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宇宙センターでは、ガレオマレニ第三惑星に向けた調査船団の出発準備が、概ね完了を迎えていた。調査船としてメジスラナクア型一番艦から三番艦の三隻、輸送艦が二隻、護衛艦が三隻、それに旗艦を加えて全九隻。総勢三八六名が搭乗する。
安全保障局のウルマス・コスケラは調査団の総長として旗艦に乗り込む。
「護衛艦は三隻か……」
最終調整として旗艦のブリッジを訪れたウルマスが呟く。
「心許ないな」
同行している旗艦の艦長が応じる。面識はないが二人は同年代だ。
「相手の戦力がわからないのだから仕方がない。戦闘にならないことを願うだけだ」
「そうだな。刺激しないように気をつけんとな」
艦長は言ったが、接近するだけで刺激するのではないかと考えている。さらに調査までして刺激せずに済むだろうか。
「セギオラが無事だったのなら、いきなり激しく攻撃されることもないだろう」
ウルマスが言う。セギオラがガレオマレニ第三惑星に辿り着いたのであれば、メジスラナクアが破壊された可能性は低いと考えている。破壊はされなくとも拘束はされたということだろう。それであれば、仮に攻撃を受けたとしても無事に帰れる可能性はある。
「あのセギオラがメジスラナクアに乗っていた個体ならな。そうでなければどうなるかわからない」
「いずれにせよ慎重に行動しなければならない」
ウルマスと艦長はブリッジを後にした。艦内をまわって各ブロックの状況を確認する。
旗艦の最終調整はすべて完了した。他のすべての船の最終調整も完了し、それぞれ搭乗員が搭乗を開始していく。
ウルマスは一旦旗艦を離れ、宇宙センター内の応接室に向かう。応接室には宇宙センター長官トピアス・セタラ、安全保障局局長アクセリ・ペルホと副総統サムリ・タイメラがいた。
「ウルマス、大変な任務になるが頼んだぞ」
アクセリが声をかける。
「はい、局長。お任せください」
「ガレオマレニに接近すれば通信も不可能になります。それまでに充分に備えてください」
トピアスが言う。正確には双方向通信が困難になる。長距離となるため、送信に片道一ヶ月程度かかる。往復なら二ヶ月になるので通信の確立が難しい。会話など不可能と思った方がいい。
「現場の判断が重要になる。無理はするな。引くときは引きなさい」
サムリが言う。危機が訪れてもアルマセレルからは何も対応できない。増援を出すのも解決策を伝えることも間に合わない。
サムリは続ける。
「どのみち到着するのは五年後だ。それを早めることができない以上、長引かせることだけは避けたい。君たちがガレオマレニで持ち堪えてくれれば次の手も打ちやすい。君たちの行動を無駄にはしないでほしい」
調査団がガレオマレニ付近にとどまれば継続して情報を得ることができる。しかし、調査団が全滅してしまえば情報を得られなくなる。そうなると振り出しに戻ってしまう。サムリとしてはそれを避けたい。調査団を気遣う気持ちもあるがその理由の方が大きい。
ウルマスもサムリの言葉の意味を汲み取った。解決できるのが一番だが、解決できなくとも楔は打ち込まなければならない。時間がかかっても楔だけは打ち込む。そのためには、たとえ遠回りになっても、一旦距離を置くことも考えなければならない。難しい舵取りだ。
「君たちの無事の帰りを祈っている」
応接室を出るウルマスにサムリが声をかけた。それはサムリの本心だ。サムリはもともと冷たい人間ではない。職務上私情を挟まないようにしているが情には厚い。それがどちらかといえば冷徹な総統の緩衝材になっていた。
「大勢の命を預かっていることを肝に銘じます」
ウルマスがサムリに応える。サムリは無言で大きく頷いた。
応接室を出たウルマスは旗艦に戻る。
「全艦発進準備はできている」
旗艦に戻ったウルマスに艦長が伝える。
「わかった。全艦ガレオマレニに向けて発進せよ」
「エンジン始動」
ウルマスの号令で艦長が旗艦の操縦士に指示する。旗艦のエンジンが指導する。ほかの船も次々にエンジンを始動する。
「発進」
エンジンの出力が上がるのを待ち、艦長が操縦士に指示する。
旗艦が浮上する。ほかの船も前後して浮上する。すべての船は一気に速度を上げて大気圏を離脱する。
程なくしてアルマセレルが後方に小さくなっていく。
「全艦陣形を保ったまま前進せよ」
ウルマスが命令を下す。護衛艦二隻が先頭、次に調査船三隻、その後ろに輸送艦二隻、殿に旗艦と護衛艦一隻という陣形だった。




