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4-6

 夏休みが終わりに近づくと、茉唯は宗和の家から自分の家へと帰っていった。

 茉唯が帰った夜、ヒルダはアルマセレルでのことを思い出していた。

 アルマセレルを発つことになったあの出来事。

「キリスアベル第四惑星?」

 ヒルダは問い返した。場所はヒルダの研究室。訪れて来たのは総統府参与リクハルド・モルサだった。

 リクハルドはヒルダに、近く研究施設が国立研究所に吸収されることを伝えた。その上で、セギオラがキリスアベル第四惑星に深く関わりがあると伝えてきた。

「そうだ。これはまだ極秘の情報だが、調査隊が現地でセギオラに似た生物を捕獲した。遺伝子情報を調査したところセギオラの先祖である可能性が浮上した」

 リクハルドが説明する。

「それでわたしが調査の指揮を取れと?」

「君がセギオラについては一番詳しい。君もこのことには興味があるのではないかね?」

 リクハルドの言う通り、その話にヒルダは興味を持った。しかし、それ以外の部分が腑に落ちない。

「確かに興味はありますが、それなら公式に出発すれば良いのでは?」

 ヒルダはリクハルドに問う。

「そう簡単にはいかんのだよ。政府内部のことなので詳しくは言えんが、このことは政府内でも一部の者しか知らない。はっきりと言えば知られたくない者たちがいる。だから公式に調査を依頼しかねる」

「だとしても、わたしが行けば勘付かれるのでは?」

「その可能性はあるが彼らには確証がない。それに……」

 リクハルドは敢えて言葉を切った。

「それに?」

「君はセギオラの能力を自身に再現したのだろう?」

 リクハルドの言葉はヒルダが想像していなかったものだ。

(能力のことを知られている?)

 ヒルダは平静を装った。

「それが関係ありますか?」

 ヒルダが平然と答えると、反対にリクハルドが一瞬動揺の表情を見せた。

「第二ラボの目的は君自身だ。もちろん、君が能力の仕組みを明らかにすれば何も問題ないが、隠すのであればどういう扱いを受けるか」

 リクハルドの言葉を聞いてヒルダは考えた。どうやら取るべき行動は二つしかない。リクハルドの提案に乗るか。それとも身を隠すか。国立研究所に行く選択肢はない。

 身を隠すとすればどうなるか。少なくとも数年は隠れて生活しなければならない。ただ生活するだけであれば何とかなる。しかし、研究者を続けるのは難しいだろう。

 では、リクハルドに従った場合はどうか。罠である可能性も考えられたが、ヒルダの拘束、あるいは殺害が目的であればもっと簡単な方法があるだろう。その危険性は少ないと思った。

(何らかの陰謀に巻き込まれる?)

 その可能性は充分に考えられたが、具体的にどんな陰謀かは考えつかない。ヒルダである必要がなければ、ヒルダより適している者は大勢いるように思える。そうなるとヒルダでなければならない理由があることになる。

(裏はないということだろうか?)

 それであればリクハルドの言葉通りということになる。

「返事は今すぐでなくとも良い。だが、二、三日中には回答が欲しい。まあ、答えはもう決まっているだろうが」

 ヒルダが考えていると、リクハルドが見透かすように言った。リクハルドの言う通り、ヒルダとしては応じるのが一番良いと考えている。計画に穴がないか、疑念が生じた場合に抜け出すことができるか。それを確認する時間が欲しい。

 リクハルドが去ると、ヒルダは一番疑問に思っていたことについて考えた。ヒルダの持つ能力についてだ。セギオラと同じ能力。そのことを知っているのは姉のロイネしかいないはずだった。

(ロイネがわたしを売った?)

 そんなはずはないとヒルダは思った。心から信頼しているというわけではない。しかし、この件についてロイネの裏切りはないと思いたい。

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