三週目ノハ
三週目ノ八はいろいろ出てきて面倒臭いのでなぁなぁで流して頂ければ………
*木曜日
俺は朝、目が覚めたら真っ直ぐにリビングへと降りた。そして、テレビをつけた。朝御飯は………食欲が無いからいらない。
学校へと行くのにはまだ時間が早いため、暫くデレビを見て時間を潰す。ゲームをやろうとも、漫画を読もうとも思わない。
学校全体にイジメられている。そのことを思い出すだけで何もしようとは思わなくなる。完全に無気力状態である。
『今日のニュースです。今日のニュースは…………』
リビングにテレビのニュース番組のアナウンサーの声だけが響く。ライはソファに座り、テレビとソファの間にあるテーブルに突っ伏した。
『次のニュースです。第一王女は先日、中央大陸各国とのモニター会議にて、新たな協定を提案し、見事締結させたとのことです。これほど大きな協定は……………』
ここでも第一王女のことが……。人生明るくて羨ましいな。国民からの支持率も高いし、各国のお偉方とのパワーバランスで見ても圧倒的だし。頭は切れるし見たことはないけど容姿も美しいらしい。密かにファンクラブが結成されていて、その組織は最果ての東欧諸国にでまで拡大しているのだとか…………。
『只今、緊急速報が入りました。なんと、このマカール王国を代表するジュンビンティンドンタワーへの一般人の立ち入りが許可されたそうです。』
ジュンビン………何だそれ?聞いたことない。俺は顔を挙げてテレビの画面を注視する。
『一般人の立ち入りには、来週から発売されるチケットが必要で、王国自らが管理して販売するとのことです。』
なんと、テレビに映し出されたのは俺が先週建てたタワーだった。そのままテレビを見続ける。どうやら、建造者不明のタワーとして受理され、壊すのはもったいないからと国が引き取ったらしい。それにしてもセンスの欠片も無い名前をつけちゃって。うちの可愛い子に名前つけたの、どこのどいつだ!一発ぶん殴ってやる。
と、思っていたら名付け親は隣の国、ニテノリテシ共和国のお偉方らしい。し、仕方が無いから許してやる。
べ、別に権力に怖気付いて殴るの止めたとかじゃないからな!?ほら、ジュンビンティンドンタワーなんて、意外と愛嬌も…………無いな。
『それでは、天気予報です。今日は比較的暖かく、晴れた日となるでしょう。降水確率はとても低く、雨が降ることは無さそうです。各地の天気は……………』
暖かくて晴れるのは大歓迎。雨が降るとジメジメするからな。湿気も高いし。
『次に、世界情勢です。世界情勢研究家のメソユニさ〜ん。』
『はい、どうもメソユニです。』
テレビ画面をほぼ占領する程の体躯。地獄の鬼のように厳つく、低い声。そして何よりも主張の激しい動き!
見ているだけで暑くなる。やばい。エアコン付けたくなってきた。画面から目を逸らそ。
『え〜と。それではここからは私、メソユニが世界情勢について解説していきます。え〜、まずは中央大陸から。中央大陸では魔王軍との衝突は今のところありません。ですが、現在【罪過の魔王】の配下が続々と確認されていることから、緊張は高まる一方です。その対応として【蒼穹の勇者】が周辺地域の警戒にあたっていますが、著しい成果は出されていません。』
ふ〜ん。いや、【蒼穹の勇者】の行動は完全に無駄足だな。だって【罪過の魔王】は俺が殺ったし、集まっている配下というのは御葬式にでも出席する奴らだろうし。
『北欧魔蘇島では……………』
『東欧諸国では…………………』
後は特に今までと変化していないな。俺にとって面白いことも、楽しいことも。何も起きていない。いつも通り、人族と魔族との小さな小競り合いが勃発している。毎度、思うけど本当にバカバカしい。何せ、その争いで助かる命よりも犠牲となる命の方が圧倒的に多いのだから………。
古くから人族と魔族はお互いを敵対視して争ってきた。その理由はどちらも同じ。同族を異種族から守るため………。
それなのに、これでは本末転倒だ。
『最後に、南大陸についてです。南大陸の半分程を占める、魔族の治める地、南魔領と、もう半分の人族が治める地の間での激闘は魔族側に有利となりました。人族は【閃光の勇者】を始め、多くの人々が奮戦していますが、後退の一途を辿っております。そんな中、魔族の間では四年前に突如として現れ、その隔絶した強さを魅せつけた【時空の魔王】の復活が噂されています。【時空の魔王】の行方は人族も魔族も五年前から把握できていないため、死亡説が一般的ですが、もし、復活したとなると、人族は更なる劣勢に追い込まれます。』
【時空の魔王】それは時間と空間を操作する実在した魔王。今となっては伝説となっている魔王だ。とはいえ、『復活した』というのはありえないな。
『一方、【時空の魔王】と同じ頃に活躍した人族の最後の希望、【迅雷の勇者】の最終奥義によって産まれた西熱獄炎区域の調査は順調に進んでいるとのことです。【迅雷の勇者】の行方は現在でも不明で、今回の調査で何か手掛かりが見つかることに期待が高まっています。』
こうは言っているが【迅雷の勇者】も死亡設が一般的だ。手掛かりを探している人々も何か手掛かりが見つかるとは思っていないだろう。
『どこの地域も情勢は厳しいです。ですが、人類が一つになり、………………』
結局、このニュース番組は仲良し小好しで頑張りましょう、的な感じで終わった。
「さて、そろそろ通学時間だし、学校行くか!」
だが、言葉とは裏腹に身体は動かない。やはり、根底ではいじめについて考えて、逃げようとしている自分がいる。がんばれ、俺!
手をテーブルに着き、体重をかける。足の裏に力を入れ、体を支える。あと一息!
『さぁて、始まりました、人気番組、エテエテ。今日はマカール王国立第一高等専門学校の急遽の休校について採り上げていきたいと思います。』
「は?」
今、なんて言った?
『い〜や、ヤケナさん。突然の休校についてどう思いますか?』
「は!?!?」
先程までダンベルの重さに耐えていたような身体が、すくっと動く。
『休校』
なんとも甘美な言葉が頭を駆け巡る。俺はテレビの電源を消すことすら忘れて二階へと駆け上がった。そして、ベッドにダイブする。
これから、俺の
ゴロゴロ アンド
マンガ アンド
ゲーム ザンマイ が始まる。
先程までの憂鬱が嘘のようだ。目の靄が綺麗サッパリ消え失せ、頭がクリアになっていく。こうして俺は『今日』という素晴らしいこの日を満喫した。
後からライは後悔することになる。ライは見るべきだったのだ。人気番組、エテエテを最後まで。見ていれば未来は変わっていたかもしれない………。
変わらなかったかもしれないが………。




