方へ伸ばす。
「……あと少し、届くはず!」
しかし、岩に阻まれ、光は寸前で逸れる。
その絶望的な瞬間、青年が顔を歪めて嘲笑った。
「あ、もう一つ言い忘れてた! 時間切れの場合、この迷宮がお前たちを攻撃するぞ。急げ、急ぐんだ……ククク」
「……何だとッ!?」
桃太郎の顔が、恐怖で引き攣る。肺に吸い込む空気すら熱く、焦燥で思考が焼き切れそうだ。これはただの失敗ではない、文字通りの全滅が背後に迫っている。
10秒
「くそ、あとちょっと……動けぇぇッ!」
セレナが重力の檻を作り、女を捕縛しようとする。喉が枯れ、魔力の逆流で指先が痺れる。だが岩の隙間を軽やかに舞い、駆け抜ける女の身軽さに、あと一歩手が届かない。
「くっ……! 逃がすな!」桃太郎が叫ぶ。
5秒
迷宮全体の魔力が逆流を始め、牙を剥く。浮遊岩が激流の如く乱舞し、平衡感覚が消失するほどの振動が襲う。
カリンは杖を握り直し、魔法石をカチッと装着する。
ルーンが瞬く光を放ち、女に向けて光が伸びるが、やはり届かない。視界の端で、赤い数字が断末魔のように明滅した。
「……カハッ、頼む……間に合えッ!!」
3秒
壁の赤い数字は1。
迷宮の魔力が牙をむくように集まり、あらゆる存在を抹消する破滅的な魔法攻撃の兆しが走る。
1秒
セレナも血を吐くような思いで必死に手を伸ばすが、女は逃れる寸前。
0秒――
「やめろ、ここで……!」
カッチ!
今回の戦闘は、
白雪:感覚型(半覚醒)
桃太郎:理詰め(数理魔法)
この二人の「連携」を意識して書きました。
個人的にお気に入りなのは
0秒捕獲の瞬間です。
白雪の感覚 → 桃太郎の数式 → カリンの光
という流れで、チーム戦っぽく仕上げてみました。
そして最後に出てきた
「審問」
この迷宮、まだまだ終わりません。
次回は少しずつ
・迷宮の本当の試験
・双子の正体
・白雪の剣の違和感
このあたりが出てくる予定です。
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それでは次回もよろしくお願いします!




