第三十話(中編②):【絶体絶命】隠密潜入、秒でバレた件
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潜入、解錠、そして形見の回収。
完璧なステルス・ミッションが成功するかに見えたその瞬間……白雪の
「咆哮」がすべてをぶち壊します(笑)。
「静」から「動」へ一気に加速する、絶体絶命の後半戦をどうぞ!
三人は建物の陰に身を潜めた。
湿った石畳の匂いと、腐敗したゴミの臭いが鼻を突く。
薄暗い扉の奥、布袋を抱えたセレナが、まるで氷点下の冷気に晒されているかのように、小刻みに震えているのが見えた。
悪党たちが周囲を固め、獲物を品定めするような低い声で脅している。
距離は十数メートル――まだ安全圏だが、一度でも気づかれたら即座に死が襲う距離だ。
桃太郎は杖を握りしめ、頭の中で補助線を描く。
(……距離も角度も最悪だ。息一つ、足音一つでもアウトだぞ)
白雪は木刀を握り直し、影に身を寄せる。その鼓動は、隣にいる桃太郎の耳にまで響くほど激しい。
「……行くのだ、セレナを守るのだ!」
囁くような声。だが、その裏で膝の震えを隠せないのが桃太郎には分かった。
カリンは杖を掲げ、微かに風を操る。
足音を吸い込むように風の膜を三人の周りに張りながら、低く呟いた。
「ももっち、落ち着いて……でも白雪ちゃん、無茶しないでね……」
(いや、無茶ってレベルじゃねぇ……完全に二人に引っ張られてるし……)
桃太郎は自分の「隠居計画」が音を立てて崩れていくのを感じながら、胃のあたりが焼けるような緊張を覚えた。
セレナの小さな肩が震え、息が浅く速い。
布袋を握る手は白く、力が入るたびに指先が小刻みに跳ねる。
それを見た桃太郎の胸が、鋭い痛みと共に締め付けられた。
(……でも、ここで動かないわけにはいかない……!)
悪党の低い声、金属の触れ合う音、衣服の擦れる音――すべてが耳に突き刺さる。
三人は息をひそめ、互いの小さな動きさえ確認しながら、慎重に扉の方向へと踏み出した。
白雪が小石に足を取られ、思わず膝をかすめる。
「うわっ!」
カリンが瞬時に手を伸ばして支えた。
「大丈夫?」
「……くっ、問題ないのだ!」
白雪は顔を真っ赤にして立ち上がるが、その鼓動はさらに速度を増していく。
桃太郎は小声で、自分に言い聞かせるように呟いた。
「まだ気づかれていない……慎重に……」
補助線で動線を確認し、影の濃い場所を選んで進む。
そして――悪党たちがセレナたちを地下へと連れ去った。
重い鉄扉が閉まり、桃太郎の視界から彼らの姿が消える。
(……消えた。ここからは、俺たちだけだ……)
白雪が小さく、だが覚悟を決めた息を呑む。
「……さあ、行くのだ!」
カリンは杖を握り直し、力強く頷いた。
「ええ、待たせてはダメ……!」
三人は扉を押し開け、階段を下りる。
カリンの魔法で消されたはずの足音が、心臓の鼓動と混ざり合って爆音のように響く。
「くっ……暗い……。でも、行くしかない……!」
階段の先、薄暗い地下室。
ランプの光に照らされて、布袋を抱えたセレナと孤児たちの姿が浮かび上がった。
「セ、セレナ……!」
白雪の声は震えながらも、深い怒りと共に力強く響く。
カリンが杖を握りしめ、驚きと安堵で目を見開いた。
「やっと……見つけたわ……!」
桃太郎は深呼吸をひとつ。
脳内の補助線を、震える手で再構築する。
(……よし、ここからだ。一歩間違えれば全員に気づかれる……カリンに任せるしかない)
カリンがそっと扉の鍵に手をかけ、低く、祈るように呟いた。
「開け、解錠の魔法よ……!」
淡い光が杖先に集まり、鍵穴を包み込む。
金属が軋む小さな音が、静寂の中で鋭く響く。
桃太郎は補助線を再調整し、一歩、また一歩と慎重に進路を確認した。
鍵がゆっくりと回り、扉が小さく軋む。
カリンがそっと扉を押すと、薄暗い地下室の影が広がり、怯えた孤児たちのざわめきがかすかに聞こえた。
セレナは布袋を抱えたまま、震える肩を小さく揺らしている。
桃太郎は息をひそめ、補助線を頼りに音もなく進む。
(……大丈夫だ、俺たちが来た……落ち着け……)
カリンが少し下がり、二人に合図を送る。
「静かに……皆、動かないで……」
桃太郎は補助線を頼りに死角を抜け、そっとセレナの手から、あの布袋を受け取った。
(……よし! これでお守りも、孤児たちも安全だ……!)
三人は地下室の奥、悪党の気配に目を配りつつ、静かに撤収に移ろうとした――
緊張感の中、息一つ、足音一つも許されない完璧な「正解」まで、あと数歩。
しかし。
白雪の正義感が、その静寂を真っ向から引き裂いた。
「お、お守りは返すのだぁああ!!」
その咆哮が地下室に響き渡った瞬間、世界が反転した。
桃太郎の頭の中で、完璧だった補助線がガラスのように砕け散る。
足音、息遣い、低くうなる声――すべてが、一斉にこちらを向いて動き出す。
セレナは布袋を抱えたまま(いや、今はもう桃太郎の手にあるはずの感覚に戸惑いながら)、目を見開いて固まった。
孤児たちは小さな悲鳴をあげ、一塊になって身を縮める。
桃太郎は杖を握りしめ、心臓が喉を打つのを感じる。
(……ヤバい、完全にバレた……一瞬でも気を抜いたら、ここで終わる……!)
地下室の暗がりで、三人の呼吸が凍りつく。
闇の向こうで、無数の影が、飢えた獣のような気配が、容赦なく彼らを包囲し、締め上げていく――。
止まらない鼓動と、冷たい戦慄。
だが、誰も、何も、まだ動けない。
次の一歩が、破滅か、それとも――。
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次回は――桃太郎の計算力、白雪の正義感、カリンの風魔法が大暴れ!
そしてセレナ、ついに……!?
「いや待て、ここからどうするんだモモ!?」
絶体絶命の地下室、三人のチームワークが試される――!




