さあ、ゲームスタートですよ♪
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はっと目が覚めると、そこは見覚えの無い町並みで、レンガや木等といった素朴な素材で出来たこじんまりとした建物ばかりが並んでいる。
それだけでなく、さらに不思議な事に直立の姿勢で目が覚めた。
「もしかしてこれがVGなのか……?」
そうつぶやきながら考えてみても視覚、触覚、聴覚、嗅覚、そして多分ではあるが味覚に至っても現実との違いが見当たらない。
それだけにとどまらず、個人的に予想していた事として空気の匂い、地面などの細かな凹凸、他人の気配などは存在しないのではないかという予想も見事に裏切られ、それらは全てしっかりと存在していたし、地面を舗装する石材も一枚毎にしっかり異なるというこだわりようである……
俺がそんな事実に心底驚いていると、遠くの方に居て目ざとくこちらをみつけて歩いてきている隼人を始めとして、3人ほどがきょろきょろと周りを確認しているのがその場から確認出来た……
とりあえずその場で待機していると、何故か機嫌の悪そうな隼人がまっすぐに近付いてきて
「翔!!
8年ぶりに会ったっていうのに、人の話の途中で勝手に消えてるって酷くないか!?
俺以外に友達無くすぞ?」
「ああ、そうか隼人以外に友達無くしたら俺には友達が居なくなっちまうな……」
「安心しろ、俺はそんなお前でも友達でいてやるよ!」
「え?いや、結構です」
「なんでだよ!?
俺たち親友だったろ?」
とくだんへこんだ様子でもないので、俺たちはそのまま笑いあった。
「ははは。
翔は相変わらずだな、まあお陰で安心したよ。
もはや全然知らないやつみたいになってたらどうしようかと思ってたんだ」
「いやいや、自分では結構変わったと思ってたんだがお前の悪影響だろうな」
「ほんと相変わらずの毒舌だな。
まあ、らしくていいけどさ♪」
そんな話をしていると、残りの面々も集まり隼人の突然の名乗りから自己紹介が始まった
「はーい、俺の名前は藤堂隼人です。
運動神経には自信があるけど、喧嘩とかはあんまりしないからこんな所ではどこまで役に立つかはわかんないけど、みんなよろしく!
ただ、VG自体はそこそこやりこんでる方だぜ!!
あと、こっちの目つき悪いのは俺の親友で天ヶ瀬翔ってんだ」
隼人を眺めながら、『隼人が勝手に自己紹介するぐらい勝手にすればいいや……』などと思っていたらいきなりこっちに振りやがった。
しかも、一同はもう完全に俺の自己紹介待ちに入っている……
俺は一発どついてやりたい衝動に駆られながらもなんとか抑え、殺気を込めた目で睨むだけにとどめてやった。
まあ、それだけでもすでに腰が引けていたけれどもな。
「俺の名前はこいつの紹介通り天ヶ瀬翔だ。
覚えてくれているかは知らないが、小学校卒業とほぼ同時にアメリカへ渡った。
あと、帰ってきたばかりでこういったゲームに関しては初めてだから、わからないこともあるだろうがこれからよろしく頼むな」
と軽く自己紹介すると、言い終わったところで隼人は
「んじゃ、次は圭介よろしく」
などと手際よく指名していく。
「俺は斉藤佳祐(サイトウ ケイスケ)でVGで戦うときの武器はバトルアックスだ、よろしく。」
「あー、見てわかる通り無口なやつだけど、いいやつだからよくしてやってくれ。
んじゃ、最後そこのかわい子ちゃん、自己紹介お願いね♪」
と言って少し離れて立っていた女の子を指差した。
その子は、隼人がかわい子ちゃんと呼んだのも頷けるような、とてもかわいい女の子だった……
正直なところ、この集まりが全員同窓会のメンバーでなかったら同い年だとは気づかなかったと断言できるような、黒髪ロングヘアの似合った高校生といった風貌だった……
口を開くまでは………
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それを、一言で表すならまさしく衝撃であった。
何故なら、その子は隼人に名指しされた後にその長い髪を軽く払い
「いきなり馴れ馴れしくしないでください。
とりあえず私の名前は綾瀬美奈(アヤセ ミナ)といい、そちらの天ヶ瀬さんと同じく最近日本に帰って来ました。
そして、私たちに必要なのは協力であって馴れ合いでは無いことも十分にわかっているので、こんな事態の時に合コン気分でいたいというのなら、私抜きでやってください。
それとも、あなたは今私たちがいる事態の危険性を把握していないとでもいうのですか?」
などと啖呵を切り、隼人がおずおずと謝り、危険性について尋ねるのを聞くと、俺も聞いてきた通りにこの世界の異常性について語った。
それは、かなり詳しく聞いてあり俺も少し横から補足しつつ世界観を確認した。
しかし、ふと考えてみれば俺にとっては確認であっても、隼人や斉藤にとってみれば、初めて聞くとんでもない話なところも多く、隼人は特に顔面蒼白になっていた……
そして、その後少し話し合った所、隼人はもこもこと談笑してただけで、綾瀬は俺の聞いたこととある程度同じような感じ、斉藤は無口な性格にも関わらず細かいルールについて結構聞いて終わったらしい。
ちなみに、斉藤によると今こんなに人が少ないのは、プレイヤーはある一定の人数ずつ何ヶ所かの場所から開始するので、ほかの面々はすこし前から開始しているかららしい。
そして、お互いの自己紹介の後はみんなが聞き出してきたルールを元に、どうすればこの世界を脱出出来るのかという話となったが、これに関してはRPGの王道に則って真面目にレベルを上げることから始めて、仲間を集めていくぐらいしかないいという事に落ち着いた。
そして、話し合っている最中に思い出した事でとても大切な事が一つあった。
そう通貨や荷物である……
俺たちは全員同じ服装で、シンプルな上下とマントという出で立ちであり、鞄などと言うものは持っていない。
となると、何かアイテムなどを管理する方法があるのでは?と考えたわけである……
そして、俺がそんな事をかんがえていたときに、同じく何かを考えていた綾瀬が唐突に尋ねてきた。
「そういえば、レベルを上げてステータスを上げることで強くなるのはいいとして、どうすればそれを確認出来るの?
そういえば、そういうシステム的な話は聴いてないんだぁ……」
それにしても、最初の印象はどこへやら、話し方が砕けたものになっていっている……
まあ、これからのことを考えると心を開いてくれるのはありがたいことなのだが、そんなことをたずねられても俺も全くわからない。
なので仕方なく隼人たちに聞いてみると、2人はその質問に何故か呆れつつ
「タスク以外何があんの?」
などと逆に聞いてきた…………
いや、むしろタスクってなんだ?などと思っていたら、俺たちがVG初めてなのを思い出したのか隼人が納得顔になる。
「そうか、翔たちは外国帰りだからVG初めてだったんだな。
とりあえず、日本にたくさんあるVGにおいて必ず共通してあるのが、このタスクっていうスクリーンで、{タスク}と唱えれば普通のゲームで言うところのメニューのような物が見れるってとこなんだよ。
そして、このタスクがまた優れもので、自分たちのステータス表示に始まり、自分の視界の範囲ぐらいが限定だけど結構詳細なマップが自動作成され、さらには所持金、アイテム等を異次元空間に預けて管理したり、パーティーを登録するという事までしてくれる超便利アイテムなのだー!!」
とりあえず、途中までは感謝の気持ちがあった俺だが、最後の方は意味の分からんテンションにむしろ引き気味であった……
周りを見ると綾瀬や斉藤も同じような感じなので、悪いのは暑苦しい隼人である。
まあ、そんなこんなでレベルアップのために街を出てみる事になったのだが、そこで俺たちは正直まだまだこの世界をなめていたことを思い知らされる事になる。




