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6-12

(あれはマイ?)

 学生寮の様子を伺っていたヒルダは、敷地内を歩いている茉唯の姿を見つけた。

 ヒルダは数日前から、アルマセレルの者たちの動向を探っていた。濤嘉女学館を調べているようだが、ヒルダにはその理由がわからなかった。

 ヒルダが宗和の家を出て五年が経っている。その間、茉唯はもちろん、宗和夫妻にも会ってはいない。茉唯がどこに住んでいるかも知らなかった。

(マイを探っている?)

 考えられないことではなかった。ヒルダは五年もの間宗和の家にいた。誰にも知られないようにしていたが、そこにいたことを知られた可能性は完全に否定できない。それが知られれば、当然茉唯と仲良くしていたことも知られるだろう。茉唯からヒルダの行方を聞き出そうとしてもおかしくはない。

(ソウワサンたちは無事だろうか?)

 ヒルダは宗和と志津の身を案じた。しかし、今はここを動くわけにはいかない。ヒルダにとっては、二人よりも茉唯の方が心配だからだ。少なくとも茉唯は無事だ。宗和たちも無事であればそれでいいが、無事でないのなら今からではどうすることもできない。

 ヒルダが危機感を覚えている理由は、アルマセレルの者たちが武装しているからだ。おそらく武力行使しても問題ないと判断しているのだろう。地球にアルマセレルと戦える戦力はなく、戦艦一隻でも掌握可能ではないかとヒルダは見ている。アルマセレルから来た者たちもそう考えているだろうとヒルダは思った。

 ヒルダは存在に気づかれることを覚悟の上で、アルマセレルの調査員から指向性エネルギー砲を奪っていた。武器がなければ応戦できない。その代わり、ヒルダが近くにいることは知られてしまう。

(わたしが出ていけば茉唯からは手を引くだろうが……)

 ヒルダはアルマセレルの者たちの気配を探った。調査員だけではなく戦闘員もいる。調査員だけなら対処できるかもしれない。しかし、戦闘員は難しいだろう。

 戦闘員が合流していることには理由がある。

 地球を先制攻撃するために出撃した艦隊が、数日前に調査船団に合流していた。

「ガレオマレニをその艦隊で攻撃するのですか?」

 調査団総長ウルマス・コスケラが戦艦隊の総司令に問う。

「そうだ。ガレオマレニは一〇年、いや五年後にアルマセレルを攻撃する。だから今のうちに叩き潰すのだ」

「攻撃されるというのは確かなのですか?」

「確かだ。仮に攻撃されないとしても、我々にとっては問題ない」

 総司令は当たり前のように言う。いずれにしても攻撃しておけばアルマセレルは無事ということだろう。

「……しかし、我々の調査では、ガレオマレニにそのような戦力があるようには見えません」

「たった五年の調査だ。見えていないだけだろう。それとも君はガレオマレニを助けたいのかね?」

「そうではありませんが……」

 ウルマスは黙ってしまった。地球の味方をするつもりはないが、先制攻撃をしたら侵略ということになる。何の罪もない人たちを殺すことは気が引ける。

「少し待ってもらうことはできませんか?」

 口を挟んだのは旗艦の艦長だ。

「少しというのは?」

「正確な期限は示せませんが、現在調査が進んでいます。セギオラがアルマセレルに現れた件です。ガレオマレニからアルマセレルに短時間で移動した技術が手に入るかもしれません」

 アルマセレルの宇宙船は地球まで五年かかる。それを大幅に短縮する技術があれば、アルマセレルにとっても有益だろう。

「五日だけ待ってもらえませんか?」

 今度はウルマスだ。

「それは確約できるのか?」

「短時間で移動する技術を手に入れることの確約はできません。しかし、調査を継続するか、あるいは断念するかの判断はできると思います」

 ウルマスが答える。

「具体的には?」

「関係者が一人だけ判明しています。その者を拘束すれば、何らかの情報は得られると思います」

「得られなければ?」

 総司令は淡々と問い続ける。

「その時は調査を断念することになると思います」

 ウルマスは言ったが、本当は調査を継続したいと思っている。真相を明らかにしなくていいのか。おそらく、それは調査団の総意でもあるだろう。しかし、アルマセレルの存亡の方が重要だ。本当に五年後に攻撃を受けるのであれば、いつまでも調査を継続するわけにはいかない。その間にも戦力を増強されてしまうかもしれない。

 しかし、その戦力の存在を疑問視しているのも確かだ。戦力の存在を確認できていないのは調査不足かもしれないが、五年間調査して何も反応がないことも気になる。気づかれていないのか。それとも気づいてはいるのか。気づいているのなら何故動きがないのか。いや、確認できてはいないが動いているのかもしれない。圧倒的な戦力を保有しているから静観しているのか。それとも、大きな戦力がないから成り行きを見守っているのか。

 あるいは攻撃を仕掛けることで、それらを見極めることができるのかもしれないとウルマスは思った。圧倒的な戦力を保有しているのだとすれば、今は火薬庫の中にいる状態とも言える。そして、それはアルマセレルにも言えることだ。

(いま勝てなければ五年後にアルマセレルは滅びる)

 アルマセレルが五年後に攻撃されることを、ウルマス自身は完全に信じてはいない。しかし、五年後に実際に攻撃されてしまったら、取り返しのつかないことになるだろう。心配の種は取り除いておいた方が良い。

「いいだろう。だが三日だ。それで結論が出なければ攻撃を行う」

 総司令が言った。

 地球には調査員だけではなく戦闘員も送られることになった。強硬手段を使ってでも、椹木マリカ璃桜から情報を得るために。

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