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チートも必ずしも楽とは限らない

 春日山城に戻った私は、晴景兄上をはじめに多くの一門衆の方に心配されてしまった。

 特に綾姉上にはこっ酷く心配されたうえで、説教をいただいてしまった。

 曰く、女としての自覚がないと。

 いや、元々女だし、現代教育を受けてきたから自覚はあったんです。

 ただ、ここに来てから波乱万丈で動転していたため、度忘れしていたとしか・・・

 取り合えず、心配をかけた相手に一人ずつ謝罪をして回り、定番になりつつある昼餉を取った後に、医師が患者を連れてきたという報告を受けた。


「労咳ですね・・・」


 結果から言うと病を治すことは叶わなかった。

 3Dモデリングで病の個所を見つけ病名を確認することはできたのだけれど、肝心の治療は労咳はおろか風邪すら治せなかったのである。

 ただ、治そうと意識を向けた際に『適応した薬を所持していません』と表示されたので薬があれば治せそうである。

 その旨を医師に伝えた所、彼の手持ちの薬を渡されたが脳内表示は変わることなく『適応した薬を所持していません』だった。

 その事態に至って、私のなかで閃いたものがあった。


「すみません。私自身で薬を作ってみたいのですが、道具をお借り出来ますか?」


「材料となる薬草もお揃えしますが?」


「いえ、最初から最後まで自身の手で行ってみたいので、薬草がとれる場所を教えて下さい」


 医師の好意をやんわりと断り、薬草の産地を聞くと、何でも富山が有名ではあるけど少しくらいなら春日山城の山の中にも生えているらしい。

 というわけで、早速、籠を背負って出発した。


______________________________________________


「さてと薬草採取だけど。当然、私はどれが薬草なのかわかりません」


 でも、薬草採取をするぞ! と頭で念じてみると脳内にマップが出現。

 マーカーを追って移動する事しばし、一面、草茫々の場所にたどり着いた。


「おー・・・草が光ってる」


 比喩じゃなく、私の目には草や木がピカピカと点滅しているのだ。

 もしかしなくても、これが薬草だろう。

 手当たり次第に採取していく。中には草でなく地面が光ってる所もあって掘り返すと草の根が光っていたりするのでこれは根が薬草と言うことか。

 そんな調子で薬草を集めていくとあっという間に籠いっぱいになったので帰ることにした。

 その成果に医師は吃驚していた。


「この短時間でよくぞこれほど・・・」


 雑草も混じってるのでは? と思ったのか籠の中を改めていた医師の顔色が面白いように変わるのを私は楽しんだ。


「薬師如来様が教えて下さいましたので」


 ・・・薬草の名前は知らないし、効能なんかはしらないけどそれは黙っておく。


「では、今日はもう時も遅いので生薬を作る作業は明日にいたしましょうか」


「ああ、機材は置いておいて下さい。夜でもできる作業はやっておきたいので」


 帰ろうとする医師を呼び止めて道具は置いて行ってもらう。

 夕餉の後にでも早速、作業を開始しよう。


「景虎? 今日は一日医者の真似事をしてたんだってな?」


 兄弟揃っての夕餉の席で景房兄上が興味深そうにしている。

 晴景兄上も景康兄上もそれを受けて目だけをこちらに向けた。

 やっぱり興味があるのだろう。


「薬師如来様のお力を借りてどこまで出来るのか探ろうと思いまして」


 咀嚼していた物をしっかりと垂下してから答える。


「ほう、それでどうであったのだ?」


「それが病名や患部は分かるのですが、治療が出来ず・・・」


「いやぁ、それが分かるだけでも大したご利益だろう?」


 晴景兄上の質問に残念そうに答えた私を慮ってか、景康兄上がフォローしてくれる。


「ですが、やはり治療できないのでは意味もなく、今は自身の手で薬を作ろうと思っています」


「ふむ。如来様のご加護を持つお前が手ずから薬を作ることで効能を得ようというわけか?」


「おっしゃる通りです」


 最後に味噌汁を啜り、私はお箸をおいた。

 そして膳をもって立ちあ上がる。


「では、時を惜しむのでお先に失礼いたします」


「膳の片づけぐらい、いつも通りに侍女にまかせればいいじゃないか」


 景房兄上が指摘するがそれを私は笑顔で制する。


「いえ、薬草を煎じたりするのに火を使うので台所で作業を行うのですよ。ついでですから」


 というわけで、台所の隅を借りて生薬の製造に取り掛かる。

 さて、どうするのだろう?

 取り合えず並べた薬草を手に取ってみたら、陶器のすり鉢みたいなものとすりこぎ棒みたいなものが光った。

 ふむ・・・これはあれで磨り潰すってことかな。

 行動に起こしてみると、ピンポーンと音がして〇が付いた。

 あってたらしい。

 そんな風に薬草一つ毎に手探りで次々と処理していく。

 時には間違って×を貰ったりしけど、厄介だったのは磨り潰したやつを煮込んだりとかしないといけない事もあって難航した場合もあったけど概ね順調に作業は終了できた。

 完成した生薬は31種類。

 さ~これから薬を作るぞ~と意気込んで袖まくりに襷掛けをしてるとピロリンと脳内に電子音がしてリストが表示された。

 風邪薬、鎮痛薬、解熱剤、目薬、傷薬、虫下し、毒消し、麻酔薬、向精神薬、胃腸薬、栄養剤、万金丹、反魂丹の13種類だ。

 一つずつ効果を見ていくと、これは中々・・・現代医学に喧嘩売ってる効能が沢山目につく。

 特に、万金丹と反魂丹。

 万金丹:万病薬。どの様な症状の病にも一定の効果がある。体力を回復させ不治の病の進行を遅らせる。

 反魂丹:万病薬。どの様な症状にも高度な効能がある。生命力を回復し定期的な服用で不治の病も完治する。

 どんだけ医療チートなのかな~

 そして、最後に「!}をクリックすると薬は神通力を付与することで劇的に効能が上がります。

 とか・・・

 まあ・・・取り合えず、簡単そうな風邪薬でも作ってみますか・・・

 と思案すると、脳内画面が切り替わり、生薬の種類と釜の様なグラフィックが幾つか表示された。

 そして、画面右上にタイマーらしき時間表示が・・・

 これって・・・


「豊臣立志伝の医師修行のミニゲームじゃないですか・・・やだなぁ」


 軽妙な音楽に合わせてタイマーが動き出し、目の前の生薬が赤、青、黄色と光り出す。

 これを時間内に指定の釜に適量を入れなければならないわけだ。

 

「ひぇ~」


 慌てて最初の生薬を1の釜に放り込み、次が黄色の生薬を柄杓の半分を・・・


「あ~! 柄杓のサイズ間違えた!」


 ブーという音と×の表示。

 ゲームだと時間内にやり直しがきくんだけど・・・これは現実。1の釜には暗黒物質のヘドロとかした生薬が残ってる・・・

 ダメだ。これは捨てて、洗わねば・・・

 そんな事をしてる間にタイムアップしてしまった。


「おぅふ・・・」


 これまでの能力行使は簡単だったけど、これは厳しい。

 流石は現代医学に戦いを挑む、文字通りの神薬の調合だ。

 しかも一回チャレンジしただけで精神力が5減ってるし・・・

 試しに一番難しそうな反魂丹をプレイしてみたけど・・・難易度はベリーハード過ぎて泣いた。

 柄杓のサイズが大中小の三種類でうまく分量を調節しなきゃいけないんだけど、大の柄杓で入れた生薬を小の柄杓で2杯取り除き、中の柄杓で生薬Bを1杯入れたりとかするのが5つの釜でやらなきゃいけないとか・・

 消費精神力は5で統一だったけど、今の私にこれは無理だ。

 もっと練習しないと。

 せめて、風邪薬ぐらい完璧に作れないと・・・

 必死に食らいつき、夜が白むころ、あれだけあった生薬もなくなって、私の手元には風邪薬が6つと胃腸薬が1つ、鎮痛剤が2つ出来ていた。

 精神力は残り200を切っている。


「疲れた・・・かつて医神と呼ばれた私がこの体たらくとは・・・恐るべし・・・」


 豊臣立志伝では一度成功した薬はその後、時間と体力を削って簡単に作れるようになるシステムだったけど、これは、1回1回チャレンジしないといけないようである。

 何故だ・・・!?

 その後、朝餉の支度に訪れた料理人達が台所の惨状とげっそりとした私を見て悲鳴を上げるのであった。


______________________________________________



 生薬の匂いが染みついた私は、兄上達との朝餉を諦めて、風呂に入っていた。


「湯舟が恋しいね・・・」


 蒸し風呂で汗を流し、濡れた手拭いで体を拭いていく。

 衣類は全部洗濯に出して、真新しい物を用意した。


「早く石鹸を作らないとなぁ・・・」


 髪の臭いや体臭を気にしながら、服に袖を通していく。

 今日の予定は、少し遅めの朝餉の後は、医師さんにあって報告と・・・できれば薬の検証をしたいところ。

 なので、使いをやって風邪の患者さん6人を連れてきてもらうことにしている。

 さて、どれほどの効果があるのかな?

 風邪の特効薬何て現代にも存在しないオーパーツだけど。

 黙々と朝ご飯を平らげて、医師さんが来るまでの間だけでも仮眠するかなぁ・・・

 と考えていたら、息せき切って件の人物がやってきてしまった。


「景虎様! 薬が出来たとは真にございますか!?」


「テンション高いね」


「てんしょん?」


「ああ、気にしないでください、神仏の世界で意気軒高とかそういう意味です」


 口を開くたびに出そうになる欠伸を必死に嚙み殺して適当な事を言う。


「はあ・・・それで、薬は?」


「出来たには出来たのですが・・・何分、私の腕が未熟でして、あれだけの薬草から9つしか作れませんでしたよ」


「さようでしたか。神仏の試練というのは大変なものなのですなぁ・・・」


「ええ、おっしゃる通りです。正直、侮っていました」


「それで、風邪の患者を6人連れてまいりましたが、いかがいたしますのですか?」


「風邪薬が6粒できたので、服用して様子を見て貰おうと思いまして」


「一人に1粒だけでございますか? それでは経過が分からないのではありませぬか?」


「一言に風邪と申しましても個人差があり、喉を患う者や、鼻を患う者などおります。どの様な患者に効果があるのか知りたいのです」


「そういうことでしたら・・・」


「悪いのですが、昨晩は一睡もしてないのでこれで下がらせてもらいます。結果は後日にでも」


 そう言い残して、返事も待たずに私は退室した。

 しかし、私の安眠は瞬く間に破られることになった。


「景虎様ぁ!! 風邪の患者が瞬く間に快癒いたしましたぞ!!」





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