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第三十話 (中編): 【誤算】計算して追ったら盤面が違ってた件

いつもお読みいただきありがとうございます!


白雪の形見を奪い、スラムへと消えた少女。


追うモモたちは、そこでスラムの過酷な現実と、少女が背負っていた「守るべきもの」を目の当たりにします。


バラバラだった三人の個性が一つに重なる、反撃の瞬間をお楽しみください!

袋を開ける。


「……なんだコレ?」


冷たく、硬い。金じゃない。石? 文字が刻まれている。


(……怖い……でも、やらなきゃ…)


背後で気配がざわつく。悪い奴らだ。


「金は?」


心臓が跳ねる。喉が詰まる。痛みが走る。


(やりたくない……でも、私がやらなきゃ、あの子達が……)


歯を食いしばる。手に力を込めるその瞬間、腕を掴まれた。


腕を掴まれた瞬間、少女は布袋をぎゅっと抱きしめた。

冷たい手の感触に、全身が震える。


「金、持ってないなら盗んで来い!

言うこと聞かないと、わかってるだろうなあ――」


低く、冷たい声が背後から響く。威圧感に、少女の心臓は跳ねる。


膝の上で寄り添う孤児たちが、すすり泣き、声を震わせる。

「いや……いやだよ……」


少女は歯を食いしばり、布袋を抱き締めながら小さく言い放つ。

「大丈夫よ、もう泣かない。余計なことしてないで、さっさと行け!」


悪者の手を振り切るように踏み出す。

逃げるしかない――布袋を守らなければ、あの子達が危ない。


瓦礫を踏み越え、路地を駆け抜ける。背後からは悪者の低い声と、孤児たちのすすり泣きが追いかけてくる。


(……行くのだ……ここで止まったら、あの子達が……!)


路地の角を曲がり、扉を抜けた瞬間、冷たい風が顔を打つ。

「チクショ……!チクショチクショチクショ……!」


握りしめた布袋はまだ温かく、小さく震えている。

(……でも、行くしかない……あの子達を守るために……!)


少女は再び足を蹴り出す。

逃げる足音と悪者の低い声が、スラム街の狭い路地に重く響く――


――


白雪は立ち尽くす。悔しさが胸を締めつける。


「お守り……!」


祖父からもらった、何度も自分を救ってくれた大事な布袋。


今、石盤のかけら入りだと知った瞬間、行動を決意する。


カリンは目を輝かせ、軽く肩を叩く。

「取り返すよ、ももっち!」


桃太郎は心の中で葛藤する。


(俺は隠居したいだけなんだが……でも、白雪の顔を見たら……)


手を握り締める。決意が固まった。


(……俺なら、やれる……!)


三人は静かに街へ出る。


昨日偶然見かけた子供たち――あの少女の姿が頭をよぎる。


桃太郎は杖に魔法石をカチッとはめ込んだ。


「アルカナ数理……クソ、計算が合わない。わからない、どこだ……?」


無秩序に動く群衆を前に、桃太郎の計算は空転し、苛立ちが募る。


その時、横からカリンが力強く路地の先を指差した。


「ももっち、あっちだよ! 昨日のあの子、曲がり角では必ず低い方に潜り込んでた。私の勘だと、あの荷車の影!」


カリンの言葉が、霧の中の道標になる。


間髪入れず、白雪がその先へと視線を鋭く突き刺した。


(人混みに紛れてるはず……確か身長は、自分たちとさほど……)


白雪は、大人たちの膝より下の「低い層」に意識を絞り込む。


行き交う無数の足、蹴立てられる砂埃。そのわずかな隙間に、自分と同じくらいの高さで動く「異質な影」を、白雪の目が逃さず射抜いた。


「……なんだ? 桃太郎、あそこ! あの人混みの底、姿の似ている人がいるのだ!」


白雪の「目」が、混沌としたスラムから一点の真実を掴み出す。


桃太郎は即座に視線を合わせるため、一歩踏み込んだ。


「視界補正……ここが死角だ」


白雪の指先と、自分の視線を一致させるための最短距離。


結果として距離が詰まる。


白雪は一瞬、呼吸を止めた。


(……近いのだ)


胸の奥が、ひとつだけ跳ねた。


理由は分からない。

分からないまま、白雪はすぐに視線を戻した。


その瞬間、桃太郎の脳内で、バラバラだったすべての変数がパズルのように噛み合った。


「――それだぁ! 間違いない!」


自分一人の計算では届かなかった「正解」。仲間の言葉と目が、計算式を完成させた。


桃太郎の瞳に、確信の火が灯る。


「行こ!」


少女は荷車の陰に身を潜め、布袋をしっかり握り締めた。

人混みに紛れても、背後から低く響く声が耳に届く。


「さっさと動け、金を取ってこい!」


恐怖が全身を駆け巡る。膝の上で震えている孤児たちの影をちらりと見て、少女は小さく息を吐く。


(……やらなきゃ……あの子達が……!)


目の前の男に背を向け、少女は無理やり足を前に出す。

手足は冷たく、布袋の重みで肩がずしりとする。


路地を抜け、雑踏の中で人々の隙間を縫う。

小銭入れや荷物を狙う自分の手が震える。


(……いや……でも、やるしかない……!)


偶然見かけた荷車の影。そこに潜り込み、少女は手早く財布を掴む――


その瞬間、足元で小さな石が転がり、バランスを崩しそうになる。


「チッ……!」


背後から「遅い!」という低い声。悪者は一歩一歩迫ってくる。


孤児たちのすすり泣きが胸を締めつける。


――アジトが近い。


少女は必死に影を渡り、角を曲がる。錆びた鉄板の壁が迫る路地の奥、湿った木の香りと埃。

扉の前に立ち止まり、布袋を胸に抱く。


(……ここまで来れば……少しは……!)


背後から、男の低い声が響く。

「そこで何やってる、さっさと――!」


少女は歯を食いしばり、布袋を握り直す。

(……もう、逃げられない……でも、守る……!)


小さな足で扉の前に踏み込み、影の奥へ滑り込む。

鉄の冷たさが手に触れる。


その瞬間、少女の目に、薄暗い地下室の影が映る。

怯えた孤児たちが、壁際に身を寄せる。

そして、奥に立つ男の冷たい目――。


「……上出来だセレナ、これがあれば、あの方も満足されるだろう」


少女は布袋を抱き締め、目を逸らさない。

(……でも、ここで諦めるわけには……!)


鉄扉の隙間から漏れる光の中、少女は決意を固めた。

逃げ切るか、立ち向かうか――選択は目の前にある。


薄暗い地下室で、男の冷たい声が響く。セレナは布袋を胸に抱き締め、怯えた孤児たちを守ろうと体を震わせた。

(……でも、絶対に……守る……!)


男が手を伸ばす――その瞬間、鉄扉が勢いよく叩かれ、光と風が一気に流れ込む。

「そこまでだ!」


セレナの目が一瞬、光を追う。

そこに立っていたのは、白雪、カリン、そして桃太郎。


白雪は木刀を握りしめ、目に決意の炎を灯す。

「お守りを返してもらうのだ!」


カリンは杖を構え、静かに詠唱を始める。

桃太郎は魔法石を杖にセットし、数理魔法の補助線が淡く光る。


「無理に動くな……まず安全を確保だ」


男が睨みつけ、声を荒げる。

「何者だ……!」


だが、セレナはその声に押されず、布袋を胸に抱き締めた。


(……行く……! あの子たちを守るために……!)


白雪の木刀が振り下ろされ、カリンの風が床を掃く。

桃太郎は補助線を活かし、男の動きを封じる。

セレナも思わず踏み出し、男の腕を押しのける。


孤児たちのすすり泣きが、かすかに聞こえる。

その音が、セレナの小さな手をさらに強く握らせる。

「もう、大丈夫……!」


一瞬の隙に、白雪が布袋を手に取り返す。

セレナの手元から温かい重みが離れ、しかし胸の中には勇気が残った。


男は一歩下がり、部屋の奥へ退く。

だが、セレナと仲間たちの目は彼を追い、次の行動を見据えている。


狭い地下室の中、四人の小さなチームが形を成す。

(ここからだ……逃げる? 立ち向かう?)


セレナは布袋を握り直し、孤児たちに目配せする。

仲間と共に、悪者の計画を阻止するため、次の一歩を踏み出す覚悟を固めた――


第三十話(中編)をお読みいただきありがとうございました!


ついに形見の場所へ辿り着いた三人と、必死に孤児を守ろうとしていたセレナ。


しかし、地下室の奥には冷酷な男の影と、さらに深い闇が……。


果たして七歳のモモたちは、この窮地をどう切り抜けるのか!?


「早く続きを!」「四人の共闘が見たい!」と思っていただけましたら、ぜひモチベーション維持のためにブックマーク登録や、下の評価欄(☆☆☆☆☆)から高評価で応援をお願いします!


皆様の一票が、モモの計算速度(執筆スピード)を加速させます!

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