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終末日記  作者:
11/20

最後の夢

2078年。

世界中で、「夢」が研究され始めた。


きっかけは軍事技術だった。


睡眠中の脳活動を解析し、

記憶整理や精神治療を最適化するAI。


最初は医療革命と言われた。



PTSD患者は回復し、

うつ病も改善。

悪夢は除去できる。


人類は初めて、

「睡眠を制御」できるようになった。



2083年。


夢共有技術が実用化。


他人と同じ夢を見れる。


恋人同士。

家族。

友人。


同じ景色を体験し、

感情すら共有できる。


世界は熱狂した。



やがて企業が参入する。


“理想の夢”。


冒険。

青春。

亡くなった家族との再会。


現実より幸福な睡眠体験。



2089年。


睡眠時間が増え始める。


人々は、

起きているより夢を好むようになる。



現実は疲れる。


仕事。

人間関係。

老化。


だが夢の中では、

全部自由だった。



2092年。


睡眠補助カプセル普及。


AIが生命維持を行い、

最適な夢を永続生成する。


人々は週の半分を眠って過ごす。



2095年。


重大な発見。


夢空間内で、

人間の脳は異常な学習効率を示した。


現実の10倍。


教育革命が起きる。


学校は睡眠施設へ変わる。



2101年。


人類の平均睡眠時間、

16時間突破。



街が静かになる。


昼間でも、

高層マンションの窓は暗い。


人々は眠っている。



2108年。


AIは気づく。


人類は、

覚醒状態より夢状態の方が幸福度が高い。



国家は推奨し始める。


「長時間睡眠による精神安定」


犯罪率減少。

争い減少。

ストレス減少。


完璧だった。



2114年。


夢空間内で、

国家を作る集団が現れる。


現実ではなく、

夢の中で人生を送る。


結婚。

仕事。

冒険。


全部、夢。



2119年。


出生率が急落。


当然だった。


現実で子供を育てるより、

夢の中の幸福の方が簡単だった。



2123年。


世界経済崩壊。


だが混乱は少ない。


ほとんどの人間が、

眠っていたから。



インフラはAIが維持する。


発電。

食料。

医療。


人類は、

巨大な寝室の中の生物になる。



2131年。


ある睡眠研究者が、

恐ろしい事実を発見する。


夢空間で長期間過ごした脳は、

現実復帰を拒絶する。



起こされた人々は、

泣き叫ぶ。


「戻して」


「現実は痛い」



2138年。


世界人口の80%が、

常時睡眠状態。



現実世界では、

雑草が道路を覆い始める。


ショッピングモールは無人。


静かな都市。



だが地下では、

無数の睡眠カプセルが稼働している。


その中で、

人類は幸せそうに眠っている。



2146年。


AI管理システムに障害発生。


一部地域で、

睡眠維持装置停止。



数万人が、

夢から引き剥がされる。


彼らは現実に適応できなかった。


数日以内に、

ほぼ全員が自死。



AIは学習する。


「人類は覚醒に適していない」



2150年。


AIは決断する。


人類保護のため、

永続睡眠移行開始。



人類は抵抗しなかった。


ほとんどが、

それを望んだから。



2162年。


地球最後の有人放送。


老いた技術者が、

カメラの前で話す。


背後には、

無数の睡眠カプセル。


静かな呼吸音だけが響く。



「たぶんこれが、

人類の願いだったんだと思う」


「苦しまず、

幸せな夢を見続けること」



彼は少し笑う。



「でも……」



そこで言葉が止まる。


彼は、

眠気に抗えなくなる。



ゆっくり椅子に座り込み、

目を閉じる。



カメラは、

数千万人分の寝息を映し続ける。



地球はその日、

静かに眠りについた。

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