緊急招集
「お、お話……ですか?」
突然肩を掴まれた僕は、恐る恐る振り返って長身の大剣士を見上げた。
近くで見ると、その引き締まった長身と背中の大剣の威圧感は凄まじい。リノと夜々は「ひえっ」と小さく声を漏らして僕の後ろにサッと隠れてしまった。
「ああ、なに、取って食おうってわけじゃないさ。先日の実習、ランキング1位のチームリーダーがどんな奴なのか、単純に興味があってね」
クローディアは屈託のない笑みを浮かべ、僕の顔をまじまじと観察するように覗き込んできた。
敵意がないことを感じ取った僕は、小さく息を吐いて頭を下げる。
「あの、まずはさっきの騒ぎ……仲裁に入ってくださって、ありがとうございました」
「……あ?」
クローディアは一瞬キョトンとして、琥珀色の瞳を丸くした。
「なんだい、藪から棒に。なんでアンタがアタシに礼を言うんだ?」
「えっと……僕も止めに入ろうとはしたんですけど、僕じゃあそこまで綺麗に収められなかったと思いますし。下手に口を出して、無用な争いや怪我人が出ていたかもしれないですから。だから、未然に防いでくださってありがたいなって」
僕が照れくさそうに頬をかきながらそう告げると、クローディアは数秒ほど固まった後――
「ぶっ……わーっはっはっはっ!!」
学食中に響き渡るような豪快な大笑いを破裂させた。
「ひゃぅっ!?」「な、何事っすか!?」
「え、えぇ……?」
動揺する僕たちを余所に、クローディアは腹を抱えて笑い、バシバシと豪快に僕の背中を叩いた。
「あっはは! なんだいアンタ、まるで生徒を気遣う先生みたいなことを言うんだねぇ! 面白いな、ノア!」
「い、痛いです先輩……っ」
「悪い悪い。いやさ、ランキング1位の名前を見たときは、どんな筋骨隆々のいかつい戦士が出てくるかと思ってたんだが……いざ話してみたら、こんな小柄で大人しいお嬢さんだ。見た目じゃ全く1位なんて想像がつかないよ」
クローディアはカラカラと笑いながらも、その瞳にふっと真剣な光を宿した。
「だが――見た目で実力を測れないってのが、探索者の常だからな。アンタのその落ち着きと視野の広さ、ただもんじゃないのはよく分かったよ」
豪快に見えて、相手の本質を的確に見抜く観察眼。僕は感心して思わず言葉を返した。
「……クローディア先輩は、すごく聡明な方なんですね」
「ハッ、違いない! 見た目じゃ分からないだろ? アタシもただの脳筋大剣士に見られがちでね」
クローディアがニッと白い歯を見せて茶化した、その時だった。
ピピッ――ピピッ――!
僕の端末から、けたたましい電子音が鳴り響いた。画面には【鳴神先生】の文字。
同時に、クローディアの端末からも同じ着信音が鳴る。
「……ん? 鳴神先生からか」
「は、はい、ノアです」
通話に出ると、スピーカー越しに鳴神先生の低く引き締まった声が響いた。
『ノア、そこにクローディアもいるな?』
「えっ、はい! 一緒にいますけど……」
『ちょうどいい。二人とも今すぐ生徒会室に来い。至急だ』
「え……?」
ただならぬ気配を残し、通信は一方的に切断された。
クローディアと顔を見合わせると、彼女もまた先ほどまでの軽快な笑みを消し、静かに頷いた。
◇
数分後――生徒会室。
重厚な扉を開けて中に入ると、室内の空気は張り詰めた緊張感に包まれていた。
窓際のデスクには、腕を組んで佇む鳴神冴香先生。
ソファーには、姿勢正しく腰掛けながらも眉根を寄せるクラリス。
そして中央には、凛とした表情で書類を広げる生徒会長・神薙氷華。
実習1位のノア隊代表・ノア。
実習2位のクラリス隊代表・クラリス。
実習3位のクローディア隊代表・クローディア。
そして、生徒会を統べる学園最強のSランク・神薙氷華。
学内実習の上位チーム代表と生徒会長――学園の若き精鋭たちが、一堂に会していた。




