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4-7

 ヒルダは姉のロイネを心から信頼しているわけではない。むしろ疑惑を抱いている。

 そのひとつがヒルダが持つ能力だ。セギオラと同じように電場と磁場を操る能力。セギオラの研究から得たものではなく生まれついてのものだ。ヒルダ自身が能力を持っていたため、同じ能力を持つセギオラの研究を始めた。

(否定くらいはしといた方が良かったか……)

 ヒルダはリクハルドの言葉を否定しなかった。セギオラを研究して能力を得たわけではないが、能力を有していることは事実なので否定はしなかった。もっとも、否定したところで信じるかどうかはわからない。ロイネにも能力自体は見せていない。つまり、実際の能力を誰も見ていないのに、リクハルドは能力の話をした。

(リクハルドが表情を変えたな)

 ヒルダが能力を否定しなかった時、リクハルドの表情が変わったことにヒルダは気づいていた。その時はあまり気に留めなかったが、あるいはリクハルド自身が能力を信じていなかったのではないか。

(否定されることを想定していたのかもしれない)

 それなら、やはり否定した方が良かったのだろうか。いや、否定されることを想定していたのであれば、その先の対応を考えていたはずだ。あっさりと話題を変えることは考えにくい。どのような形であれ、最終的にはヒルダが能力を有していることにされるだろう。疑惑でも構わない。たとえヒルダが能力を有していなかったとしても、それを証明することは不可能なのだから。

(わたしがセギオラと同じ能力を持っていると知ったことで彼等の計画は変わるだろうか?)

 ヒルダに新しい疑問が湧いた。リクハルドの話の内容からは、能力の有無で変わることはないように思える。しかし、それは目的にもよるのではないだろうか。純粋にセギオラの調査が目的であれば変更はないだろう。しかし、セギオラの能力を得ることが目的であれぱその限りではない。

(わたしを拘束するだろうか?)

 それはリクハルドとの会話中にも考えた。拘束が目的であればこのような計画は必要ない。逆に考えれば、計画が変更されない限り拘束される可能性は低いと考えて良いのではないか。

(なぜ能力の話が出たのかが問題だな)

 ヒルダの能力が生まれつきであれば、双子の姉のロイネも同じ能力を有していると考えても不思議はない。そのことから。ロイネが出どころではないとヒルダは考えている。

 ヒルダが能力に気づいたのは八歳の時だった。その時はまだ、セギオラの能力のことは知らなかった。

「わたし変わった能力を持っているの」

 能力に気づいた時、ヒルダはロイネにそのことを話した。

「変わった能力?」

 ロイネは表情を変えずに言う。

「電気を操る能力。見せてあげようか?」

 ヒルダは得意げに言ったがロイネはやはり表情を変えない。いや、ほんの一瞬だけ表情を変えたがヒルダは気づかなかった。

「見なくていいわ。それよりヒルダ。その能力を人に見せては駄目よ」

 ロイネは表情を変えずに言う。ヒルダの表情からも笑みが消える。

「もしかして、ロイネにもこの能力があるの?」

「……わたしにはないわ。だけど、普通の力じゃないから誰かに見せては駄目。今だって誰かに見られてしまうかもしれない」

 ロイネは少し考えてから言う。本当にロイネが能力を有していないのか、ヒルダには判断がつかなかった。

「誰かって……家の中だよ」

 二人は家の中にいた。育ての親の家。本当の親の家ではない。

「家の中でも駄目。本当はこんな話もしたくはないけど……」

「……ごめんなさい」

 なぜかヒルダは謝っていた。

 ヒルダにはロイネを苦手に思う瞬間が時々あった。今がまさにそうだ。双子の姉のはずなのに母親のように感じる瞬間がある。

 ロイネは幼い時から落ち着いていて大人びていた。対してヒルダは年相応か少し幼く感じる。双子なのだから同い年だが、なぜか年の差を感じてしまうことがある。そんな時は大抵ロイネに嗜められていることが多い。

(少しは驚いてくれてもいいのに)

 ヒルダは少しがっかりしていた。自分の能力が特別だと思ったからだ。ロイネはまったく興味がないように見えた。それともロイネも同じ能力を有しているのだろうか。それなら少しくらい話をしてもいいと思う。こんな話ができる相手はあまりいないのだから。

(本当にロイネにはこの能力はないのかな?)

 それなら少しくらい興味を持ってもいいのではないか。それとも嘘だと思われたのか。

(嘘だと思ったのなら見せて欲しいって言えばいいのに)

 能力が嘘であれば見せられないのですぐに嘘とわかる。あるいは嘘を暴くのを避けたのか。

(嘘を暴かない優しさってこと?)

 本当のことはわからないが、そう考えてヒルダは密かにロイネに対して腹を立てていた。

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