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ガレオマレニ第三惑星の関与については、メジスラナクアの移動を観測することにより判断することとなった。およそ一ヶ月遅れの状況になるが、メジスラナクアがどのようになったかを確認することが重要だと判断された。
メジスラナクアがガレオマレニ第三惑星に到達すれば、その関与の可能性が高まる。もちろん関与していない可能性もあるが、調査対象とする理由にはなる。
問題はガレオマレニ第三惑星を通過した場合だ。その場合、必ずしも関与していないとは断定できない。
いずれにせよ、ガレオマレニ第三惑星の調査の必要性は高いと考えられ、調査船団の派遣の準備が進められていた。もっとも、数年以内には調査を開始する可能性があったため、それが早まったとも言える。
セギオラが街に現れた経緯の調査は難航していた。ショッピングモールに現れるまでの姿は確認されていない。単体で街に入り込んだのであれば目撃されているはずである。何者かが街に運んできたことは間違いないと考えられていた。しかし、その方法がわからない。運ぶとしたら車両か航空機が必要だ。航空機だと目撃されている可能性が高いがその情報はない。そうなると車両しか考えられない。
ショッピングモール周辺は一番被害が大きかった。生存者は少なく、建物も壊滅的な被害を受けている。防犯カメラ映像に頼るしかないが、サーバーに映像を保持するもの以外は映像が残っていない。そのサーバーも被害を受けているものもある。何日か調査を続けても、セギオラの行動は全く不明なままだった。
最大の疑問は、最初に発見された場所が、フードコートであることだ。数少ない生存者の証言から、それは間違いがなかった。フードコートはショッピングモール一階の一番奥にある。バックヤードがあるので直接の出入りは可能だが、そこでの目撃証言はない。バックヤードはセギオラの直接の被害はなく、指向性エネルギー砲の被弾による建物被害だけだった。バックヤードの生存者は多く、セギオラを隠して運んだとしても、覚えている者がいただろう。
セギオラを運んだ人物の調査も進められたが、誰にも目撃されていないため難航していた。ヒルダがいた研究施設の人間も、退職した者も含めて全員が調査された。退職した者の中には所在不明な者もいるが、所在がわかっている者の中に疑わしい者はいなかった。
「オリヴェル・イソニエミの関係者ということはないでしょうか?」
軍の安全保障局のウルマス・コスケラが、局長のアクセリ・ペルホに問う。
「五年前に亡くなった当時の宇宙センター長官か?」
「そうです。五年前の事件の首謀者です。直接セギオラを連れていたのはヒルダ・カールランピでしたが、それもオリヴェル・イソニエミの指示だったとしたらどうでしょうか?」
「考えられなくはないが、オリヴェル・イソニエミに他の協力者はいなかったと結論づけられている」
ウルマスは当時の対策会議に参加していた。そして、調査から手を引けと命令したのがアクセリだ。そして結論づけたのは政府だった。
「つまり再調査はないと?」
「そうなるだろうな」
アクセリの反応に、ウルマスは少し違和感を覚えた。五年前は有無を言わせない感じだったが、今の反応からはそれが感じられなかった。アクセリ自身も政府の結論には納得していないのではないかとウルマスは思った。
(政府は何かを隠しているのではないか?)
ウルマスはそう考えた。今回の件についてはわからない。しかし、五年前の件では明かされていない事実があるのではないか。そして。アクセリも疑念を抱いているのではないか。
ウルマスが考えているとアクセリが話題を変える。
「ガレオマレニを調査することになれば、君に安全保障局を代表して参加してもらいたい」
「私が……ですか?」
ウルマスは不意を突かれて狼狽えた。片道五年の行程だ。往復で十年。それに調査期間が加わる。それだけの長期に渡ってアルマセレルを離れなければならない。しかも無事に帰れる保証はない。
「君は五年前の件もよく知っている。適任だと思うがどうかね?」
アクセリに有無を言わせない威圧感はない。しかし、断らないことを期待していることは間違いなかった。
「……少し考えさせてください」
ウルマスは答えた。断るつもりはないが即答は避けたかった。
「良かろう。長い道のりになる。いろいろと準備もあるだろう」
アクセリもウルマスが断るとは考えていないようだった。
ウルマスに家族はない。だからどんな任務も受けるというわけではないが、アクセリはウルマスを信頼していた。長期間アルマセレルを離れるのは痛いが、他の任務であれば任せられる職員は多い。しかし、今回の任務を任せられるほど信頼している職員は他にいない。ウルマスもアクセリからの信頼は理解していた。それを裏切るつもりはなかった。
「失礼します」
ウルマスは局長室を後にした。




