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終末日記  作者:
17/20

世界カブトムシ化計画

2031年。

最初に異変に気づいたのは、

小学校の教師だった。



生徒たちの将来の夢。



「カブトムシになりたい」



一人ではない。


クラスの半分以上が、

そう書いていた。



最初は流行りだと思われた。


動画サイトの影響。

子供特有のブーム。


誰も気にしなかった。



だが。


翌年には、

大人も言い始める。



「人間って、

効率悪くない?」



SNSで、

奇妙な思想が広がる。



カブトムシは強い。

飛べる。

硬い。

シンプル。

かっこいい。



「人類は進化を間違えた」



最初はネタだった。


完全に。



2034年。


世界初の“外骨格整形”。



全身へ人工甲殻を埋め込み、

カブトムシ的シルエットへ変形する。


一部富裕層で流行。



意味はない。


ただ。


「美しい」から。



2036年。


昆虫食ブーム加速。


ただし、

誰もカブトムシは食べない。


神聖視され始めていた。



ネット上では、

カブトムシ画像が異常拡散する。



人々は、

長時間カブトムシを見ると安心する。


理由不明。



2040年。


世界各地で、

巨大カブトムシの目撃情報。



最初は作り物扱い。


だが。


軍用ヘリが、

森の中で全長12mの個体を撮影する。



それは、

普通に飛んでいた。



生物学的に不可能な重量。



しかも。



“人間を襲わない”。



巨大カブトムシは、

都市の近くへ現れても、

ただ静かに歩き回る。



人々は熱狂する。



「守護者だ」



2043年。


ある研究者が、

恐ろしい仮説を発表する。



人類の集合無意識が、

現実を書き換えている。



みんながカブトムシを崇拝しすぎた結果。



“世界が、

カブトムシ寄りになっている”。



当然、

笑われた。



だが。



空がおかしくなる。



夜空。


星座が、

全部カブトムシ型へ並び変わっていく。



2045年。


人類の身体変化開始。



子供たちの背中に、

硬い甲殻。



成人男性の握力増加。

女性の髪が触角化。



痛みはない。


むしろ、

皆ちょっと嬉しそう。



世界政府は緊急声明。



「落ち着いてください。

まだ人類です」



その会見中。


大統領の額から、

小さな角が生える。



世界同時視聴者数、

過去最高記録。



2047年。


都市構造変化。



人々は、

なぜか土を求め始める。



高層ビル解体。

巨大樹木建設。

腐葉土輸入。



東京が、

巨大な森になる。



地下鉄は廃止。


代わりに、

樹液輸送網が整備される。



2049年。


人類の言語簡略化。



「ブブブ」


「カサカサ」



それでも、

なぜか意味が通じる。



科学者たちは、

泣きながら研究を続ける。



「文明が……

昆虫に侵食されてる……」



2051年。


月面観測で、

衝撃映像。



月の裏側。



巨大な角。



地表から突き出している。



しかも動く。



人類は理解する。



カブトムシは、

地球生物じゃなかった。



もっと昔から、

宇宙にいた。



2055年。


地球人口、

急減。



死んだのではない。



羽化した。



巨大な繭。


都市サイズ。



そこから、

人型の面影を残した、

黒光りする存在が現れる。



彼らは、

嬉しそうに夜空へ飛んでいく。



2060年。


地球最後の有人放送。



森。


巨大樹木。


空を埋める、

何百万匹もの巨大甲虫。



カメラの前。


最後の“ほぼ人間”。



彼は、

半分ほど甲殻化した顔で笑う。



「なんか……

思ったより悪くないよ」



背中が割れる。



巨大な羽。



彼は、

夜空へ飛び立つ。



カメラだけが残る。



その後の地球は。



ずっと、

ブブブブブブブブブ……って音がしていた。

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