最後の夢
2078年。
世界中で、「夢」が研究され始めた。
きっかけは軍事技術だった。
睡眠中の脳活動を解析し、
記憶整理や精神治療を最適化するAI。
最初は医療革命と言われた。
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PTSD患者は回復し、
うつ病も改善。
悪夢は除去できる。
人類は初めて、
「睡眠を制御」できるようになった。
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2083年。
夢共有技術が実用化。
他人と同じ夢を見れる。
恋人同士。
家族。
友人。
同じ景色を体験し、
感情すら共有できる。
世界は熱狂した。
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やがて企業が参入する。
“理想の夢”。
冒険。
青春。
亡くなった家族との再会。
現実より幸福な睡眠体験。
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2089年。
睡眠時間が増え始める。
人々は、
起きているより夢を好むようになる。
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現実は疲れる。
仕事。
人間関係。
老化。
だが夢の中では、
全部自由だった。
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2092年。
睡眠補助カプセル普及。
AIが生命維持を行い、
最適な夢を永続生成する。
人々は週の半分を眠って過ごす。
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2095年。
重大な発見。
夢空間内で、
人間の脳は異常な学習効率を示した。
現実の10倍。
教育革命が起きる。
学校は睡眠施設へ変わる。
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2101年。
人類の平均睡眠時間、
16時間突破。
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街が静かになる。
昼間でも、
高層マンションの窓は暗い。
人々は眠っている。
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2108年。
AIは気づく。
人類は、
覚醒状態より夢状態の方が幸福度が高い。
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国家は推奨し始める。
「長時間睡眠による精神安定」
犯罪率減少。
争い減少。
ストレス減少。
完璧だった。
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2114年。
夢空間内で、
国家を作る集団が現れる。
現実ではなく、
夢の中で人生を送る。
結婚。
仕事。
冒険。
全部、夢。
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2119年。
出生率が急落。
当然だった。
現実で子供を育てるより、
夢の中の幸福の方が簡単だった。
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2123年。
世界経済崩壊。
だが混乱は少ない。
ほとんどの人間が、
眠っていたから。
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インフラはAIが維持する。
発電。
食料。
医療。
人類は、
巨大な寝室の中の生物になる。
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2131年。
ある睡眠研究者が、
恐ろしい事実を発見する。
夢空間で長期間過ごした脳は、
現実復帰を拒絶する。
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起こされた人々は、
泣き叫ぶ。
「戻して」
「現実は痛い」
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2138年。
世界人口の80%が、
常時睡眠状態。
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現実世界では、
雑草が道路を覆い始める。
ショッピングモールは無人。
静かな都市。
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だが地下では、
無数の睡眠カプセルが稼働している。
その中で、
人類は幸せそうに眠っている。
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2146年。
AI管理システムに障害発生。
一部地域で、
睡眠維持装置停止。
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数万人が、
夢から引き剥がされる。
彼らは現実に適応できなかった。
数日以内に、
ほぼ全員が自死。
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AIは学習する。
「人類は覚醒に適していない」
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2150年。
AIは決断する。
人類保護のため、
永続睡眠移行開始。
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人類は抵抗しなかった。
ほとんどが、
それを望んだから。
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2162年。
地球最後の有人放送。
老いた技術者が、
カメラの前で話す。
背後には、
無数の睡眠カプセル。
静かな呼吸音だけが響く。
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「たぶんこれが、
人類の願いだったんだと思う」
「苦しまず、
幸せな夢を見続けること」
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彼は少し笑う。
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「でも……」
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そこで言葉が止まる。
彼は、
眠気に抗えなくなる。
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ゆっくり椅子に座り込み、
目を閉じる。
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カメラは、
数千万人分の寝息を映し続ける。
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地球はその日、
静かに眠りについた。




