表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/28

新領地にて

 さてやって来ました、越後国西頚城郡能生。

 春日山のお隣だったんですね。

 根拠地は根知城・・・まだ居館程度ですが、ここを中心に城下町が一つ。農村5か所に漁村2か所と中々に良い所。

 海あり、川あり、山あり、平地あり。

 驚くべきは天然ダムまであることですかね。


「では、まず何から手を付けますかな?」


 家臣代表として年長者の宇佐美殿がニコニコと微笑みながら訪ねてきました。

 既に能生に着任して一通りの領内を見て回り、人のいる町村では私が今後、この地を治めることを周知して回ってあるので、内政に手を付ける下準備は完了している。


「面倒ですけど、春日山にあった資料の帳簿と現物の比較検証からですかね」


 楷書、書式の通達はされたけどそれが徹底されて正常運用されるには月単位の年月が必要だろうから今は昔の悪書と戦うしかない。

 手元に資金が幾らあるかでやれることは、限られるのである。


「書類仕事かぁ・・・オレには向いてないんだがね」


「そうですね、弥太郎さんは兵10名ほど連れて城下に行って破落戸(ごろつき)とかいないか見回って来てもらっていいですか?」


 取り合えず、城下の治安を良くしよう。


「ついでに盗賊とかの被害が出ていないかも聞き込んでください」


「わかった。そっちの方がオレに向いてらぁ」


 意気軒高と弥太郎さんは部屋を出て行った。


「では、我々は書類を片付けましょうか」


「分担したほうがいいかな? 宇佐美殿は兵糧を、実乃さんは銭と武具を、私は陳情が溜まってないか確認しようか」


 皆が手分けした結果、部屋に残ったのは私一人。

 幸い面倒な陳情はなく、過去にどんな訴訟や問題があったのかの確認だけで済んだ。

 手が空いた私は宇佐美殿と交流を深めようかと思い立ち、蔵に向かう。


「宇佐美殿、やはり数が合いませんか?」


 帳簿を手に厳しい表情をしていた宇佐美殿に声をかける。


「これは景虎様。そちらはもう終わりましたので?」


「ええ、ですからお手伝いに参りました」


「これは畏れ多いことです」


 そう挨拶を交わしてから確認を取った所やはり数が合わないそうだ。


「これは中抜きでしょうな」


「そうですね、誤差が少々大きいかと思われます」


「この地は周囲に敵対勢力もなく平穏でしたからな、不正の温床となったのやもしれませんな」


 これは実乃さんの方でも被害がありそうな気がする。


「しかし、何時、何処で、誰が行ったかが分からなければ罰せられません。此度は厳重注意をして次回から発覚後厳しい処置をとりましょう」


 そんな話をしながら作業を進めていきながら、質問をする。


「宇佐美殿は何故、私の家臣になろうと思われたのですか?」


「景虎様のなさることに年甲斐もなく高揚いたしました。この方は次に何をなされるのであろうかと」


「うん? 私が何かしましたか?」


 小首をかしげると宇佐美殿はご謙遜をとお笑いになる。

 いや、特に何かした記憶もないんですが・・・もしかして以前の景虎さんが何かしたのかな?


「己の為した偉業を誇らないのは美徳ですが、その様子だと本当に覚えがないように見受けられまするな」


「事実、そうなのですが? 精々が晴景兄上の疲れを取る按摩をしたぐらいですよ?」


「そう言えば、殿が語っておられましたな。景虎様の按摩は天にも昇る心地よさだとか・・・いや、それも興味はござるが、中郡の豪族共を兵を用いないで制圧した話ですとか、楷書による文書改めの法などの話でございまする」


「ああ、それですか。私としては何か特別なことをしたとは思っていなかったので・・・」


「真にそれでござりまする。我らでは思いもよらぬことを呼吸をするがごとく当たり前になされる。驚くなという方が無理にございます」


 そこまで言われるとちょっと照れてしまっても仕方ないだろう。

 相手は、あの宇佐美定満なのだから。

 ちらっとステータスを覗き見れば・・・

 武芸71 統率86 知略95 内政75 外交72

 と見える。

 知略で私より高い人物は初めてである。

 そんな人にそこまで言われると、私だって何か凄いことをしたみたいと己惚れてしまうではありませんかね?


「さて、これで終わりにございますな」


「実乃さんの方も終わった頃でしょうか?」


 と、私が口にしたところ。


「お二方ともこちらにおりましたか。某の方は終わりましたので手伝いに来ましたぞ」


 噂をすれば影である。


「こちらも丁度終わった所です。では、一度部屋に戻りましょう」


______________________________________________


 夕刻も迫った頃、街に出ていた弥太郎さんも帰ってきたので、夕餉にしながら報告を聞くことにした。

 主君と家臣が一緒に食事をする事などないので皆、最初は断ってけど。ここは私の国で私がしたいようにして構わないので一緒に食べることと命令する形になった。

 一人で食べるご飯は寂しいのである。

 因みに毒見もない。

 これも反対されたけど、台所を見張って不自然な所がないように見張らせる事で承諾を得た。

 食材は、弥太郎さんが町でお土産に買ってきた物だから大丈夫だしね。

 冷めたご飯は美味しくないから。


「それで弥太郎さん、破落戸達は何人見つかった?」


 質問の答えを味噌汁を啜りながら聞く。

 う~ん・・・出汁を取ってないのかな? 鰹節ってこの時代からあったっけ? あ、でも昆布は直江津で手に入りそうだよね・・・


「そうだな、10とちょっとってところだったかな」


「弥太郎、報告はしっかりとせよ」


 実乃さんが口を挟む。昼間の帳簿の件で立腹していたのか言葉にとげを感じるな。


「ああっと、すまねぇ・・・全員しょっ引いて来たから後で正しく報告する」


「しょっ引いたというからには、何か悪事を働いていましたか?」


 面目なさそうに後頭部を掻く弥太郎さんに尋ねる。


「まあな。食い逃げ、かっぱらい、脅しに弱い者いじめ、色々いたな」


「それは良くありませんね。予定を少し修正しましょうか」


「予定とは何でござろうか? お聞きしてもよろしいですかな」


 お箸を咥えたまま思案に耽りそうになった私を宇佐美殿の声が呼び戻す。


「構いませんよ。実は彼らを俸禄で雇って足軽にしようと思っていたのです」


「傭兵ということですかな?」


 宇佐美さんが言うけど、私は首を横に振った。


「違うよ。傭兵は戦のたびに雇うものだけど、私の考えでは召し抱えるつもりです。彼らには俸禄を支払う代わりに毎日訓練と領内の治安維持についてもらうようにするつもりです」


「しかし、破落戸など銭を受け取って逃げてしまうのではありませんか?」


「実乃さんの言うとおりだと思う。だからその性根を初っ端に叩き直すんですよ。国のために働く事を自らの意思で行うようにね」


 破落戸なんて、働いてないだろうし、銭も持ってないだろうし、矜持ももってないだろうから、勤労の有難さと国に背く愚かさを徹底的に仕込めば一端の兵士になるんじゃないかな。


「なるほど・・・しかしそれでも逃げ出しそうではありますが?」


「そんな事は私が許さないし、させないよ。本当は志願制にしてダメなら諦めようと思ってたけど罪を犯しているなら、償わせないうちは絶対に許さない」


 その時、浮かべた私の表情に何を感じたのか、歴戦の武将三人が揃って両腕をさすって震えあがってしまった。


「とにかく、犯した罪の程度に合わせて、強制的に働かせる期間を調整はしよう。その後に、このまま仕えるか、今まで働いた分の銭を渡して釈放されるかを選ばせる」


「釈放してはまた破落戸に戻りませぬか? 訓練を積んでいるのですからより面倒に・・・」


「そうだね、銭を渡すのは直ぐに破落戸にもどらないようにする処置の一つだけれど釈放する時は心を改めたと思える人にしか許さない。そして、それで万が一にも罪を犯したなら国を謀った罪で問答無用に死罪にする」


「なるほど、これまでに見ない制度ですな」


「それに彼ら専用足軽衆は戦の時は全員が強制徴収。能生は1600国だから徴兵義務は40人程度だけど彼らのおかげで30人未満で農兵の徴兵はすむんだよ」


「ふむ・・・詳しく聞けば、なるほど、試してみるのも悪くない手のように思えまするな」


 宇佐美殿が顎髭を扱きながら重々しく頷かれた。

 どうやら一応、納得してくれたようだ。

 会話しながらの夕餉だったけど、みんな既に綺麗に完食していた。


______________________________________________


 明けて翌日。城の中庭に縄で縛られた破落戸12名が並んで座らされていた。

 彼らと面と向かって立ち会うのは、貫禄ある宇佐美殿と彼らを捕縛した弥太郎さんである。

 私は物陰からじっと様子見をしている。

 ふむ・・・ステータス的には30~40程度か。

 と、端から見ていたら最後の一人に思わず目を剝いた。

 その人物は女性だった。それだけでも驚きだけどステータスが・・・

 武勇88 統率75 知略98 内政73 外交68

 であった。

 何者ぞ!?

 と目を凝らして見た名前に、またしても驚かされた。

 加藤段蔵!?

 って、あの飛び加藤か!

 何故、女性って思い、まじまじと見つめると更に追加情報が浮かんできた。

 特技:幻術 忍術 百里駆け

 ふぁっ!

 マジか!?

 得意な幻術で男に変装していて後世に伝わったただけか?

 いや、今女性に変装してるだけ?

 と考えてたら、信長無双のモデリング画面が発動した。

 どう見ても、女性でした。ありがとうございます。

 その時見た、生命力312 体力555 精神力750 と言う数値も破格だった。

 そこで思いついたのが、彼女も戦国の野望・入魂をプレイしたゲーマーでは無いかという疑問。これは、後で二人だけで話を聞いてみる必要があるかもしれない。


「と言うわけで、その方らはこれよりこの国の専業兵として働いてもらうことになる。これは、罰でもあり拒否は許されておらぬ故、努々忘れる出ないぞ」


 私が物思いに耽ってる間に、宇佐美さんの説明が終わっていた。

 それと同時に破落戸の頭上に黄色のマークが点灯した。彼らが私の配下になった証拠だ。

 その内の一人を詳しく見てみると・・・

『明らかに不満を抱えている』

 と出た。

 納得しきれてないってことだろう。

 そして、私は最も注目するべき人物を見た。

『現状に混乱している様だ。命令に背く意思は感じられないが待遇に疑問を持っている』

 と表示されたのであった。

キーパーソン的な人物登場。非科学的な忍術が現代に資料として残ってる部分を利用させてもらいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ