表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/28

軒猿

オリキャラ登場します。

「兄上、伊賀者を雇おうかと思うのですが」


 春日山に来た時の恒例となっている昼餉の席での事。

 今日は景康兄上と景房兄上は直轄地の見回りに行って留守であった。


「うん? 素波が必要なのか、景虎よ」


「はい。市井には中々上にまで届かぬ声があると思います。それら不満や不安が破裂する前に取り除く政をしようと存じます」


 適当な嘘八百を並べる。

 軒猿を紹介してもらうための仕込みではあるけど、実際には伊賀や甲賀の忍者を雇ってもいいのだ。

 ただ、余所者よりは身内の方が安心できるというもの。


「そうか、お前はまだ知らなかったか・・・当家にはお抱えの素波集団がおるのだ」


 よし、釣れた!

 喜色ではなく驚きを顔に浮かべて兄上をマジマジと見つめる。


「うむ。名を軒猿と言うのだが、夜盗組、伏嗅ぎ、聞者役の3つの集団に分かれてそれぞれ得意とする分野が異なっておる」


 おお、それは知らなかったぞ。

 聞けば夜盗組は敵地領内を荒らす様な仕事が得意で城内への潜入や戦場での物資の焼き払いなどをするとか。乱波かな?

 伏嗅ぎは、修験者の姿で各地を回りご当地の情報を集めて回るらしい。また、戦場での道案内や索敵もこなすという。これが素波か?

 最後に聞者役。指定された場所に潜伏し、そこの内証を探る者。いわゆる、草だね。

 頭領は世襲制ではなく、各部門の中で最も秀でた者が己の技以外で一番能力が高い事を示したものがなるらしい。

 それ故に皆がお勤めに励むのだとか。

 思ったより、近代思想に近くて驚いた。


「お前が必要と言うのであれば、何人か用意してやろう。如何する?」


「そうですね・・・その前に軒猿の身分について聞きとうございます」


「ん? 素波は素波・・・ああ、そう言えばお前の領には変わった法があったな」


「それもそうですが、私は以前より素波の立場に納得がいっておらぬのです」


 憮然とした顔でそう兄上に言葉をぶつけると、どういうことだ? と当然の様な返しがある。


「そもそも武士も農民も公家も同じ人であるという考えは前にもしましたよね? なれば、素波も同じ人です。そして、その役目ですが・・・世俗からどう見られようと、我ら武士の為になる事をしているわけですし、むしろ、我らに出来ないことを押し付けているのですから、身分を農民以下に見定めるのがおかしいと思うのです」


「う、うむぅ・・・」


 少し怒った口調で物申すと兄上が唸り声を漏らす。


「昼間の太陽が武士であるのなら、夜の月が素波であると、この景虎は考えます」


「つまり、素波に武士の立場を与えよ、と言うことか?」


「そうです。武士として扱い、知行を与えるなり、俸禄で召し抱えるなりして欲しいのです」


「しかしなぁ・・・家中がどう言うか・・・」


 頭を抱える兄上に私はさらに強気な発言をする。


「家中の顔色を窺うだけでは立派な主君足りえませんよ! ここぞという時に強気で打って出てこそ家臣は忠誠を誓うものです!」


 史実では兄上は病弱故か軟弱な思考をしていた。

 それを変えていかないと、史実通りに私を擁立する動きが出てきてしまうだろう。

 この時代の家族である兄上に対してそんな事はしたくない。

 兄上は本拠にどっしり構えて内政を担当し、戦なんかは私や家臣に任せてほしいのである。

 戦に出ることに躊躇いはまだあるものの、これが嘘偽りのない私の気持ちだ。


「家臣相手に弱腰では真の忠は得られぬか・・・確かにそうだな」


 難し気に眉間に皺を寄せていた兄上が不意に晴れやかな表情になった。


「景虎、よくぞ言うてくれた。儂に無かった覚悟、しかと通じた。儂は今まで、体が弱い事や戦が苦手な事を言い訳にしておった。だが、真の君主に必要な物は何物にも負けぬ強き意志なのだな」


「兄上・・・そうです! 兄上がその志で私達の道をお示しくだされば、私達家臣は何処までも付き従いますとも!」


 感動した。

 思わず目尻に光るものが込み上げる。

 今までは、ただ優しい兄上の中に一本芯が通った力強さを感じられる。

 これならこれから激しくなっていく、乱世に戦国大名として前に進んでいけるだろうと感じ取れた。


「それでは、先ずは素波の待遇改善から推し進め得ようではないか」


「それなのですが、私に少し考えがあります」


 頼もしい言葉を吐く兄上に私は以前から考えていた内容を伝えるのであった。


______________________________________________


「羽佐間小平次郎、お召しとあり参上仕りました」


 春日山城の実城の中庭に中肉中背の男が片膝をついて兄上に頭を垂れた。

 初めて会った重要人物は漏れなくステータスチェックを行うのが私の矜持に成りつつある。

 武勇93 統率90 知略93 内政28 外交33

 つ、強い!?

 やっぱり人間、身分で差別するもんじゃない。


「良く参った。此度は特別大事な話があって呼び出したのだ」


「はっ。如何様な任務でありましょうか?」


 兄上の言葉に凛々しい表情を浮かべる小平次郎殿。

 歴戦の凄みが伝わってくる面構えである。


「うむ、任務もあるにはあるが、此度の呼び出しの主旨は別だ」


「と、仰せられますると?」


 僅かに訝し気な雰囲気を放った小平次郎殿だけど、すぐに元の佇まいに戻ると兄上にその真意を問うた。


「お前たち、軒猿衆を此度、武士の身分へと取り立て、軒猿の里を知行として与えることにした」


「な、何と仰せられた!? それは御正気でござりますか!」


 流石に吃驚したのであろう。何気に失礼なことを口走っているぞ。


「もちろん正気である。その方なら存じておろうが、此処に居る我が妹、景虎が能生にて新しき国づくりをしている」


「はっ。実に巧みな政をしておりますようでございまする」


「うむ。その国の成果は良きものを長尾家で取り入れて国の改革をする予定であるのだが、その中に、人は皆家族であるという法令がある。身分の違いをなくし、一致団結し国を良くするというものだ」


「人類皆兄弟令でございまするな」


「そうだ。故にこの長尾家に置いても微分卑しきものが居てはならぬ」


「ですが、それでしたら我らを民と同じ身分にすれば良いではありませぬか? 何故に武士程の身分が頂けるのでしょうか?」


「それも、この景虎の意見になるが、武士である儂らが出来ぬ役目をこなすその方らが、武士が太陽であるならその方らは月だと申してな、それで儂も目が覚めたのよ」


 兄上が経緯を詳しく説明をすると小平次郎殿が驚き、私の方を見る。

 それに対して私は真面目な顔で強く頷いて応じた。


「我らをその様に評価して下されるお方が居られるとは夢にも思いませんでした。我ら、軒猿衆、子々孫々に至るまで長尾家に御奉公いたしまする」


 それまで片膝立てで応答していた小平次郎殿が汚れるのも構わずに額まで地面につけて平伏する。

 そこで私が初めて声を上げる。


「面を上げて下さい。それでは、話が出来ませんよ」


「ははっ」


 顔を上げた小平次郎殿の目を見ながら挨拶をする。


「私が長尾景虎です以後、よろしくおねがいいたしますね。さて、私から提案があります。恐らく、貴方がたは軒猿衆という名がありながらも自らを素波と呼称しておるのでしょう?」


「はっ。仰せの通りにございます。世間一般がそう呼びますれば・・・」


「それを我ら長尾家中では改めたいと思います。これからは忍者と名乗るのがよろしいでしょう」


「忍者? でござりまするか? それはどう言った意味でございましょうか?」


「世の闇に敢えて潜りこみ耐え忍んで事を成す者と言う意味です」


「おお・・・忍者・・・お言葉確かに承りました。我ら今後、その名に相応しい活躍をお約束いたしまする」


 お?

 小平次郎殿の頭の上に忠誠の青〇が現れましたよ。

 う~ん・・・家臣にしか付かないものと思ってたけど、忠誠を誓ってくれる人にはつくのかな?

 それとも相手が私の家臣であると認めるとつくのだろうか?

 まあ、とにかく今は言葉をかけてあげないと。


「貴方達の忠勤、期待していますよ」


「ははっ!」


「では、小平次郎よ、早速ではあるが、景虎に何人か配下を貸してやって欲しい。任務の内容は妹から詳しく聞くように。頼むぞ」


 兄上がそう締めくくって、軒猿の頭領との初顔合わせは恙なく終了したのであった。


______________________________________________


 その翌日、早くも小平次郎殿が10人の配下を連れて現れた。

 老若男女取り揃えているけど中でも目を引いたのが、見た目10歳前後の幼女である。

 慎重にして私よりも頭一つ小さい彼女が忍者なのであろうか?

 ただ見た目に騙されてはいけないと私の勘が告げている。隙だらけでそこいらの子供にしか見えないし、強者たる雰囲気もないけれど・・・

 ステータスを確認する。

 武勇97 統率95 知略95 内政19 外交10 特性:忍者の素質S 東洋医術S

 ふぁっ! つよ! っていうか特性って初めて見るよ!

 もしかして彼女もゲームプレイヤー?


「景虎様も十六夜には驚かされますか?」


 私の視線が彼女で止まっているのを察して小平次郎殿が尋ねてきた。

 いや、そりゃあ驚かない方が無理でしょうよ。


「え、ええ・・・まさか10歳程の子が腕利きの忍者だとは、流石に予想を超えておりました」


「ほう、流石ですな。彼女が腕利きであると見破るとは、しかし一つ間違いがござります」


「間違い?」


「はい。十六夜は26歳程でございます」


「え? 26歳・・・? 嘘でしょう・・・」


 26・・・数え年だから25歳だけど、見た目に2倍以上の差があるなんてどんな絡繰り?


「実は十六夜はとある医師が拾った捨て子でして、それは赤子の頃から鍼灸の研究に試されまくりまして、それが常態化し物心ついた時には医師の教えを受けながら自分で自分の身体に針を打ちまくる始末だったとかで・・・」


 なんじゃそりゃ・・・

 というか、その医師はどんなド外道だよ。


「その影響ですかな? 成長があのように止まってしまいました」


 何て不憫な子だろう・・・いや実年齢はとうに大人だけどさ。

 でもそうか、あの特性:東洋医術Sはそれが原因か。

 う~ん・・・戦国版改造人間とでもいうべき存在だなぁ・・・

 その医師悪の秘密結社の一員ではないだろうか?


「これでも頭5つ分くらいは他者を抜いておりましてな時期、頭領候補なのです」


「そ、それで彼女を連れてきたと言うことは、私の任務を受けるということですか?」


 少し声が裏返った。


「十六夜は衆を率いるのも得意でしてな。その上、状況の判断力も鋭く・・・」


 そうですね。統率、知略ともに95だものね。

 

「更には荒事にも滅法強く」


 弥太郎さんよりも強いもの、当然だ。


「どんな仕事に就けても間違いなく成果を出してくれると確信しております」


「よろしくお願いいたします」


 私は自然と頭を下げていた。

軒猿の設定はオリジナルです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ