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三週目ノ七




*水曜日





「キールマ」


「はい」


「スティペ」


「はい」


「ドーゼフ」


「はい」



 うんうん、いいねぇ〜。なんか『学校』て感じする。もちろん、俺が出欠を取っている訳では無い。あんなの覚えられん!出欠を取っているのは昨日俺の代わりに出欠を取ってくれたマリザという生徒だ。


 彼女は最上級の間に辿り着いた数少ない生徒の一人でもあるらしい。俺は授業中遊んでいたから誰が最上級の間まで行けたのか知らない。今日、教室に入ったら噂されていたのだ。たしか、このクラスにはマリザともう一人ドラゴンの剥製を手に入れた人がいるのだとか、かんとか……。ま、どうでも良いけど。



「先生、終わりました。」



「はい、ごくろうさん。そんじゃ、挨拶!」



 他のクラスではこの時間に担任の先生が有り難い御話をするらしいが、俺はそんな無駄なことはしない。時間は有限なのだ。別に、面倒臭いからではない。断じて面倒臭いからではない………。



「起立、気を付け、礼。」



「「ありがとうございました。」」



 日直の号令に合わせて、朝のホームルームが終わる。まだチャイムは鳴っていないが、俺は教室を後にした。


 だって気まずいんだもん!今、四月の下旬よ!?


 当然、四月の下旬ともなれば自然にクラス内で派閥ができる。陽キャは陽キャ同士。陰キャは陰キャ同士。そんな中、教師一人がほっぽりだされる。転校生ならまだしも、教師なのだ。


 しかも、その教師は初日早々やらかしている。そうなると、誰も寄り付かない。あーかわいそうかわいそう………いや、俺のことなんだけどね!


 てな訳で、俺は今、悩んでいた。ほんっと、くだらないけど。まじでどうやってクラスに溶け込もう………


 なんて考え事しながら歩いていたら、いつの間にか第四魔法演習場に着いていた。



「さて、やりますか!」



 昨日のように演習の準備をする訳ではない。実は今日の朝、校長に呼び出されて言われたのだ。


『ライ先生。昨日の演習が原因だと思うんだが、演習場内を漂う魔力が異常に増加してだね………このまま学生が演習場を使うと魔力が暴発する恐れがあって危険だからどうにかしてくれないかい?』


 要約するとこんなかんじである。本当に、注意されている間は胃が痛かった。それはもう、ギリギリギリギリと。


 なにせ、校長先生は演習が原因だと思っているが、真実は違うからだ。演習終了後、俺は後片付けに追われていた。ゴーレムを再起不能にしたり、罠を解除したり、城を崩したりと………。俺は後先考えずにやっちゃた自分を呪った。ゴーレムだけでも全て倒すのに何日かかるか………。


 そんな中、俺は思いついてしまった。あれ、正攻法で倒す必要なくね?と。


 そんな軽いノリで俺は第四魔法演習場に極大魔法を放った。


 極大火魔法『ヘルフレイム』


 俺の緻密な魔力の操作で威力は抑えられているものの、かなりの破壊力を持つ魔法である。


 当たり前だが、魔法を放った後の演習場の様子は悲惨の一言。演習場のバリアなんて殆ど燃えていた。バリアなのに……。数分後に自動的にバリアが張り直されていたけど。


 そんな莫大な魔力を用いて行使する魔法を放てばどうなるか………余剰な魔力が溢れ出る。大量に………。いくら俺でも、極大魔法並みの魔力を完璧に制御することは難しい。


 その結果、演習場付近の魔力濃度は非常に高い。



 因果応報。今の俺にぴったりの言葉だ。



 取り敢えず、俺は家の地下の物置から持ってきた小型の魔力吸収石を演習場のド真ん中に置いた。俺はこれを取りに一回家に帰っている。もしもこの石が正常に効果を発揮しなければ、『ヘルフレイ』を魔力が切れるまで使うかもしれない。


 目を閉じ、周囲の魔力の気配を探る。うん、どうやらこの学校が地獄絵図のような悲惨な状況になる未来はこなさそうだ。ばっちり石が魔力を吸収している。


 う〜ん。待っている間、暇だな。そうだ!ゲームでもしよ。


 フフフ。学校にですらゲームを持ってくるほど俺は抜かりが無いのだ!!!!!





☆☆☆☆☆





「う〜ん。遅いな。」



 現在時刻は詳しく知らないが、既に放課後を報せる鐘が鳴ってから一時間は経過している。それなのに、誰も第四魔法演習場に来ない。なんで……………?


 全クラス同時に授業が遅れているとか、全員腹痛でトイレに籠もりきりとか……。いろいろ考えられるが、どれもいまいちピンとこない。


 折角、演習用に俺の指示で動く超高性能ゴーレムを作っていたのに……。人工知能搭載の優れ物である。もはやホムンクルスと言っても良いのでは、という程のできの良さなのに。



「は!?もしや昨日の授業がつまらなかったとか、校内変態教師筆頭に教わるのは生理的に無理とかそういう………。」



『ガーン』



 本当に心の中でそう聞こえた気がした。思えば、さっきから全く人を見かけない。教師ですら見かけない。演習場の前は人通りが多いはずなのに……。


【いじめ】


 この三文字が、俺の心を締め付けた。



「だめだ。死にたい。今日はもう家に帰ろう。」



 俺は演習場を後にして、一人トボトボ校門へと向かう。なんと、驚くべきことに、校門へと向かう道中ですら人っ子一人いなかった。徹底したイジメである。



「く、くそぉぉう!」



 この日、空を飛びながら涙を流す変人を見かけた人が続出した。






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