3-2
「カレルヴォ! 返事をしろ!」
カレルヴォからの連絡を受けた同僚は声を荒げた。その声で周囲の注目が集まった。
軍の統合司令本部。中央司令室はカレルヴォが所属する部署だ。
「どうした?」
隣の席の者が聞いたが、それには答えずに後方にいる副長に報告する。
「副長! カレルヴォから連絡があり、セギオラが出現したようです。連絡が途絶えて場所はわかりません。発信位置特定の依頼をお願いします」
中央司令室がざわめいた。
「わかった。君たちは情報収集にあたってくれ」
副長は指示を出すと情報局に連絡した。
「副長。セギオラが出現したのはショッピングモールのようです。今は屋外に出ているようです」
連絡を受けた者とは別の者が報告する。通報があったようだ。セギオラの対応は軍でなければできない。通報を受けた担当者から連絡が入ったのだ。
「本当にセギオラなのか?」
報告者に別の者が問う。ショッピングモールまでセギオラが入り込んだことが信じられない。他の者もそうだった。
「民間人ならともかく、カレルヴォが見たのなら間違いない」
カレルヴォからの連絡を受けた者が言う。疑問を呈した者も黙ってしまった。カレルヴォの信頼は厚い。
「カレルヴォからの連絡はショッピングモールからのようだ。これで、ショッピングモールにセギオラが現れたのは間違いないだろう」
情報局からの回答を得た副長が言った。副長は続ける。
「どうやって入ったかは、今は考えなくていい。どう対応するかを考えてくれ」
さらに続ける。
「時間はない。急いでくれ」
中央司令室は静まり返った。
市街地でのセギオラの駆除は過去にない。街の近くなら数例あるが、周囲に何もない場所だ。当然人もいない。つまり、遠慮なく攻撃できる場所だったということだ。
だが市街地は違う。周囲の人たちの安全を確保しなければならない。火力の高い兵器は使えない。さらに建造物などの障害物も多い。ピンポイントでセギオラだけを攻撃するのは難しい。
アルマセレルは古くから単一国家だ。過去にはいくつかの国があったが、もう千年近く単一国家が続いている。紛争もほとんどない。軍を整備しているのは、アルマセレル内での戦争に備えているのではなく、星間戦争に備えている側面が大きい。軍は存在していても、ほとんど実戦経験はなく、地上戦もあまり想定されていない。
しかし、今回はまさに地上戦である。それも目標は一個体に過ぎない。しかも相手は市街地に紛れ込んでいる。困難な戦いであることは誰にでも想像できた。
「戦闘機は無理だよな?」
「民間人を避けての攻撃は無理だろう。それ以前に近づくことができない」
航空機で近づけばセギオラの能力で落とされる。
「車両も無理だから歩兵になるだろう。もちろん近くまでの車両輸送なら可能だ」
「適しているのは防空砲兵隊になるが……」
防空砲兵隊は地上から航空機などを砲撃する部隊だ。肩に担ぐ小型の指向性エネルギー砲を所有しているので、歩兵でありながら相応の火力を見込める。車両に搭載する大型のものもあるが、市街地でのセギオラ駆除には不向きだろう。
ただし、この指向性エネルギー砲は、電荷を帯びた粒子を放射している。電場と磁場を操る能力で、セギオラは威力を減衰させてしまう。宇宙船をも破壊できる最大出力であれば別だが、民間人のいる市街地で使うのだから出力は上げられない。単発では無効化されてしまう可能性が高い。
「懸念はあるが一番適しているだろう」
副長はそう言って、防空砲兵隊出動の許可を統合司令本部長に取った。
「警備隊は出ているのか?」
「もう向かっているとのことだ」
警備隊も軍の組織ではあるが警察組織に近いものだ。騒動が発生すれば出動する。
「警備隊か……心許ないな。でも、仕方がない」
警備隊は対人組織だ。実弾を単発ずつ発射する銃しか携行していない。それでセギオラを駆除するのは不可能に近い。
「まあ、民間人の誘導には役に立つ」
「駆除は防空砲兵隊か」




