3-11
「それは確かなのか?」
副総統のサムリ・タイメラは、宇宙センター長官トピアス・セタラから報告を受けていた。
「はい。 メジスラナクアは観測できなくなりました」
トピアスが答える。トピアスの話では、メジスラナクアはガレオマレニ第三惑星に最接近したが、直後にまったく観測できなくなったということだった。
「それは消滅したということか?」
「その可能性もありますが、ガレオマレニ第三惑星に降りた可能性も否定はできません」
ガレオマレニ第三惑星までは距離があるため、惑星に接近した宇宙船を観測することは困難だ。
「ガレオマレニ第三惑星に到達したのであれば、セギオラと関連している可能性が高まったということか」
「はい。しかし、これ以上の観測は不可能です。ガレオマレニ第三惑星に降りたことを確認することはできません」
「問題ない。可能性が残っている以上、それを排除する必要はない」
サムリは事もなげに言う。裏付けを取る困難さは考えていない。
「やはり調査は予定通りに?」
トピアスが訊く。
「総統の判断によるがそうなるだろう。準備は進んでいるか?」
「調査船の整備と人員の確保はほぼ完了しています」
宇宙センターでは調査のための艦艇の整備が進められていた。人員の手配については、操船を担当する者を宇宙センター、調査員は国立研究所が手配を進めていた。
「わかった。軍からも護衛艦を何隻か出すつもりだ」
「護衛艦ですか?」
「戦争をしに行くわけではない。必要最低限の戦力になるだろう」
「そうですか……」
トピアスは一縷の不安を覚えた。未知の惑星に行くのだ。しかも、知的生命体が存在している可能性は高いと考えられる。そして、アルマセレルよりも高い科学力を有している可能性もある。戦力も然りだ。さらに、アルマセレルを敵視している可能性も考えられなくはない。
「君の不安はわかっている。これは総統の意向だ」
「総統の?」
「そうだ。現段階ではアルマセレルとガレオマレニは敵対関係とは言えない。今回の件にガレオマレニが関係しているのであれば、アルマセレルより高い科学力を有している可能性は高い」
サムリは言葉を切る。トピアスとほぼ同じ見解だ。
「高い科学力を有しているということは戦力についても然りだ。どのくらいの戦力を持っているか不明だ。場合によっては我々の全戦力を遥かに超えるかもしれない」
確かに現時点ではそれを否定できない。それはトピアスも理解している。
サムリは続ける。
「そうなると、どんなに戦力を投入しても充分とは言えない。むしろ、大きな戦力を投入することで、相手に危機感を与えてしまう可能性もある」
「我々が戦う意志がないことを示すということですか?」
トピアスはその考えには同意していない。相手に伝わるかどうかは不明だ。
「必ずしも伝わる必要はない。彼らの行動も我々に伝わっていないのだからな」
「彼らの行動?」
トピアスには何のことを言っているのかわからなかった。
「身元不明の遺体のことだ。あれがガレオマレニの人間だとしたら何故あの場所にいたのか? セギオラを連れてきたのならその目的は何か? 純粋に返しに来たのであれば使者だったとも考えられる」
サムリの言葉に、トピアスはひとつの疑問が生まれた。
「セギオラがアルマセレルから来たことをどうやって知ったのでしょうか?」
「それも疑問のひとつだ。彼らは以前から我々のことを知っていた可能性も考えられなくはない」
「知っていた?」
トピアスには信じられない。他の星から干渉された兆候はない。知らないだけだろうか。
「あくまで可能性の話だ。だが否定はできない」
サムリの言葉がトピアスにはしっくりこない。ガレオマレニに存在を知られているのであれば、調査船団の派遣も察知されてしまうだろう。それなら、やはり攻撃を受けてしまうのではないか。攻撃を受けずに接近することなどできるのだろうか。
いずれにしても、ガレオマレニに行くことはかなりの危険を伴うことだろうとトピアスは思った。しかし、行かないという選択肢がないことも確かだ。何が起こったのかを知る必要がある。もちろん、ガレオマレニに行ったとして、何も解決できない可能性はある。
「私としても、本当はもう少し確信を得てから調査団を派遣したい。これは総統も同じだ。調査団は最低でも十年。調査期間を入れればもっと長い時間帰ってこられない。いや、二度と帰ってこられない可能性もある。しかし、確信を得られるまで待てないのだよ」
トピアスが考え込んでいるとサムリが言った。サムリの言う通りだとトピアスも思った。今回の件についてはいまだ何も判明していない。まだひと月ほどではあるが、解決の糸口さえ見えていない。考えられる可能性を一つずつ潰していく他はない。もっとも、他の可能性は全て暗礁に乗り上げている。セギオラがどうやってショッピングモールに出現したのかさえわかっていない。関与した者についても然りでまったく見えてこない。ある意味、ガレオマレニが関与しているというのが一番可能性が高い。それを疑う理由は、やはりセギオラをどうやって連れてきたかだ。結局はそこに尽きてしまう。あるいは、ガレオマレニであればその方法があるのかもしれない。
「そういう観点でも調査団の規模は大きくできませんね」
トピアスが言う。
「そうだ。しかし捨て駒とは考えていない。そこは理解してほしい」




