表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/28

段蔵との会話

 加藤段蔵。

 幻術使いとして有名な忍者である。

 ただし、彼は不運な人物で謙信に殺されたり信玄に殺されたりと言う逸話を持ってる。

 その彼、いや彼女? が何故この場に居るのか、確かめないといけない。

 あのステータスも異常だしね。


「では、殿よりその方らに一言賜ってもらう」


 おっとお呼びだ。

 部屋の影から私が姿を現すと、庭先がどよめいた。

 ん?

 何々・・・

 小僧の言いなりになるのに抵抗がある。か・・・

 これは舐められるわけにはいかない、一発、度肝を抜いてやろう。


「お前たちの中には、私のような小僧に命令されるのを嫌がる者もいるとは思うが・・・」


 ドキッとした顔をするもの多数。その中に段蔵は含まれていない。


「思い違いも甚だしい!」


 突然、張り上げた声に驚くもの多数。その中に段蔵は含まれていない。


「そもそも、その方らは勘違いをしてはいないか? 私は小僧ではない! 小娘だ!」


 更に驚く破落戸達。その中に段蔵は含まれていない。

 やはり、これは・・・


「殿、その様な事は今は・・・」


 宇佐美殿が苦言を呈してくる。

 だけど、掴みはバッチリだ。特に段蔵の。

 彼女は最初から知っていたかのように当然としている。


「すまぬな。後々に発覚して問題が起きるよりはと今、この場で言っておきたかったのだ」


 一つ咳ばらいをして居住まいを正す。

 小僧と侮っていた者達に緊張が走った様に見える。

 曲がりなりにも主君となる人物を侮っていた事を看破され、その上で性別を間違えていた事まで指摘されたのだ。何か罰が増えるので絵は無いかと考えるのも無礼=死がデフォルトな戦国クオリティ。


「先ず、先に宇佐美も言っていたが、お前たちは既に罪を負っている。それに罰は必要だ。その罰だが逃げようと思えば逃げれるのも簡単に思えるだろう」


 罰の内容を教えて貰った時にそう思った者らしき者達が頷いている。


「だがな?」


 私は刀の鯉口を切り、その場で一閃してみせた。

 ヒュゥっと風を切る音がした後に、頷いていた破落戸の目の前の地面が切れていた。


「私から逃げることがどういう結果になるのか理解しておいてほしい」


 顔が真っ青になる破落戸達に対して段蔵は、眉を少し動かしただけである。

 肝が据わってるだけか、これくらいできて当然と考えているのか・・・

 ざっと庭先の顔を見てみたが、私を侮る者はいないようだ。

 早くも忠誠を示すマーカーが青になった者までいるのに草生えた。


「逃げるという行いは最も愚かな事だと思って欲しいが、真面目に罪を償えば約束通りに働いた分だけの銭をやろう。お前たちが働いている期間の飯はこちらで用意するし寝床も心配せずともよい。なので、どうか、この国のために真面目になってくれないか?」


 と言葉を締めくくって、頭を下げる。

 宇佐美殿が慌てる気配がし、庭先が驚きに包まれた。

 よりにもよって一国の領主が罪人に頭を下げるなどあっていいことではないのは百も承知だけど。

 ここは誠意を見せるべき場所だ。

 主に一人のために。


「殿様、頭を上げてえくだせぇ! 悪いのは儂らの方なのに殿様が頭を下げるなんて間違ってらぁ」


 破落戸の一人がそう言うと、残りも追従して「そうだ。そうだ」と連呼する。

 それを聞いて、私も頭を上げた。

 確認すれば11人が青の忠誠マーカーを灯していた。

 一人の例外は未だ黄色の段蔵だけ。

 深く読み込めば、

『何か疑惑を持っていそうだ。今のまま忠誠を示させるは難しいだろう』

 となっていた。


______________________________________________


「宇佐美殿、破落戸の中に一人だけ女性がいたな? あの者だけ直ぐにここに呼んくれないか」


 私は部屋に戻り、破落戸いや、今は罪人兵と呼ばれるようになった彼らは弥太郎さんに扱かれ始めている頃だろうか。

 休息も考える暇も与えずに早速仕事(調練)を受けさせてはいるが朝餉を食べさせてはいるし気にしなくても大丈夫だろう。


「燕と申しました、あの者ですか?」


「そう、その燕だ」


 偽名なのは分かっているけど、鳶じゃないんだなと思った。鳥つながりか。


「何かございましたか?」


「うむ。あの者だけ纏う雰囲気が違っている。余程の大人物であろう。この機会に味方にしておきたいと思ってな」


 訝しむ宇佐美は殿は、驚き、後に警戒の色を顔に浮かべた。


「その様な危険人物を景虎様のお傍に置くのは宜しくありませぬ。即刻、処分いたした方がよろしかろうと存じまする」


「宇佐美殿が私を心配してくれるのは分かっているが、これは毘沙門天のお告げでもあるのだ。彼の者を味方にできれば、大いに得になると」


「お告げでございますか・・・それなら警護の者を入念に配置したうえでお話になるべきかと」


「いや、そのような場では腹を割って話せはしまい。彼の者の真の忠誠を引き出すには私と二人、余人を交えずに話すしかあるまいな」


「いや、しかし・・・」


 それでも渋る宇佐美殿を「私が後れを取ると思うか」と説得して、本当に渋々といった感じで彼は燕を呼びに行った。

 部屋には段蔵だけが入ってきた。

 気配をうかがうと脳内レーダーも作動し宇佐美殿が部屋から離れていくのが分かった。

 ほんとに便利な能力だよ。


「さて、段蔵さん」


「え? ど、どうしてその名を・・・いえ、あ、その・・・私は燕でございます」


 もう隠しても意味ないだろうと単刀直入に声をかけたら酷く狼狽する段蔵。


「あれ? 貴女にも私の名前が見えているんじゃないの?」


 不思議に思って尋ねてみると凄い勢いで首を左右に振るわれた。

 え、じゃあ私のこの能力は個別特技になるのか?


「あの、畏れながら・・・長尾景虎様で、間違いありませんか?」


「そうだよ。そういう貴女は加藤段蔵さんでしょ?」


「いえ、ですから燕と・・・」


「いや、いいから。もう貴女が幻術や忍術を使えることも知ってるし、何ならステータスも当てようか?」


「いえ、もう結構です。お腹いっぱいです。そこまで語れる景虎様は、歴史シミュレーションゲーム・戦国大名の野望・入魂のプレイヤーさんで間違いありませんよね?」


 一転して開き直ったように口にする段蔵に頷いて応じる。

 そして、どうして自分が此処に居るのかまでを掻い摘んで教えた。


「私の場合はですね。1544年長尾家プレイで女性謙信説を信じて、チュートリアルっぽい戦闘後に景虎が死んだので興味本位に続きを選んだら、いきなり何処かも分からない山道に居ました」


「それは・・・出だしは私よりハードですね。でも、なんで私は景虎で、貴女は加藤段蔵だったのかな?」


「それなら、私が自撮りした写真を段蔵様の顔に設定したからかもしれません。声も出来る女性に設定したんでそれで女の姿なのかと。でも、ゲームにデザインされてた物というより現実の私の身体のままでしたけど」


「え? 自撮り写真を取り込んだんですか?」


「私、忍者ヲタクの歴女でして。推しには自画像を使って感情移入するんです。まあ、コスプレの逆みたいな感じでしょうかしら」


 わ~。私以外にも奇特な人は居たんだ。

 同士を得た気分で私も自撮りしたんですよ!

 と発現したら、段蔵さんに驚かれた。

 それは、自分と同好の士と出会えたからによるものではなく。


「うそでしょ。だって、私、段蔵様の顔グラ探す際に上杉謙信の顔グラも見たけど、貴女そのものでしたよ!?」


 う”ぇ・・・


「それこそ嘘だぁ・・・私がプレイした時、謙信は髭もじゃの男でしたよ?」


「待ってください、景虎様がプレイしたのって何時ですか?」


「発売日の午後10時くらいだったかな?」


「私は仕事の都合で翌日の夜8時でした」


 つまり・・・上杉謙信枠の顔グラは変更されていたってこと?

 オンラインじゃないオフゲーで?

 ありえないでしょ。ってか、この状況が究極的にあり得なかった。


「とにかく、ある条件であのゲームをプレイするとここに取り込まれるって事になるのかな?」


「そうかもしれませんね。特別な条件がないとそこいら中に現代人武将が居ることになっていそうですし」


「条件って自分の写真を登録する事かな・・・カメラに魂を吸われると思われた時代もあるし・・・」


 段蔵もそう思ったのか深く頷いている。


「ここがゲームの世界の可能性が高まったかな」


 私が半ば確信を持って言うと段蔵が顔を曇らせた。


「私は、今2種類の可能性があると思っています。一つは、史実の戦国時代に転移した可能性、もう一つはそれをモデルにした異世界に飛ばされた可能性です」


 正直に私は驚いた。

 私の可能性を彼女は考えていないというのだ。


「景虎様、私が今言った可能性、両方に共通している事があります。何かわかりますか?」


 そう問うてくる段蔵の顔は酷く恐ろしげに見えた。


「それは両方とも現実であるということです。人は死んでもポリゴンの様に消えませんし、死体が生き返りもしません。リセットもできなければセーブもできない。やり直しがきかないリアルと全く変わらない事実が残るのみなんですよ」


 答えに窮する私を見て段蔵は重い事実を告げてくる。


「それって・・・人の死を見たって事?」


「私が最初に居た場所は山道って言いましたよね? そこで山賊に私は襲われました。混乱していた私は成すすべなく囚われ犯されました。いえ、妊娠の心配はありませんよ。その前に必死になった私の抵抗が山賊たちを皆殺しにしましたから・・・でも、あの痛みと人を殺した感触や血の匂いは忘れられません」


「それは・・・辛いことを思い出させてごめんなさい・・・」


「貴女が謝る必要はないですよ。ただ、ゲーム感覚で物事を判断しないで。特に景虎様は、今後多くの死と向き合うことになるはずですから」


 ゲームの能力が使える。そうだ。言われた通りゲーム感覚だった。

 その能力のチートさに自分が死ぬ可能性が見えなかったのも助長させていたと思う。

 だから、この時代の常識的に正しくても、罪人を簡単に死罪にするなんて言っていた。

 令和の日本で死刑囚の刑の執行には人が三人ついて、絞首台のボタンを同時に推すらしいけどどれが正しいボタンかは執行人も知らず、人を死に至らしめた事を、その苦悶を分割または、自分のボタンじゃなっかったと思うことで誤魔化して心を守っている。

 そんな時代の私がこの世界で生きていくのはどれ程の苦悩が必要になるのか正しく理解できていなかった。

 震える私を柔らかい物がそっと包み込んだ。


「貴女には理解者が必要よね。わかった! 私があなたの傍にいてあげるわ。困ったり、他の誰にも話せないことを聞いてあげる。だから、頑張りましょう」


 段蔵・・・

 段蔵さんの顔が菩薩様に見えても不思議じゃなかった。


 

 






景虎さん、色々な意味で心強い味方をゲットしました。

今後は段蔵さん視点の話も書いていくか悩み中。この作品は景虎の一人称と閑話の他者の第三者視点の構成で行く予定でしたけど、どうしようかな。段蔵さんを閑話にすると多くなりそうだしな・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ