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世界樹ダンジョンで囮にされた僕、風精霊と同化して銀髪美少女へ 〜学園では落ちこぼれDクラスなのに、配信者を救いまくっていたらネットの神になっていた件〜  作者: あかぱん
ノワール解放編

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祭りの裏の総力戦

ガタガタと軋みを上げ、非常用搬送リフトが急速上昇していく。

鉄格子越しに見える立坑の壁面を、赤い非常灯が目まぐるしく流れていた。


地下最深部での激闘を終えたばかりの一同の息は、まだ荒い。

だが、鳴神先生は即座に懐から特務用の通信端末を取り出し、迷いなくある回線へと鋭い声を飛ばしていた。


「――私だ、鳴神だ。手配した機材と人員の配置はどうなっている」


『機材は確保しています。いつでも行けますよ』

通信の向こうから、重機の駆動音とともに冷静な技術班の声が返る。地下突入前に鳴神が先手を打って要請していた魔導工学研究所の技術者たちだ。

『【空間固定結界《アンカー》】試作機は作業車に積載して旧資材区の搬入口前で待機中』


「恩に着る。そのまま現場の中央へ強行突入させろ」


さらに、別の通信回線から聞き慣れた声が次々と割り込んできた。


『冴香さん、こちらも配置についたよ。みんな無事かい?』

レオンの、気負いのない柔らかな声。

続けて、通信機を震わせるほどの重厚で厳格な声音が響く。


『若人らの健闘、遠くからでも感じ取っておったぞ。……都市の安寧を乱す暴走をこの老骨が見過ごすわけにはいかん。背中は任せてもらおう』


『ふふ、お祭り騒ぎの特等席に呼んでくれてありがとう、冴香。可愛い生徒さんたちを危ない目に遭わせるわけにはいかないものね?』


ボルドーとシエラもレオンと共に現場へ合流していた。


「レオン、ボルドー殿、シエラ……すまない、恩に着る」

鳴神は短く応じる。


「暴走の現場は、記念塔の地下搬入路を抜けた先――記念公園の外れにある【旧資材集積区画】だ。お祭り期間中で完全封鎖され、遮音・防壁フェンスで囲まれているため、メイン通りの一般客にはまだ気づかれていない。……だが、都市警備隊とギルド本隊の迎撃部隊がフェンスの内側に重装包囲陣を敷いている。『危険魔獣の即時殲滅』を掲げ、対大型魔導砲の充填を開始しているとのことだ」


「なんだって……!」

クローディアが舌打ちをする。

「あんな狭い区画で魔導砲をぶっ放してみろ、防壁ごと吹き飛んで、隣のお祭り広場まで衝撃波が届いちまう!」


「ええ。何千人もの来場者がパニックになれば、大惨事は免れませんわ!」

クラリスも青ざめながら杖を握りしめる。


遠くから、風に乗って微かに陽気なブラスバンドの音楽と、祭りを楽しむ歓声が聞こえてくる。

そのすぐ隣の隔離区画で、大切な男の子の命と都市の平穏を賭けた秒読みが進んでいた。


「本来なら三ヶ月後に完成予定だったアンカー装置だ。未調整の使い捨てで、全魔力を注ぎ込んでも彼を縫い留められるのは――ほんの一瞬。長くても三秒が限界だ」

鳴神の言葉に、マリンが端末を叩きながら叫ぶ。


「技術班の人たちと合流して、あたしが直接バイパスを繋いで急速充填する! でも、現場へ装置を運び込んで杭を打ち込み、充填を完了させるまでに最短でも三十秒はかかるよ!」


「三十秒の時間を稼ぎ、たった三秒の隙を掴み取る……できるな?」

鳴神先生が、全員の顔を鋭く見据えた。


「ボルドー殿の大盾を要として外周を固め、暴走する彼が民間エリアへ逸れるのを物理的に防ぐ。レオンとシエラは遊撃に回り、警備部隊の強行突入を牽制しろ! 氷華、クラリス、クローディアは魔導砲の射線へ割り込み発射を妨害!」


「了解です!」

「お任せくださいな!」


「私とノアは、アンカー輸送車をノワールの猛攻から死守し、三十秒の充填を成し遂げる。そして――アンカーが起動し、ノワールが現実空間に縫い留められた【一瞬】!」


鳴神の眼光が、ノアへと注がれる。


「私がお前を彼のもとへ送り届けてやる。あとは――ノア、お前が彼を止めろ」


ノアは胸元をぎゅっと握りしめ、魂の奥へと意識を向けた。


(……大精霊様、みんな! あの子の瘴気は深すぎる……僕の風だけじゃ届かない。力を貸して!)


間髪を入れず、頭の中に愛おしい声が小気味よく響き渡る。


『任せなさいって! アタシのビリビリであの子を反省させてあげるかんね!』

『……全力で協力する……無茶はするな』

『ふふ、全部洗い流してあげましょうねぇ』

『へっ、しっかり気合入れやがれノア!』


そして、マグナ・マテル様の温かな声が響く。

『いきなさい、ノア。あの子を救えるのはあなたです』


全属性の魔素が、胸の奥で力強く巡り始めた。

ノアは翡翠の瞳を凛と輝かせ、前を見据える。


「はい……! みんなの力で、絶対に助けます!」


ガコンッ!!

リフトが地上出口の搬入ゲートに到達し、鈍い衝撃とともに停止した。


重い鉄扉がプシューと音を立てて跳ね上がる。

隙間から差し込む眩しい秋の陽光。

同時に、肌を焼くような紫黒の瘴気と、獣のような悲痛な咆哮が叩きつけられた。


『――グォォォォァァァッ!!』


そして、搬入路の向こうから轟音を上げて突入してくる装甲作業車――フレームとコードを剥き出しにした巨大なアンカー装置を載せた技術班の車輌。

その前方を、漆黒のタワーシールドを構えたボルドー、双剣を抜いたレオン、そして蛇腹剣をしならせるシエラが、砂煙を上げて駆け抜けてくる。


「行くぞッ――!!」


鳴神先生の号令とともに、満身創痍の生徒たち、頼もしき歴戦の先達、そして技術者たちの意地を乗せた総力戦の幕が切って落とされた。

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