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ヒルダがロイネを苦手に思うのは母親のことが大きい。
母親は二人が一歳にも満たないうちに自殺している。理由は知らされていない。少なくともヒルダは知らない。しかし、ロイネは知っているのではないかとヒルダは思っていた。
「ロイネ、お母さんのことなんだけど」
ヒルダは何度かこう話しかけた。
「また、その話? わたしも知らないから何も話せないわ」
いつもロイネはこのように答える。二人の育ての親も理由までは知らないとロイネは続ける。ヒルダも直接尋ねたことはあるが知らないとの答えだった。本当に知らないのか、隠しているのかはわからない。隠しているとしたら二人になのか。それともヒルダだけなのか。それもヒルダには見当がつかなかった。
「気にならないの?」
ヒルダは毎回引き下がらない。
「気にはなるけど調べようがないもの。もしわかったらあなたにも知らせるわ」
ロイネの答えも毎回同じようなものだった。
しかし、ヒルダは納得していない。母親の行動が腑に落ちない。
二人の母親は人工授精で二人を出産している。双子になったのは偶然だろうが、意図した出産であることは間違いない。そこまでして出産して、子供の誕生後一年もせずに自死している。
その一年足らずの間に何かあったのか。発作的な自死であれば原因が不明なことも納得できるが、それでも兆候くらいはあったのではないか。
(いや、発作的であるはずがない)
ヒルダがそう思う根拠は、母親が二人を育ての親に託しているからだ。つまり準備をしている。発作的ではなく考えた結果と見て良い。
では、いつ頃に自死を考えたのか。出産前の可能性はどうか。その場合、子供を道連れにしないために出産まで待ったとも考えられる。
(考えられなくもないが、それなら一年の間どんな思いだったのだろう?)
いずれ死ぬつもりで一年間生き続ける。ヒルダには想像できないことだった。そこまでできたのならもっと生きても良かったのではないのか。
(やはり出産前は考えにくい)
それなら出産後に何かが起こったことになる。まさか双子だったからなどということはないだろう。
ヒルダは手紙などが残されていないか探しながら、自分が生まれた頃からの出来事を調べ続けた。手紙は見つからず、母親の自死に繋がりそうな出来事は見つかっていない。
ヒルダの知る限り、ロイネが母親のことを調べている様子はなかった。それがヒルダをさらに苛つかせた。
(ロイネはなぜ気にならないの?)
ヒルダはロイネへの不信感を抱き始めていた。何かを隠している。そう感じずにはいられない。しかし、ロイネの態度に悪意は感じない。
(騙しているというよりただ隠している?)
そうだとしてもそれはヒルダのためだろうか。確かに知らない方が良いこともある。しかし、それでもヒルダは知りたいと思った。知りたいと思いながらも、ヒルダが真相にたどり着くことはなかった。
そんな時にヒルダは能力に気づいた。最初はロイネには話さないつもりでいた。切り札にしたかったからだ。だが、ロイネにも同じ能力があるかもしれないので、それを探るために打ち明けた。
その結果はロイネに軽く流されるだけだった。それが余計にヒルダの不信感を増長させていた。




