さあ、RPGの世界ですよ♪
ふと気が付くと、あり得ないほど真っ白な空間で宙に浮かんでいた……
そう、漂うとか落ちるとかではなく俺は一面真っ白で地面も壁も無い空間において、まるで地に足つけて立っているかのような安定感で留まっていた。
そして、意識がはっきりしてくると、今度は今まで真っ白だった目の前に段々と定番の説明キャラクターとでも言いたいかのような、白くて、まん丸で、もこもこしたぬいぐるみのような生き物が現れてきて、ゆっくりと目を開き俺に語りかけ始めた……
「ようこそ天ヶ瀬さん♪
ご覧のように、僕はこのゲームの案内人……質問があれば聞いてみて♪」
「ならとりあえず、一つ聞きたいんだけどここで質問したらそれには絶対に正直に答えてくれるんだな?」
「もちろんだよ♪
それが僕の役目だから、教えられないものについては教えられないけど、 絶 対 に嘘はつかない♪
じゃあ、とりあえず説明を始めるけど準備はいいね?簡単な事しか無いから大丈夫なはずさ♪」
それだけ言うと俺が頷くのも見届けずもこもこは説明を開始した。
「まず一つめとしてはバーチャル世界に入り、見た目そのままの自分が主人公とはいえ、ステータスを上げていく事で強くなります♪
ステータスを上げるには、レベルが上がった時に貰えるsp(ステータスポイント)を使ってどのステータスを上げるのか自分で決めてください♪
二つ目としてこの世界の住人以外なら人を殺す事も出来ますが、一切お得な事はありません♪
レベル上げは普通にモンスターを倒してくださいね♪
そして、最後に一つ……この世界から出る方法は一つだけ、それはこのゲームを誰かがクリアする事です♪
そして、それまではたとえ何があっても貴方達は現実世界へ帰る事は出来ません♪
説明は以上ですが何か聞きたい事は?」
「……おい、いくつか聞かなきゃいけない事があるが、そもそもゲームをクリアするってのは何すればいいんだ?
あと、それまでは何があっても戻れないっていうのは何事だ??
いくらなんでもある程度の時間がたてば終わるんだろ?それともここにいる間は外の時間が止まるっていうのが事実だとでもいうのか!?」
「このゲームはあなた方216名でやってもらうRPGです。
と、いうことはクリアする方法はラスボスを倒すことですね♪
そして、時間を止めるということが事実か?でしたね………
それは当然事実です♪」
「なっ!?
そんな技術が存在するわけないだろっ!!」
俺は柄にもなくついつい声を荒げていた。
だが、このもこもこはそんな事は気にもせずに答える。
「なら他のVGを作る技術を人間が持つというのですか?
あれでもとうてい無理ですよね??
実は誰も作り方を知らないようなのも当然なんですよ♪
だって、こんな装置地球上の誰も作れやしないんですから♪」
もはや言葉を挟めずに唖然としてながめる俺に、もこもこはトドメを刺した
。
「これらの装置は全て異界の者が仕込んだ物であり、人間を楽しませる代わりに人間の出すエネルギーをもらうための装置なんですよ♪
そして、一部の人間と異界の者とが契約する事によりこれらの装置は人間に使われているんですよ♪
さらに、このエデンの園とは異界の者の中でも非常に大きな力を持つ者が、とある人間の持つあなた方への強い憎しみに興味を覚えて生み出したもの……時を止める程度わけない事なのです♪」
予想以上に簡潔な、しかし全く予想もしていなかったような恐ろしい事実を知らされた俺は、ここまできてやっと参加したことに対しての深い後悔を感じた……
そして、ゲームを始める前から一瞬心が折れそうになったが、その時父の言葉が頭をよぎった………
『いいか、世の中常に最悪の事態まで考えて動け。
だが、たとえどれだけ注意したところで、どうしようもないよう状況に陥る事もあるだろう……
だが、どうしようもない状況なったとしても諦めるな!
人間どう考えても無理な事はある。
例えば空を飛ぶとか、水中で生活するとかは生身の人間には無理だ。
だが、自分の能力に自分で見切りを付けることだけはするんじゃねえぞ?
人間ってのはなあ、案外優れたもんで実力を出し切るなんて事はそう出来る事じゃねぇんだ。
だから考えろ、絶望してる暇があれば考えるんだ!!』
はっ!
こんな時に親父の言葉を思い出すなんて俺も落ちたもんだな……
この程度で絶望しそうだったなんてな奴らにも笑われちまうな。
よし、外に出られる可能性がわずかにでもあるのなら、それにくらいつけばいいだけだ!
ならば、そのためにも今の内から少しでもヒントを引き出しておく必要がある。
まずは、外してはいけないルールは無いか?ここで聞いておかなければ困るものは無くす!
「とりあえず質問だ……
まず一つ、このゲームにおいて死んだらどうなる??
そして二つ、ラスボスが絶対に倒せないという事はシステム的にありうるのか??」
「この状況でよくそんなに的確な判断が出来るね、流石は……
まあ、それはいいや♪
じゃあとりあえず、質問に答えるよ?
まず一つ目の答はこの世界に取り込まれますそして、誰かが支配者を倒した時には他の人と同じくこの世界から解放されます♪
二つ目は、この装置を生み出した者の力はとても強大です♪
その者にとって人間のエネルギー等とるに足りない物なので、そんな事はいたしません♪
あくまでこれは趣味で暇つぶしなので、倒すことは可能なレベルとなっております♪」
なるほど、倒すことは可能という事は保証されているのか、それくらいの希望はあるということか……
その言葉を信じ得るものだと判断した俺は、一つ頷くと顔を上げて尋ねた
「最後にあと二つだけ聞きたい。全員死んだ時はどうなるんだ?そして、俺が今ここで確認したルールを他者に証明する方法はないのか??」
「全員死んだ時にはもちろん全員装置に取り込まれるんだよ♪
そして、ルールに関しての話をする時には全ての参加者がお互いの話を直感によって正誤判断出来るようにしておくよ♪
もちろん、他人には教えないということは可能だけどね♪
これが最後という事だったけど、本当にもういいね?」
俺がはっきり頷くのを確認するとそいつは笑い出した。
「ふふふ♪はははははは♪
実は僕は、君と話すのと並列して他の参加者全員とも話してたるんだけど、君との問答が一番刺激的だったよ♪
他なんてそもそもこれがどんなゲームかろくに知らないまま始めるやつもいるし、残りもほとんど途中で絶望から立ち直れなくなったのに君は最後までついて来れたね♪
個人的に君に興味が出来たから是非僕を楽しませてくれよ♪」
「そうかそうか……
では、俺はお前の作ったこのゲームを見事にクリアして見せるのが唯一の役割なわけだな?」
「それは何?
このゲームを僕が作った??
冗談もほどほどにしなよ♪」
「ふっ、その答えではっきりしたな創造主よ………
なら直接問おうか?
否定するのは嘘をつけない以上無理だからその時はどうするんだろうなぁ?」
「はあ……
ほんとにさすがだね………
ちなみにどこで気付いたの?」
「エデンの園を作ったものに対して最大限の敬意を払っても不思議ではないのに、ほとんど敬意を感じられなかった事、あとは俺と話ながら全員と話していると言ったな?
こっちは216人もいるんだから、そんな離れ業をこなしてる時点で普通じゃないだろ………
まあ、一番の決め手はお前のその存在感というか、オーラというかそなんな感じのものだよ。
明らかにお前の持つ気配が尋常じゃないんでこれをはるかに上回る存在なんて想定したくなかったんだ」
「なるほどねぇ……
ほんと、天ヶ瀬さんは底が知れないや♪
じゃあ、今度こそいってらっしゃい♪」
そういって、声高にゲームの開始を宣言すると、現れた時 と同様に溶けるように消えていった。
それと同時に俺の意識は、今度は最初とは対照的な漆黒の世界へと飲み込まれていった……




