↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界樹ダンジョンで囮にされた僕、風精霊と同化して銀髪美少女へ 〜学園では落ちこぼれDクラスなのに、配信者を救いまくっていたらネットの神になっていた件〜  作者: あかぱん
ノワール解放編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/102

二人の時間

「――ノアちゃん、午前中本当にお疲れ様っす! 交代の時間だから、ゆっくり他所の出し物を見て回ってくるっすよ!」


お昼過ぎ。リノに背中を押され、ノアはエプロンを外して教室を抜け出した。

衣装を着替える時間は惜しかったため、大精霊様仕立てのメイド服の上に薄手のカーディガンを羽織り、人の波に紛れるようにして賑やかな校内へと繰り出す。


外のメインストリートは、午前中以上の熱気に包まれていた。

屋台からは香ばしいソースやスパイスの匂いが漂い、中央広場の特設モニター前では大勢の観客が足を止めている。


「あーっ! ノアちゃんだー!」


人混みの向こうから、配信ドローンを引き連れた水無瀬マリンが手を振りながら駆け寄ってきた。


「マリンさん! お仕事中ですか?」


「うん! 公式レポーターとしてあちこち突撃生配信中! でもさっきD組の前を通ったら、階段の下まで人が並んでて入れなかったよ〜! リスナーからも『ノアちゃんのメイド姿を映せ』ってコメントが滝のように流れててさ!」


「うぅ……恥ずかしいから配信で大写しにするのは勘弁してください……」


「あはは、冗談冗談! 今はノアちゃんの休憩中だしね。あ、これからどこ行くの?」


「生徒会の警備テントに、差し入れを持って行こうと思って。氷華さん、朝からずっと忙しそうだったから……」


「うわ〜、優しい! 氷華ちゃん、絶対泣いて喜ぶよ! いってらっしゃい、ノアちゃん!」


マリンに見送られ、ノアは中央広場の奥――生徒会が構える中央警備本部へと向かった。


◇


厳重な通信機材と警備モニターが並ぶ特設テントの前。


「……第4ゲートの通行規制、予定通り解除。第2巡回ルートの増員を願います」


きびきびと指示を出していた生徒会長・神薙氷華が、ふと足を止めた。

パタパタと小走りで近づいてくるノアの姿を認めた瞬間、その青銀の瞳がパッと明るく輝く。


「あ……ノアさん」


「氷華さん、お疲れ様です! 警備のお仕事、すごく大変そうですね……これ、よかったらどうぞ」


ノアが差し出したのは、温かい特製ハーブティーの入った魔法瓶。

氷華は驚いたように目を見張ったあと、まるで世界に一つしかない貴重な宝物を受け取るかのように、両手で恭しく受け取った。


「……ありがとうございます!」


「うん、ノアさんが淹れてくださったお茶……一口ごとに、疲労が溶けていくのが分かります」


至福のため息を漏らしながらお茶を味わった氷華は、すっと視線を下げ、ノアの装いにじっと目を留めた。


「……それにしても」


「え?」


「……素晴らしいですね」


氷華の瞳が、いつになく真剣に、そして静かな熱を帯びてノアのメイド服を見つめていた。


「大樹の精霊を模した翡翠のリボン、純白のレースの波打ち、そして何より……ノアさんの白銀の髪と華奢な体躯に完璧な調和をもたらしています。風紀委員長としては露出度に若干の懸念を抱くところですが、美の完成度という観点においては満点を付けざるを得ません。実に……実に素晴らしいです」


「ひ、氷華さん……? なんだか視線がすごく真面目で怖いです……っ!」


「安心してください。生徒会長として、冷静に、客観的に、貴女の可憐さを堪能しているだけです」


真顔でとんでもないことを言い放つ氷華に、ノアは顔を真っ赤にして後退る。

氷華はふっと柔らかく目を細め、静かにノアの頭に手を伸ばした。

その細く白い指先が、ノアの白銀の髪を優しく梳く。


「……あの日、深層で私を救ってくださった『翠光様』も、きっとあなたのように……温かくて、どこまでも優しい光を纏っていたのでしょうね」


「氷華、さん……」


至近距離で見つめ合う瞳と瞳。

氷華の声音には、揺るぎない敬愛と憧れが滲んでいた。


「私は今でも、あの神様を探し続けています。けれど……不思議ですね。あなたの傍にいると、あの時と同じ安らぎを感じるのです」


ノアの心臓が、正体を隠している罪悪感と、向けられる無垢な熱意でトクンと跳ねた。


(氷華さんも……さっきのクラリスさんたちも、あんなに真っ直ぐに『翠光の仮面』のことを想ってくれてる……)


なんだか少し切ない予感を胸に抱きながら、ノアは氷華の温もりを静かに受け止めていた。


――だが。

この平穏な祝祭の空気が、数時間後に冷酷な悪意によって切り裂かれることを、この時の二人はまだ知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。