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第五章 気配

 アルマセレルの調査船団は、およそ五年の歳月を経て地球に接近しつつあった。マケマケとエリスの公転軌道の中間あたりで調査船団は停船する。

「しばらく様子を見つつ調査の準備をする」

 調査団総長ウルマス・コスケラが指示する。

 五年に渡る航行の間、調査団員は交代で生命維持装置に入っていた。生命維持装置では仮死状態になっているので、身体的には歳月の経過はなかった。

 ウルマスも例外ではないが、総長として起きている時間は他の者より長い。

 ウルマスは続ける。

「ここから先はメジスラナクア型三番艦が単独で先行する。重要な任務だ。心して取り掛かるように」

 船団自体は地球から距離を置き、メジスラナクア型三番艦のみが地球に接近する。これは最悪の事態を避けるためだ。全艦が接近して全滅してしまうことは避けたい。もっとも、地球の戦力がわからないので、この距離でも安全である確証はない。

「果たしてここがどのくらい安全なのか」

 ウルマスが搭乗している旗艦の艦長がつぶやく。

「ここまで我々は五年かかった。同じ距離を彼らは数日、いや数時間で移動したかもしれない」

「そうだな。セギオラが本当にここまできていたのなら、ここに来るまでが五年。その後数日以内にはアルマセレルに現れたことになる」

 艦長の言葉にウルマスも同意する。

「そんな相手が攻撃してきたら逃げることもできないのではないか……」

「かといって引き返すことはできない、ここまで来たら任務を全うするまでだ。三番艦には酷な任務かもしれないが」

「そうだな。でも我々もあまり変わらないかもしれない」

 今度はウルマスの言葉に艦長が同意した。

 一方、メジスラナクア型三番艦では着々と準備が進められていた。すべてのセンサー類を地球に集中する。少しでも変化があればすぐに捕捉できるように準備した。これらは他の調査船でも同様に行われている。調査船団としてもすぐに対応できなければならない。

 メジスラナクア型三番艦では、小型無人探査艇など調査機材の点検作業も行われていた。

「最初から有人探査艇は使えないのか?」

 小型無人探査艇を点検しながら調査員が言う。

「気持ちはわからなくもないが多少は情報を得てからの方がいい」

「無人機が使えると判断する状況なら有人機でも良さそうだが」

 最初に言った者は引き下がらない。

「いきなり撃ち落とされるかもしれないからな。用心に越したことはない」

「そんなもんかね」

 渋々と言ったが納得はしていない様子だった。調査団は命令を受けた者が多いが、志願した者も少なくはない。特に調査艦の搭乗員は、未知の星に真っ先に降りられるので、それが志願する大きな理由になっていた。もちろん危険は多い。しかし、危険が少ないことがわかれば、それほど恐れることがないのも確かだ。もっとも、危険が少ないと判断できるまでが簡単ではないが。

 機材の点検も終わり、停泊からほぼ丸一日経過した頃、メジスラナクア型三番艦は地球へ向けて再発進した。

「いよいよだな」

 メジスラナクア型三番艦の艦長が、隣の副長に声をかける。二人とも志願した口だ。

「ああ、まずは第三惑星の接近まで何事もなければ良いが」

 副長が応える。恒星である太陽には名前が付けられているが、遠く離れた一惑星でしかない地球に名前は付けられていない。

 メジスラナクア型三番艦は、地球の衛星軌道近くまで接近して再度停泊する予定だ。そこで再度地球の様子を伺いつつ、小型無人探査艇の侵入経路を確定する。そこまでは数日を予定している。

 小型無人探査艇の調査開始から次の段階へは早くても数ヶ月、場合によっては数年の期間を見込んでいる。調査不足で進入すれば、それこそいきなり撃ち落とされかねない。その星の状況を理解して、言葉も理解した上で足を踏み入れる考えだ。問答無用で攻撃されない限り、話し合いの準備はしておきたい。そのためにも言葉の理解は不可欠だった。言葉を理解する中で文化なども理解できると考えている。

「ここまでは見たところ動きはなさそうだな」

 副長が言う。見たところといっても見える範囲のことではない。確かに地球が目視できるほどには近づいたが、センサー類にまったく動きがないことを意味していた。

「動きは確認できないが、捕捉されている可能性は考慮した方が良いだろう」

「そうだな」

 艦長の言葉に副長も同意する。

 メジスラナクア型三番艦は、地球の衛星軌道付近まで接近して停泊した。

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