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病院を後にすると、優梨奈は公園へと向かった。確かめたいことがある。
公園に着き、紗耶香が立っていた階段の上まで行く。スマートフォンを取り出し、カメラモードにして、紗耶香と同じように持ってみた。
(撮影するような景色じゃない)
優梨奈がそう思っていると着信があった。茉唯からだ。
「優梨奈、今どこ?」
「公園ですが、どうかしましたか?」
「すぐに行くから、そのまま待ってて」
それだけ言うと茉唯は通話を切った。慌てている様子ではないから、近くにいるということだろう。
ほどなくして、茉唯が公園にやつてきた。
「何してたの?」
「紗耶香さんが転落した時の様子を確認してました」
「様子?」
茉唯は意味がわからないようだった。
「紗耶香さんは階段の上に少しの間立っていました。何かを撮影していたのかもと思ったのですが」
「撮影ねえ……」
茉唯は辺りを見回した。何の変哲もない公園だ。花でも咲いていれば撮影するかもしれないが、少なくとも視線の先には花などない。
「そうだ。あたしが紗耶香さんをやるから、どんな感じだったか教えてよ。紗耶香さんはこっちを向いていたってことでいい?」
茉唯は階段の方を向いて立った。
「そうです。右手でスマホを持っていました。顔の正面ではなくて、右斜め前の方です」
「優梨奈はどの辺りに立っていたの? ちょっとそこまで行ってみて」
茉唯に言われて、優梨奈は紗耶香を見かけた位置に移動した。
「この辺りです」
少し距離があるので、優梨奈は大きめの声を出した。すぐにスマートフォンに着信がある。ふたたび茉唯からだ。
「こうすれば、大声出さなくていいよ。そこから見て紗耶香さんがどうだったかを教えて」
「スマホはもう少し顔から離れていました」
優梨奈の言葉に合わせて茉唯が姿勢を変える。
「もう少し画面がこちらを向いていたと思います」
「優梨奈の方?」
「はい……あ、そのくらいです」
「じゃあ、写真撮っといて」
茉唯に言われて、優梨奈は茉唯の写真を撮った。
「この後は?」
「スマホを顔の前……もう少し下です。わたしからは殆ど見えなかったので」
「このくらいかな?」
「はい、そこで何か操作したと思います。そのすぐ後に転落しました。どんな風に動いたかは、急だったので、はっきりとは覚えていません」
「ありがとう。戻ってきて」
茉唯は言うと通話を切った。
「写真見せて」
優梨奈が茉唯の側に戻ると、茉唯は早速写真を確認した。
「あれ? これって」
「何かわかりましたか?」
「ごめん、もう一回さっきのところに行ってくれる?」
茉唯に言われて、優梨奈はもう一度、紗耶香を見かけた位置に戻った。
また茉唯から着信があった。
「なんでテレビ電話なのですか?」
「もう一度さっきと同じようにやるから、あたしの方を見ててくれるかな」
優梨奈はスマホの画面から目を離して茉唯の方を見た。茉唯は正確に先ほどの姿勢を再現していた。
「これでいいかな?」
「はい、先ほどと同じです」
「じゃあ、優梨奈のスマホを見て」
優梨奈のスマートフォンの画面には、距離があるので小さいが、はっきりと優梨奈の姿が映っていた。テレビ電話なので、映っているのは茉唯のスマートフォンのカメラ映像だ。優梨奈は急いで茉唯の元に戻る。
「今のはどういうことですか?」
「可能性でしかないけど、撮影してたんじゃなくて、優梨奈のことを見ていたのかも」
「わたしを?」
「正確には、そこに来る誰かを」
「そこに来る誰か……」
優梨奈は茉唯の言葉を飲み込めていない。
「誰でもいいから人が来るのを待っていた、っていう可能性もあるんじゃないかな」
「何のためですか?」
「それなんだよね……」
茉唯にもはっきりとした理由はわからなかった。




