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世界樹ダンジョンで囮にされた僕、風精霊と同化して銀髪美少女へ 〜学園では落ちこぼれDクラスなのに、配信者を救いまくっていたらネットの神になっていた件〜  作者: あかぱん
深層特務調査編

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未知なる領域、地下25層

地下20層のゲートをくぐり抜けた先は、かつてない重圧に満ちた静寂が支配していた。


地下21層から24層。

通常であればAランクの探索者でも慎重を期す危険地帯であり、徘徊するモンスターの群れも地上階層とは比較にならない凶暴性と強度を誇っている。

だが――プロ探索者たちの実力は、まさに圧巻の一言だった。


「グルアァァッ!」


死角の岩壁を突き破り、黒鋼獣と同等の巨体を誇る甲殻獣が突進してくる。

だが、先頭を歩く重騎士ボルドーは、眉一つ動かさなかった。


「フンッ……!」


ズゴォォォンッ!


地鳴りのような衝撃音とともに、ボルドーが構えた漆黒のタワーシールドが巨獣の突進を正面から完璧に受け止めた。

一歩たりとも後退せず、衝撃のすべてを足元の大地へと受け流す絶対の防御。勢いを完全に殺され、体勢を崩した巨獣に対し、即座に両脇から二つの影が交差する。


「そこだ」


ヒュンッ、と空気を切り裂く澄んだ音。

レオンが放った一対の風切り双剣が、目にも留まらぬ速度で巨獣の関節部を正確無比に断ち落とす。余計な力みの一切ない、急所だけを的確に削ぎ落とす職人技のような太刀筋。


「逃がさないわよ――!」


直後、シエラの手元から放たれた蛇腹剣が、生き物のようにしなりながら巨獣の首元へと巻き付いた。

バチチチッ――ドッギャァァン!

高密度に圧縮された紫電が刃を伝って巨獣の体内へと炸裂し、内側から完全にその生命活動を停止させる。


「クリアー! 周囲、熱源反応なしでっす!」


後方からマリンが小型短剣を構えつつ、軽快なステップで周囲のクリアランスを完了させる。


無駄な動きが一切ない。最小限の魔力と体力で、確実に脅威を排除していく洗練されたプロの連携。


「……信じられませんわ。あれだけの大型種を、息を乱すことすらなく……」

「へっ、これがトップランカーの仕事ってわけかい。見てるだけで背筋がゾクゾクしてくるね」


クラリスが息を呑み、クローディアが興奮気味に笑みを浮かべる。

氷華もまた、凛とした瞳でその背中を見つめ、深く頷いていた。


「個の武力に頼るだけでなく、全員が自らの役割を完全に理解し、淀みなく繋いでいる。……学ぶべき点が多すぎますね」


プロたちの鮮やかな戦いぶりに感嘆しながら、一行は順調に階層を下り――そして、ついにその境界線へとたどり着いた。


地下25層への階段。

そこから先へ一歩足を踏み入れた瞬間、世界樹ダンジョンの空気が、まるで別の空間へと変貌したかのように劇変した。


ピピピピピ――ッ!


頭上を浮遊する二基のドローンから、耳障りな電子警告音が鳴り響く。


『――全員、足を止めろ』


通信機から、管制室にいる鳴神先生の張り詰めた声が届いた。


『ドローンの測定値が跳ね上がった。空気中の瘴気濃度、通常規定値の三倍を超えている。……ここから先が、人類未踏の領域だ』


見渡す景色の異様さに、誰からともなく息を呑んだ。

頭上や壁面を這う世界樹の巨大な根。本来であれば淡い生命の光を宿しているはずの木肌が、まるで病に侵されたように禍々しい漆黒へと染まり、ドク、ドク、と気味の悪い脈動を打っているのだ。

立ち込める空気は鉛のように重く、肌をじりじりと焼くような不快な冷気が足元から這い上がってくる。


「……気味が悪いな。まるでダンジョンそのものが、苦痛に喘いでいるみたいだ」


レオンが双剣を構え直し、いつもの柔らかな表情を消して周囲を警戒する。


「おじ様、これ……ただのモンスターの瘴気じゃないわよ」

「うむ。酷く淀んだ魔力だ。若人らよ、決して気を緩めるな。一歩でも踏み外せば命はないぞ」


ボルドーの重々しい警告に、氷華たちも武器を構えて緊張感を極限まで高める。


そんな中――ノアだけは、異様な感覚に襲われていた。


ドクンッ……!


(……っ!? な、に……これ……?)


胸の奥深くが、突如として激しく脈打った。

痛むのではない。まるで、失われていた記憶の欠片が、深淵の底から激しくノアを呼んでいるかのような、得体の知れない共鳴と焦燥感。

頭の芯がツンと痺れ、視界の端に、見たこともない漆黒の闇と、誰かの叫び声がフラッシュバックする。


『……ノアっち! ねえ、大丈夫ノアっち!?』

フルグルの焦ったような声が、精神リンクを通じて響く。


『おいおい、嘘だろ……この奥から漂ってくる気配、まさか……!』

イグニスもまた、これまでにないほど激しく焔を揺らめかせ、驚愕に声を震わせていた。


(フルグル? イグニス……?うう、体が……)


「ノアさん? 顔色が優れませんが、瘴気に当てられましたか?」


隣を歩いていた氷華が、ノアの異変に気づき、心配そうにその肩へと手を伸ばした。


「あ……いえ、大丈夫です、神薙会長。ちょっと、空気が重いだけですから……!」


ノアは慌てて笑顔を作り、首を横に振った。

けれど、深層へ降りるごとに強まるこの胸の鼓動を、誤魔化しきることはできなかった。


この先に、何かがいる。

心の奥底をひっくり返すような強烈な何かが。


「行くぞ。油断するな、ここからは一秒が生死を分ける!」


レオンの号令とともに、八人の調査隊は、黒く脈動する地下25層の深淵へと、さらに深く足を踏み入れていった。

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