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3-3

「これ以上近づくのは危険だ」

 警備隊の者が言う。およそ五十メートル先にセギオラがいる。

「だが、ここから狙うのは厳しいぞ」

 セギオラの周囲には逃げ惑う人々がいる。

「俺が行こう」

「俺も行く」

 腕に覚えのある者が何人か走り出した。

「無理はするな!」

 残った者がその背中に声を掛ける。

「お前たちは民間人の誘導にあたれ」

 小隊長が何人かに指示する。

 さらに続ける。

「狙撃手は狙撃ポイントを探せ。狙えると思ったら自己判断で発砲して構わん」

 狙撃手の腕は信頼している。

「残りの者は奴の進路を予測して先回りして構えよ」

 小隊長が言う奴というのは、もちろんセギオラのことだ。

「我々はどうしますか?」

 副隊長が訊く。副隊長と通信士は行動を共にしている。

「奴の後ろに回り込む」

 小隊長はそう言うと、迂回してセギオラが通ってきた通りに向かう。

「ひどいですね」

 通信士は顔を顰めた。セギオラが通ってきた通りには、多数の犠牲者が横たわっている。中には息がある者もいるらしく、そこかしこから呻き声も聞こえてきた。

「セギオラです」

 およそ百メートル先に、副隊長がセギオラの姿を認めた。

「後ろからの方が狙えるかもしれないな」

 小隊長が言った。セギオラはほとんど後ろを見ていない。警備隊として被害を広げないように前に要員を配置したが、セギオラを駆除するには、背後からの方が良いように感じた。

「奴が通過したら、再び前に回り込まずに後ろから狙うように」

 小隊長が隊員に指示を出す。

「もう少し近づきますか?」

「そうだな。慎重に近づこう」

 セギオラも注意しなければならないが、足元の犠牲者にも気を使わなければならない。

 銃声が轟いた。狙撃手ではなく最初にセギオラに向かった隊員のようだ。

 数発の銃声が続く。その中には狙撃手のものも含まれていた。

「どうした?」

 小隊長が通信機で問う。

「隊員がやられました。ここからは一人しか見えません。自分も撃ったのですが外しました。奴の姿は見えません」

 狙撃手の一人が答えた。最低でも一人の隊員が犠牲になったと言うことか。

「無事なら返事をしろ!」

 今度は副隊長が通信機に言う。最初にセギオラに向かった隊員たちに向けてのものだ。

 少し待ったが返事はなかった。

「駄目か……」

 副隊長が呟く。

「セギオラです。無傷に見えます」

 別の狙撃手から通信が入る。直後に銃声が轟く。報告した狙撃手が撃ったのだ。

「外しました」

 やはり、単発の銃で動きが速いセギオラを撃つのは難しい。

「本部から連絡です。防空砲兵隊がこちらに向かっているそうです。我々は民間人の誘導に専念せよとのことです」

 通信士が小隊長に言う。本部とは警備隊の本部だ。

「防空砲兵隊か。我々より奴の対応には向いているな」

 小隊長は言ったが、ほかに適している組織は思いつかない。

「全員、セギオラの駆除ではなく民間人の誘導に専念せよ。狙撃手は我々に合流するように」

 小隊長が通信機で指示する。狙撃手は民間人の対応には慣れていない。また、防空砲兵隊の支援に回る可能性もある。

「防空砲兵隊です」

 近づいてくる車両に通信士が気づいた。

「状況は?」

 防空砲兵隊の部隊長が警備隊の小隊長に訊く。

「芳しくない。こちらは銃だけなので厳しい」

「了解した。以降はこちらで引き取る。民間人の誘導に尽力してほしい」

「了解。こちらの狙撃手は必要か?」

 問われた防空砲兵隊の部隊長は回答に一呼吸置いた。

「そちらで一緒に対応に当たってほしい」

 合同訓練は実施していない。部隊長の回答は最初から決まっていた。相手の申し出に敬意を表して間を空けただけだった。

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