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「似ていると言えば似ているが……」
ウルマスはモニターに写っている人物を見比べて言った。仮死状態から生き返ったばかりだが、何度か経験したので多少は慣れてきていた。
そこには二枚の画像が表示されていた。一枚はアルマセレルのショッピングモールで発見された、アルマセレルの人間ではないと考えられている女性。一枚は地球から収集した情報の中、ニュース記事の中にあった少女の写真。アルマセレルと地球で成長速度が異なることは、アルマセレルの解析班も認識している。三〇代から四〇代と思われていた女性は、地球人であれば八歳から一〇歳くらいに相当する。
調査団が地球に到達してから四年以上が経過していた。地球攻撃に向けた艦隊の出撃は調査団に知らされていない。調査に影響が出ること、それにより状況が変化することを危惧してのことだ。地球側の行動が早まってしまうことは避けたい。
調査開始から半年程度で放送電波の解析は完了していた。放送の内容から、地球の言語や文化の解析は早くから進んでいた。
対して通信電波についての解析は、数ヶ月前に復号化に成功したばかりだった。しかし、放送により言葉や文化の解析が進んでいたおかげで、通信内容の解析も順調に進んでいた。
そんな中で、一枚の画像をグレネス=ハンネロが発見した。ショッピングモールで発見された女性に類似していたからだ。その画像はニュース記事だったので、記事とともにアルマセレルの解析班に連携された。記事のレイアウトまでは再現できていないが、画像が記事に関するものだということは、記事の内容からも明らかだった。アルマセレルの解析班で検討した結果、調査団で調査をすることが決定された。
記事の内容は次のようなものだった。
四月一二日夜、静岡県下田市の病院に熊が侵入。入院していた女児が襲われたが行方不明。侵入した熊も発見されていない。同室の少女は無事であることが確認されていて、目撃者はこの少女のみ。
「この熊というのは?」
ウルマスが旗艦の艦長に訊く。
「これがそうらしい。セギオラに似ていないか?」
艦長は別のモニターを示す。
「確かに似ていなくもないが、触手もあるから見間違わないのではないか?」
「明るいところならそうだが、暗かったとしたら触手が見えなかったということもある。それに、この星にセギオラのような生物がいなければ、似ている別の生物と思っても不思議はない」
艦長は説明したが、アルマセレルの解析班の受け売りだった。
ウルマスは黙って考え込んでいる。
「これも見てくれ。ここがメジスラナクアの発見場所。そして、ここが病院だ。近いと思わないか?」
艦長は伊豆半島付近の地形が表示されている大きめのモニターを示した。二つの赤い点が表示されている。
「この四月一二日というのは?」
「メジスラナクアが到達したと思われる日付のようだ」
これもアルマセレルで解析が済んでいた。
「なるほど。偶然にしては一致する点が多すぎるか」
「ああ、調べてみる価値はあると思う」
「問題はどのように調査を進めるかだ」
ウルマスは再び考え込んだ。艦長は何も言わずに持ち場に戻る。
それから一時間ほどして、ウルマスが調査方法について指示を出した。
調査にあたるのは、調査員の中でも相互作用性を有効化した補助脳を使用している者たちだ。調査のために地球の人間との接触が必要になることも考えられる。相互作用性を有効化した補助脳なら、地球の言葉での直接の会話が可能だ。まだ言葉の解析が十分ではないところもあるが、それについてはアルマセレル人の見た目が幸いするだろう。アルマセレル人は地球で例えれば西洋人に近い見た目だ。日本語での会話が多少拙くても不自然には思われない。その辺りも、アルマセレルの解析班から連携されていた。
「調べて欲しいのは主に二つ。一つは何が起こったのか。そして、もう一つは目撃していたとされる少女の所在だ」
ウルマスが調査員に言う。
「セギオラやヒルダ・カールランピの行方は?」
「セギオラではなく熊ということになっているが、発見されていないということならここからは追えない可能性が高い。ヒルダ・カールランピについてはそこにいたのか不明だ。一旦は考えなくてもいいだろう」
ウルマスは言ったが、本当はほかにも調査したいことはある。病院に侵入したのがショッピングモールに現れたセギオラであるなら、何者かがセギオラを捕獲したことになる。それなら熊ではないことは明らかだ。セギオラを捕獲した者はそれを隠していることになる。何のために隠しているのか。この星の生物ではないので混乱を避けたかったのか。しかし、セギオラを捕獲したのであれば、その存在は隠すとしても熊を発見したことにするのではないか。襲われた少女をセギオラと一緒にアルマセレルに届けるのも不自然だ。
しかし、それを同時に調査するのは困難ではないかとウルマスは考えていた。
(あのセギオラはこの星と無関係なのか?)
ウルマスは疑問を感じ始めていたが、今はそれを考えないように努めた。指揮官として調査の進行に注力しなければならない。まずは、病院で何があったのか。目撃した少女の所在はどこか。これらの疑問を解決せずにセギオラの行方を知るには、他の場所でセギオラの痕跡を見つけるしかない。それも困難であることが想像される。
それから数日が過ぎた。調査員からの報告は頻繁に入るが、ようやく期待していた報告が入った。
「見つけたのか?」
ウルマスが報告者に問う。
「現在の所在は不明ですが、名前と当時の住所を確認しました」
報告者が答える。その住所には不在だということまでは確認できている。
報告者は続ける。
「名前は椹木マリカ璃桜。現在の所在は不明ですが、わかっている住所から追跡します」




