第二十六話(前編):隠居生活が少女の一言で崩壊する件
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ようやく目を覚ましたモモを待っていたのは、平穏な朝……ではなく、嵐のような日常と「嫌な予感」しかしない新展開でした。
新アイテム『琥珀のきびの実』。その響きに隠された不穏なフラグをお楽しみください!
(本編:ここにお送りいただいた「ふぎゃあああああああああ!!!」から「――続く。」までの全文が入ります)
「ふぎゃあああああああああ!!!」
目が覚めた瞬間、俺は自分の目を疑った。
隣のベッドには、あの少女――犬役として俺が召喚してしまった――が、すやすや眠っている。
「なんで…!?どうしてここに…!?いや待て、これは…!」
頭の中で悲鳴がこだまする。
そのとき、家の扉が勢いよく開いた。
「おばあちゃん!ももっち!昨日の女の子はどう?」
カリンが駆け込んでくる。
そのまま勢いよく俺に飛びつき――
「ももっちー!」
「ちょ、ちょっと待て!まだ寝ぼけてるんだぞ俺! 」
七歳口調で叫ぶ。
『うわ、ちょ、落ち着け……落ち着け俺……!』
手足をばたつかせるが、抱きつきの力は強く、ぐいぐい引っ張られる。
「離さないから!」
カリンは笑顔でさらにぎゅっと。
『いやいやいや……平穏に隠居したいんだってば……!』
その瞬間、梟人三人組も突撃してきた。
「兄貴ぃ!生きてる!?」
「無理すんな!」
「離すな!」
ホー、ルル、ミミだ。全方向から包囲され、頭上からも足下からも圧迫。
体がぐらぐら揺れて、まるでコマにされている気分だ。
「ちょっと、重い!うっ、体が!」
七歳口調で叫ぶ俺。
『いや、落ち着け……落ち着け……隠居生活……!』
リミバアは**魔具鍋**を握ったままふらふら登場。
「お、おい…落ち着きなさい……あぁでも、ももっちどうなったの……!」
グダグダ独り言を言いながらも、心配は本物。
「まだ寝てな、あの娘、召喚の負荷で魔力が空っぽなんだ。……あぁ、**琥珀のきびの実**でもあれば、滋養がついて目を覚ますんだろうけどねぇ……」
眠そうに、限界の顔で答えるリミバァ。
『いや、確かにまだ眠いけど……この状況、完全にフラグ立ってるだろ……!』
梟人のホーが身を乗り出す。
「琥珀のきびの実!おじいちゃんから聞いたことある!天然のやつなら、今の時期でも影裂き峠の懐に生えてるよ!」
カリンの目がキラリと光る。
「なら、取りに行こ!」
ルルとミミも即座に反応する。
「アネゴが行くなら、僕たちも!」
カリンはふと俺を見つめ、笑顔で腕を掴む。
「大丈夫よ、ももっちがいれば」
――まずい、まずいぞ……!
**琥珀のきびの実**は、確実に王道フラグのキーアイテムだ。
少女を守るのか、フラグを折るのか……俺は今、冒険の渦に足を踏み入れてしまったのだ。
『イヤイヤイヤイヤ……俺は隠居したいんだ……それなのに、何でこんなことに……!』
抱きつかれたまま、俺の頭上でカリンの髪がふわり揺れる。
ホー、ルル、ミミもそれぞれ跳ねるように動き、まるで小さな嵐が俺を中心に巻き起こしている。
リミバアは魔具鍋を床に置き、頭をかきながらグダグダ。
「もう……まったく……心臓に悪いんだから……でも……生きてる……よね……?」
俺は七歳口調で小さく「う, うん……」と返す。
心の中ではまだ『……落ち着け、俺……平穏
に……!』と絶叫中。
――まずい、まずいぞ……!
**琥珀のきびの実**は、確実に鬼ヶ島フラグのキーアイテムだ。
少女を守るのか、フラグを折るのか、俺は今、冒険の渦に足を踏み入れてしまったのだ。
決まりね!」
カリンが高らかに宣言した瞬間、俺の隠居計画は音を立てて崩れた。
「影裂き峠、今から行こ!」
『今から!?早朝だぞ!?準備とか作戦とか心の整理とか!!』
七歳口調で必死に抗議する。
「ちょ、ちょっと待って!えっと……あの実って、危ないところにあるんでしょ!?」
「うん、崖の奥の“影だまり”って場所!」
ホーが元気よく答える。
嫌な単語が出たな。
影だまり。
どう考えても中ボスが湧く場所だ。
リミバアがふらりと壁にもたれかかる。
「影裂き峠の懐はねぇ……昔は鬼ヶ島に続く古道の分岐でもあったんだよ……」
ピタリ、と空気が止まる。
鬼ヶ島。
はい出ました。
フラグ三段重ね。
『だめだこれ絶対イベント連鎖するやつだ……』
カリンはきらきらした目で俺を見る。
「ももっち、怖い?」
「こ、怖くないもん!」
七歳口調で即答。
心の中では土下座してるけど。
「じゃあ大丈夫ね!」
ぐいっ、と手を引かれる。
ホー、ルル、ミミはすでに遠足テンションで装備確認中。
「縄よし!」
「干し肉よし!」
「アネゴの応援よし!」
応援って何だ。
そのとき、ベッドの少女がかすかに身じろぎした。
全員の動きが止まる。
小さな吐息。
弱々しい、けれど確かに生きている証。
俺の胸が、ぎゅっと締めつけられる。
『……俺が召喚したんだ。俺のせいで魔力が枯れた』
逃げたい。
でも。
もしあの子がこのままだったら。
カリンが、そっと呟く。
「助けたいよね」
まっすぐな目。
くそ。
ずるい。
「……行く」
七歳口調で小さく。
でも今度は、心の声も同じだった。
『……仕方ない。守るだけだ。余計なイベントは踏まない。鬼ヶ島は回避。実だけ取って即帰還。それだけだ』
完璧なプラン。
その瞬間。
ゴゴゴゴ……と遠くで地鳴りが響いた。
ホーが空を見上げる。
「……あれ、峠の方じゃない?」
窓の外、影裂き峠の方向に黒い雲が渦巻いている。
リミバアが顔を青くする。
「……影だまりが、開いた……?」
開いた?
開くって何だ。
カリンが俺の手をぎゅっと握る。
「ももっち」
嫌な予感しかしない。
地鳴りがもう一度、強く。
そして遠くから、獣とも鬼ともつかぬ咆哮が響いた。
『……これ、実を取りに行くだけの難易度じゃないよな?』
影裂き峠。
どうやら“イベント発生中”らしい。
俺の隠居生活は、
完全にチュートリアルを終えてしまったようだ。
――続く。
リミバァの持つ『魔具鍋』の余熱が、
彼女の献身的な(そして限界ギリギリの)看病を物語っていますね。
せっかく「助けたい」と決意したモモでしたが、タイミング悪く影裂き峠では「イベント」が絶賛発生中のようです。
果たしてモモの隠居計画はどこへ向かうのか…
【作者よりお願い】
「モモ、頑張れ(隠居は無理そうだけど)!」「アンバー・グレインの響きがカッコいい!」と思ってくださった方は、ぜひ
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