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6-6

 病院を後にすると、優梨奈は公園へと向かった。確かめたいことがある。

 公園に着き、紗耶香が立っていた階段の上まで行く。スマートフォンを取り出し、カメラモードにして、紗耶香と同じように持ってみた。

(撮影するような景色じゃない)

 優梨奈がそう思っていると着信があった。茉唯からだ。

「優梨奈、今どこ?」

「公園ですが、どうかしましたか?」

「すぐに行くから、そのまま待ってて」

 それだけ言うと茉唯は通話を切った。慌てている様子ではないから、近くにいるということだろう。

 ほどなくして、茉唯が公園にやつてきた。

「何してたの?」

「紗耶香さんが転落した時の様子を確認してました」

「様子?」

 茉唯は意味がわからないようだった。

「紗耶香さんは階段の上に少しの間立っていました。何かを撮影していたのかもと思ったのですが」

「撮影ねえ……」

 茉唯は辺りを見回した。何の変哲もない公園だ。花でも咲いていれば撮影するかもしれないが、少なくとも視線の先には花などない。

「そうだ。あたしが紗耶香さんをやるから、どんな感じだったか教えてよ。紗耶香さんはこっちを向いていたってことでいい?」

 茉唯は階段の方を向いて立った。

「そうです。右手でスマホを持っていました。顔の正面ではなくて、右斜め前の方です」

「優梨奈はどの辺りに立っていたの? ちょっとそこまで行ってみて」

 茉唯に言われて、優梨奈は紗耶香を見かけた位置に移動した。

「この辺りです」

 少し距離があるので、優梨奈は大きめの声を出した。すぐにスマートフォンに着信がある。ふたたび茉唯からだ。

「こうすれば、大声出さなくていいよ。そこから見て紗耶香さんがどうだったかを教えて」

「スマホはもう少し顔から離れていました」

 優梨奈の言葉に合わせて茉唯が姿勢を変える。

「もう少し画面がこちらを向いていたと思います」

「優梨奈の方?」

「はい……あ、そのくらいです」

「じゃあ、写真撮っといて」

 茉唯に言われて、優梨奈は茉唯の写真を撮った。

「この後は?」

「スマホを顔の前……もう少し下です。わたしからは殆ど見えなかったので」

「このくらいかな?」

「はい、そこで何か操作したと思います。そのすぐ後に転落しました。どんな風に動いたかは、急だったので、はっきりとは覚えていません」

「ありがとう。戻ってきて」

 茉唯は言うと通話を切った。

「写真見せて」

 優梨奈が茉唯の側に戻ると、茉唯は早速写真を確認した。

「あれ? これって」

「何かわかりましたか?」

「ごめん、もう一回さっきのところに行ってくれる?」

 茉唯に言われて、優梨奈はもう一度、紗耶香を見かけた位置に戻った。

 また茉唯から着信があった。

「なんでテレビ電話なのですか?」

「もう一度さっきと同じようにやるから、あたしの方を見ててくれるかな」

 優梨奈はスマホの画面から目を離して茉唯の方を見た。茉唯は正確に先ほどの姿勢を再現していた。

「これでいいかな?」

「はい、先ほどと同じです」

「じゃあ、優梨奈のスマホを見て」

 優梨奈のスマートフォンの画面には、距離があるので小さいが、はっきりと優梨奈の姿が映っていた。テレビ電話なので、映っているのは茉唯のスマートフォンのカメラ映像だ。優梨奈は急いで茉唯の元に戻る。

「今のはどういうことですか?」

「可能性でしかないけど、撮影してたんじゃなくて、優梨奈のことを見ていたのかも」

「わたしを?」

「正確には、そこに来る誰かを」

「そこに来る誰か……」

 優梨奈は茉唯の言葉を飲み込めていない。

「誰でもいいから人が来るのを待っていた、っていう可能性もあるんじゃないかな」

「何のためですか?」

「それなんだよね……」

 茉唯にもはっきりとした理由はわからなかった。

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