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「部隊長、配置完了しました」
部隊長の車両に通信が入った。防空砲兵隊の隊員の配置が完了したのだ。防空砲兵隊は、セギオラの後方を中心に展開していた。
「民間人の多少の犠牲は許容されている。これは少しでも犠牲を増やさないためだ。我々の任務はセギオラの動きを止めることにある。狙えると思ったら躊躇なく撃て」
部隊長は通信機で隊員に命令した。指向性エネルギー砲の出力は絞ってある。しかし、状況によって出力を上げる許可が出ている。
背後から迫っていた隊員が発砲した。光跡が空を切り裂く。セギオラの体を捉えたかに見えたが、光跡はセギオラに命中した瞬間に屈折した。数人の民間人が巻き込まれる。
「くっ! もっと近づかないと駄目か」
隊員は一気に距離を詰めた。
二発目を撃ち込む。直撃したかに見えた。一瞬だけ、身を翻すセギオラの動作が早かった。
セギオラの背中を別方向からの光跡が掠める。別の隊員が撃ったのだ。その光跡もセギオラの背中で屈折した。
セギオラが最初に撃った隊員に迫る。
近い。
隊員は恐怖を覚えつつもセギオラと対峙する。
三発目が発射されるより、セギオラの触手が指向性エネルギー砲を払う方が早かった。
隊員はバランスを崩しながら、なおもセギオラを狙おうとした。その頭をセギオラは前肢で叩き潰す。
倒れた隊員の指向性エネルギー砲を、セギオラは触手で器用に拾い上げる。使い方は学習している。以前、駆除されそうになって逃げ延びたことがある。
セギオラは出力を最大まで上げて、隊員がやってきた方角へ発砲した。砲身を振り回しながら撃ったため光跡が大きく歪む。光跡は路面を大きくえぐり、建造物を斜めに切り裂いた。
その威力はショッピングモールの先にまで及んだ。
「何があった?」
部隊長は通信機で状況を確認する。隊員が発砲したにしては出力が大きすぎる。
「エネルギー砲を奪われました」
背中を撃った隊員が答える。
「奴が――」
部隊長は言葉を詰まらせた。知能が高いとは聞いていたが、武器を扱えるとは思ってもいない。威力からすると最大出力に変更までしている。
部隊長は首を竦めた。分が悪い。セギオラは周囲の被害を厭わない。いや、むしろ被害を広げているのだ。対して、防空砲兵隊は被害を抑えなければならない。
部隊長の思いをよそに、セギオラは次の獲物に狙いを定める。背中を撃った隊員だ。指向性エネルギー砲は使わない。素手で仕留める。
セギオラは体の向きを変えると、その隊員に向かって走り出す。
隊員は指向性エネルギー砲を構えた。セギオラはまっすぐ向かってくる。セギオラの体幹はぶれていない。
隊員は指向性エネルギー砲の出力を上げる。充分に引き付けて撃てば外すことはない。
セギオラが迫る。あと十メートル。隊員はトリガーを引いた。
何も起こらない。
セギオラが指向性エネルギー砲を無効化したのだ。電力が停止されれば発砲することはできない。
隊員は咄嗟に横に飛ぶ。その方向のセギオラの触手は、指向性エネルギー砲を持っているため塞がっている。
反対側の触手が隊員を襲う。隊員は地面に叩きつけられた。
隊員は通信機に向かって叫ぶ。
「奴はエネルギー砲を無効化する。気を付け――」
セギオラの前肢が隊員の頭を叩き潰した。動かない隊員から、指向性エネルギー砲を奪い取る。
部隊長の車両の無線機からは、一部の隊員が動揺している声が聞こえてきた。部隊長を含め、何人かの隊員は事前に危惧していた。セギオラの能力を知っていたからだ。しかし、犠牲になった隊員のように、その知識を持たない隊員も何人かいた。
「できる限り気づかれないように、背後から近づいて攻撃しろ」
部隊長が隊員に指示する。隊員はもちろん、部隊長もセギオラが能力で人間の位置を把握できることを知らない。もっとも、民間人が多いので、セギオラといえど隊員のみ把握するのは困難だ。
しかし、背後からというのは、被害を拡大させないための配慮でもあった。被害を受けた地域であれば、さらなる被害を受けても犠牲は少ない。もっとも、セギオラに指向性エネルギー砲を奪われた今では、被害の拡大を防ぐのは難しい。




