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「やはり動きはないか」
艦長が副長に言う。メジスラナクア型三番艦が地球の衛星軌道近くに停泊して、およそ十日が経つ。艦長と副長は交代で休みを取っていた。艦長が休みから戻った時に副長と言葉を交わした。他の搭乗員も交代で休みを取っている。
「ああ。ここまで動きがないと返って不安を感じるよ」
「なんにせよ、進入経路が確立できれば動かざるを得ないだろう。相手が動くまで待つわけにもいかない」
「調査員は早く動きたくてうずうずしているがな」
副長は少し表情を崩した。
「それは頼もしい。だが、油断は禁物だ」
「そうだな。我々はもちろん、後ろに控えている船団やアルマセレルにまで危機が及ぶかもしれん」
副長は真顔に戻る。
「調査員だってそのくらいはわきまえているだろう」
「だといいがな。……それじゃ、休んでくるよ」
副長は再び表情を崩した。
それから更に数日経ち、進入経路が確立された。
「アルマセレルでの観測結果などから推測すると、メジスラナクアはこの位置からこの星に進入したと考えられます」
解析班の報告者が示す先には、地球が表示されたモニターがある。その地球上に進入位置を示す円が描かれていた。
「はっきり言いますと、ここから先はまったく推測できません。メジスラナクアは大気中を飛行することが可能なので、ここから先をどのように飛行したかは不明となります」
報告者は一旦言葉を切る。
「しかし、それでは先に進むことができないので、我々は一つの仮説を立てました。それはメジスラナクアが不時着した可能性です。メジスラナクアはこの星に接近した時、大きく進路を変えています。この星の引力に引っ張られたのが原因ではないかと考えています。つまり、メジスラナクアは制御不能な状態に陥った可能性があります」
「今でも最新鋭の船が引力に?」
誰かが意義を唱えた。
「制御不能になっていればあり得るのではないかと考えています」
報告者は続ける。
「そうなると墜落した可能性もあります」
「墜落したらセギオラも無事ではないんじゃないか?」
「これを見てください」
報告者が言うと画面が切り替わり、地球が立体的に表示された。進入位置を示す円とは別に、地球の表面にもう一つの円が表示された。更に二つの円を天面と底面とした円錐台のような形も浮かび上がった。
「墜落したかどうかはともかくとして、進入位置から直進した場合に考えられる地表の到達点がこの範囲になります」
示されたのは伊豆半島の一部を含む、海上を中心とした範囲だった。
「このように海上に落ちたのであれば、メジスラナクアならある程度の損傷で済んだ可能性があります。まずはこの辺りから調査を始めるのが良いのではないかというのが、我々解析班が出した結論です」
少しの間沈黙が流れた。
「どう思う?」
最初に口を開いたのは艦長だった。隣の副長に問う。
「この考えには一理ある。どのみち限られた地域から調査を始めなければならない。その地域の選定理由にはなるのではないかな」
「同感だ。この星には都市がいくつも存在している。情報は集めやすいと思うが発見される危険も大きい。海上なら多少は入り込みやすいだろう」
副長の言葉に艦長も同意した。
「どの都市なら我々の求める情報があるのかもわからんしな」
「そうだな……それで、まずはどう動く?」
艦長が報告者に確認する。
「小型無人探査艇二隻で探索を開始します。一隻はメジスラナクアの捜索、もう一隻は上陸に向けての調査を行います」
報告者が説明する。
上陸に向けての調査には、電波など通信状況の把握も含まれている。通信内容の解析は、アルマセレルに送信して行われる。送受信に時間はかかるが、調査船で解析するよりは結果的に早いことが期待されている。合わせて調査船のリソース節約や、情報の共有にもなっている。未知の星なので調査船で解析しなければならない情報は多い。その解析結果もアルマセレルと共有する必要がある。
「メジスラナクアの捜索で一隻占有されるのはどうなのかな?」
「完全に専念するわけではありません。主に付近の海中をセンサーで調査するので、並行して他の調査を実施することは可能です。また、期間は未定ですが発見できなくても捜索は打ち切る予定です。……それでいいですよね?」
報告者は艦長に問う。
「問題ない。メジスラナクアの消息は最優先ではない」
艦長の言う通り、メジスラナクア自体は発見する必要はなかった。目的は何が起こったのかを把握することだ。
「破壊されていたり解体されている可能性もあるしな」
副長が付け加えた。墜落や攻撃により破壊されていたり、調査などのために解体されている可能性を考えている。
「小型無人探査艇は目標地点が夜になったら発進します」
日中よりは夜間の方が発見されにくいと考えている。レーダーのようなものは無効化する装備があるが、目視されてしまうことは避けられない。黒い船体は暗闇の方が隠しやすい。アルマセレルの宇宙船は黒の塗装が多かった。




