VOL.81 ヤスヒコ・タツタ
豊穣の十月に童話の里に孫と2人で入り込んだ初老の男性です。
撫でつけた白髪に背広をビシッと着こなした姿勢のいい人物で、いくぶん厳めしい顔つきは、かつて医者をしていた頃を彷彿とさせます。
心臓病を患っていて、両親を亡くしたミレイの行く末を案じて、養子に出そうと心当たりを回って歩いていたところ童話の里に招かれました。
普段は大きな屋敷にミレイと二人暮らしで、ほとんどの部屋を閉めて居間と書斎、寝室だけ使って生活。
侘しい住まいだったことでしょう。
跡を継いで医者になった息子と同じく医者の妻は、志を共にしてエスクリヌスで医療活動に従事するも、テロ事件に巻き込まれて還らぬ人に。
幼いミレイを遺して――。
ヤスヒコ老人はどんなにか送り出したことを悔やんだでしょうね。
その心痛が元で心臓病に。
けれども、ミレイ一人遺してはおけぬと、気合で生還しました。
親戚・外戚の少ないタツタ家は、裕福な家系ながら短命で長い目で見ることができない。
そこでヤスヒコ老人は、ミレイの素直で純粋な性質を伸ばしてやれるような、教育も受けさせてくれる家庭を探して方々訪ね回るようになりました。
でも――残念ながら、彼の遺産目当てだったり、家庭が殺伐としていたり、子どもが増えるのが面倒だと考える人たちばかりで、なかなかヤスヒコ老人の眼鏡に適う家庭が見つからない。
そんなとき訪れた童話の里で不思議な若者たちに出会った。
それこそが奇跡の始まりでした。
ミレイが行方不明になるというアクシデントはあったものの、面倒を見てくれたヨリコは気風のいい農家のお内儀さん。
夫のノリヒトは一見でミレイの隠し名を当てるという、慧眼の持ち主。
いくら探し回っても出会えない、これ以上は望めない人々に出会えた喜びは筆舌に尽くせません。
何より、今までどこへ行っても笑顔を見せなかったミレイが、ヨリコを見上げながらニコニコ笑っている!
それに勝る決め手はありませんでした。
年末、ヨリコとヤスヒコ老人、ミレイの3人が、イチゴジャムの瓶詰めをするシーンは、書いていてうれしかったです。
世界の大変革後にヤスヒコ老人は、エスクリヌス下層因果界で、医者としてもう一華咲かせようと決意します。
その経緯は『パイオニアオブエイジ』本編でご確認をお願いします。




