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軍の総合参謀本部には、各部署の長が集められていた。状況は統合司令本部長が説明した。
「芳しくないな。何か策はあるのか?」
参謀議長タルヴォ・エテラマキが防空砲兵隊本部長に問う。
「引き続き兵の派遣を続けている。奴を完全に包囲できれば状況は変わる」
「地上で包囲して相撃ちを防げるのか?」
航空防衛隊本部長が口を挟む。兵同士が向かい合って撃った場合、外したら同士撃ちになりかねない。発砲に躊躇もするだろう。
「かといって空からも狙えない」
タルヴォが航空防衛隊本部長を見る。
「遠距離からなら狙うことは可能だ」
「それで当てられるのか? 外せば被害が大きい」
「防空砲兵隊が奴の動きを止めてくれれば」
航空防衛隊本部長が防空砲兵隊本部長を見る。
「奴の動きを止められれば我々だけで対処できる」
「そうだな」
航空防衛隊本部長が何か言おうとするのをタルヴォが遮った。
「つまり、現時点では策なしということか」
防衛参謀総長ネストリ・クレメラが無遠慮に言う。防空砲兵隊本部長と航空防衛隊本部長が睨みつける。
「君には何か考えがあるのかね?」
タルヴォがネストリに問う。
「奴の動きが止まればいいのなら、対セギオラ電磁波発生装置を使えばいい」
「正気か?」
航空防衛隊本部長が声を荒げた。対セギオラ電磁波発生装置は、セギオラの接近を阻止するために、街の周囲に設置されている装置だ。特定の波長の高周波電磁波により脳を破壊する。セギオラの能力である程度は無効化できるが、その間は明らかに動作が鈍る。その間なら駆除することが少しは容易になる。ただし、その電磁波は人間の脳も破壊する。それを浴びれば数秒で死に至る。
「そんなものを使えるわけがない」
防空砲兵隊本部長も吐き捨てるように言う。
「このままなら犠牲は増え続ける。多少の犠牲で収束するなら有効な策だ」
「多少の犠牲か……」
タルヴォは鋭い目つきで一同を見回す。
「その案は総帥からも出ている。あくまで最後の手段だが。しかし、ほかに策がないのならやむを得んだろう」
場が静まり返った。仮にその方法を取るとして誰が命令を下すのか。
「命令が下された時のために準備をしたまえ」
タルヴォが航空防衛隊本部長に指示する。
「それは攻撃まで我々が担うということですか?」
「そうだ。セギオラを封じる機体と、攻撃する機体の準備をしてくれ。編成は任せるが確実に仕留められる編成だ」
タルヴォに言われ、航空防衛隊本部長が本部に連絡を入れる。
「現時点の犠牲者数はどの程度になるかね?」
タルヴォが安全保障局の局長アクセリ・ペルホに問う。
「被害地域の平均的な昼間人口から計算すると、おおよそ二~三万人と推定されます」
「指向性エネルギー砲を奪われたことで、これからも犠牲者は増え続けるだろう」
タルヴォの言葉に、一同の視線が防空砲兵隊本部長に集まる。
「まあ、それは不可抗力だろう。奪われた隊員は命を賭して戦ったのだからな。こうして安全な場所にいる我々が非難できるものじゃない」
ネストリが言うと、全員が慌てて視線を戻す。防空砲兵隊本部長だけが意外そうにネストリを見た。
「だが状況を悪くしたのも事実だ」
防空砲兵隊本部長の視線には気付かずにネストリは付け加えた。
「そうだな。隊員にも敬意を払う必要はある。その上で犠牲を強いることもあるわけだが……」
タルヴォの言葉の意図は不明だが、防空砲兵隊本部長は隊員の更なる犠牲を予感した。




